━━━━━━━XXXX年XX月XX日。この世界には普通の人間なんていない。
云年前に比べたらそれはそれは愉快な世界になっている。
暴行、盗難、殺人なんてのは当たり前。
今日もどこかで恐怖を訴える叫びと、人生を終える者の息遣いが聞こえてくる。
いやいや、まだこんな事で驚いてもらっちゃ気が早いってんもんだ。
この世界に生きる者には、その人だけが使える能力が必ず備わっている。
人々はこれを、当時流行っていたファンタジー作品に習い”異能力“と呼んだ。
体から火を出す者はもちろん、”能力値“を操る者、概念をも捻じ曲げる者…。
一卵性の双子ですらも同じ異能力を持って産まれた事例は無い。
この世に1つとして同じものが存在しない異能力。
あぁ、そういえば、冒頭で普通の人間なんていないと謳ったがそれは間違いだったかもしれない。
普通じゃないこの世界こそが、今となっては私達の普通なのだから。
…さて、神の気まぐれによってこんな世界に迷い込んだ”スキル未保持者“はこれからどう生きていくのか…”普通じゃない人間“はこの世界で生きていけるのか…。
私も少し興味が湧いてきたよ。
君の記録が取れるまで…精々神を怒らせないよう、精一杯に足掻くと良い。






