テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
夜。
マフィオソの屋敷。
作戦会議——のはずが。
「……つまり、各自情報収集ということで」
リエーレが静かに言う。
「まあ簡単に言えばそうだな」
カポが腕を組む。
「接触して、弱みでも探る」
「僕、潜入とか向いてないです……」
ソルが小さくなる。
「でもボスのためですし」
ラクティーは相変わらず楽しそうだ。
「……単独行動は危険だ」
マフィオソが低く言う。
「遊ばれるな」
「了解」
全員が頷く。
だが——
数時間後。
全員、普通に単独接触していた。
カポの場合
カジノ。
ネオンが光る騒がしいフロア。
「お、来たか」
チャンスは最初から気づいていた。
ルーレット台の横で、気だるそうに笑う。
「尾行下手だな、お前」
「してねぇよ」
「してた顔だろ」
図星。
「……チッ」
カポは隣に座る。
「何飲む?」
「……強いやつ」
「いい趣味」
グラスが置かれる。
「で?」
チャンスが頬杖をつく。
「今日はボスの代わりか?」
「違ぇよ」
「じゃあ個人的?」
「……」
沈黙=答え。
「はは」
チャンスが笑う。
「素直じゃん」
「うるせぇ」
だが帰らない。
「お前さ」
チャンスがカードを弄びながら言う。
「分かりやすくて好きだよ」
「軽々しく言うな」
「本当だって」
そう言って、
ふっとサングラスを少し下げる。
「勝負するか?」
視線がぶつかる。
カポの背筋が、ぞくりとする。
(ムカつく)
(でも——)
楽しい。
ソルの場合
完全に偶然。
……のはずだった。
「……また会った」
公園。
黒いうさぎを撫でているチャンスを見つけ、
ソルは足を止める。
「スペード」
「……でか」
「可愛いだろ」
フレミッシュジャイアントの黒うさぎ。
スペードはソルをじっと見て、
ぴょん、と近寄る。
「えっ」
「気に入られたな」
「……俺、小動物には好かれるんです」
「お前も小動物みたいだしな」
「それよく言われます……」
チャンスが笑う。
「座れよ」
ベンチを叩く。
ソルは迷った末、隣に座る。
少し距離を空けて。
「……ボス、怒ってた?」
「……少し」
「そりゃそうか」
チャンスは空を見る。
「でも来たんだな、お前」
「……気になったから」
14
17
「俺が?」
こくり。
チャンスは少しだけ驚いた顔をする。
「へえ」
それから、ぽつり。
「嬉しいな」
その声が妙に優しくて、
ソルは視線を逸らした。
ラクティーの場合
「やっぱりいました」
チャンスの屋敷。
普通に来た。
普通に通された。
「お前ほんと自由だな」
「よく言われます」
ラクティーはソファに座る。
「今日は何壊します?」
「物騒だな」
「冗談です」
多分違う。
二人でソファに転がりながら酒瓶を回す。
「君、自由ですよね」
ラクティーが言う。
「お前もな」
「ボスは好きですけど、たまに怖いです」
「だろうな」
「でも君は違う」
チャンスは目を細める。
「どう違う?」
「なんか、一緒に落ちてくれそう」
沈黙。
そして。
「……それ、口説いてる?」
「えっ」
ラクティーは本気で分かってない。
チャンス、大笑い。
「ははは!!」
「やっぱ好きだわ、お前」
「やった!」
嬉しそう。
危険である。
リエーレの場合
静かなバー。
人払い済み。
「来ると思っていた」
リエーレが座る。
向かいにはチャンス。
「だろうな」
グラスが置かれる。
「で?」
「単刀直入に聞きます」
リエーレは目を逸らさない。
「あなたの目的は何ですか」
「遊び」
即答。
「半分本当、半分嘘ですね」
「鋭い」
「ボスに執着している」
チャンスの指が止まる。
「……続けろ」
「あなたは“奪われた”側だ」
リエーレの声は静かだ。
「ですが、本当に欲しいのは物ではない」
沈黙。
「あなたは」
リエーレが細めた目で言う。
「マフィオソ本人を、取り返したいんでしょう」
空気が、変わる。
チャンスは笑わない。
数秒。
長い沈黙。
そして——
「……参ったな」
小さく笑う。
「お前、一番嫌なとこ突く」
「図星ですか」
「どうだろうな」
だが否定しない。
「でも」
チャンスはグラスを傾ける。
「お前も大概だぞ、リエーレ」
「何がです」
「ボスに依存しすぎ」
ピクリ、と表情が揺れる。
「……分析返しか」
「お互い様だろ」
静かな笑い。
完全に、
“理解者同士”の空気だった。
その夜。
全員、別々に帰宅する。
だが——
頭から離れない。
笑い方。
声。
視線。
距離。
「……最悪だ」
カポが呟く。
「会わなきゃよかった」
なのに。
また会いたいと思っている。
同じ頃。
チャンスはソファに深く座り、
静かにコインを弾いていた。
宙を回る銀色。
「……はは」
小さく笑う。
「面白ぇな、ほんと」
今日は、一家全員と会った。
誰もかれも、
予想よりずっと“良かった”。
「……参るね」
コインをキャッチする。
「久々だ」
ここまで、
“欲しい”と思ったのは。