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俺は永目に話しかけるために永目の方に向かった。
失う前に話したい、失いたくない、俺はそう思いその気持ちと同時に足も先走る。
永目は家のインターフォンを押した。
でも、そんな事は気にならず、俺は話しかけようとする。
俺は息を吸い口を開けようとした。
だが、出来なかった。
永目がインターフォンを押した家からは綺麗な女性が出てきた。
そしてそのまま永目はその家に入って行ったから。
俺はその場から一歩下がる。
さっきまで殴っていた手で顔を覆った。
(そりゃそうか、)
とても悲しい気持ちに襲われる。
永目は俺にも優しくしてくれるような奴なんだ。
そんな永目に特別な人が居ないはずないだろう。
少し考えれば分かることだ。
俺にもいつも通り接しただけで何も特別な意図はないんだ。
(ああ、考えれば考える程辛くなってきた)
俺は確信した。
今俺が抱いている感情が『好き』というものなんだと、
でも、永目には既に特別な人が居るんだ。
人生で初めて抱いた好きという感情。
この感情はどうすればいいんだ、
(なぁ永目、俺お前の事が好きなんだよ)
今すぐこの場から離れないとどうしようもない気持ちに襲われそうだ。
だから俺は重い足取りで家に向かった。
(永目と喋りたい、)
俺の頭はそう思ってばかりだった。
俺はその気持ちを抑えながら家の中に入った。
抑えているつもりなのに家に入っても永目の事を考えてばかりだった。
普段なら気になる酒の匂いもテレビの音も全くに気にならない。
もちろん、親父の姿も、
「おい゛ッ、何ボケッとつったんってんだッ」
親父の声でハッとした。
最近は寝ている親父は今日は起きていたみたいだ。
「別に」
「お前なぁ゛」
親父は俺に近付いてきた。
さっきまで気にならなかった酒の匂いが酷くして、頭がクラクラしそうだ。
「お前のせいで彩は死んだんだッ」
彩とは母さんのこと。
今まで何回と言われた言葉。
ずっと、ずっと違うって否定し続けてきた。
母さんは病気で死んだだけ、
そうだ、違うんだ、
「俺のせいじゃねぇってッ」
「てめえ゛のせいなんだよッ」
親父はそう言いながら俺の制服を強く引っ張った。
カランカランとボタンが飛んでいく。
「親父ッ何すんだよッ」
「俺は親でもなんでもねぇよ、出てけよッ」
「ああ゛俺だってお前のことなんか親とは思ってねぇよ゛」
違う、違う、そんなことない、
俺は親父のことを親だと、今まで育ててくれた大切な親だと思っているのに、
「なら、この家にいるはずねぇよな゛?」
親父は俺のことを壁まで追い詰める。
俺はその質問に答えられずにいた。
「なぁ゛」
親父は鬼の形相でそう言いながら、俺の腹を足で殴ってきた。
「お゛ぇ゛ッ」
「出てけよッなぁ゛」
俺は鞄を持ち無言で玄関に向かった。
視界が半分黒い、
俺は履きなれたボロボロの靴を履いて家を出た。
そして、息を整わせることに集中する。
「はぁ゛はぁ゛ッ」
俺の目からは涙が出る。
苦しい、
俺は安定しない足取りであの公園へと向かった。
公園の時計は7時20分を示していた。
俺は奥にあるベンチへと向かう。
ベンチはヒンヤリと冷たく、叩かれて熱い腹を冷やすにはとても良かった。
疲れたのだろうか、
まだこの時間なのに瞼が落ちるのが早い、
そう思っていた俺はあっという間に眠りに堕ちていた。