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第二十二章
偽りの旅路
翌朝。
まだ薄暗い時間。
みんな正門前に集合していました。
私はみんなの書いた遺書を預かり職員室に届けた後、合流しました。
「おはよう、綺ちゃん。良く眠れたかしら?」
「おはよう。御厨くんこそ、ちゃんと寝れた?」
「もちろんよ」
そう答えた御厨くんの首元には、昨日渡したドッグタグが付けられていました。
みんなに視線を向けると、全員がしっかりと首に付けています。
「じゃあ、行きましょうか」
私の声とともに、長期討伐専用車両が動き出します。
ゆっくりと學園を離れ、砂漠化した大地を進んでいきます。
車内は、怖いくらい静かでした。
みなさん思い思いに過ごしていますが、きっとこれから襲い来る恐怖心を落ち着かせているのだと思います。
そして――
神剣くんは寝ています。
いつもと変わらない光景。
いつもと変わらない旅。
そう思っていました。
車両は、ひたすら走り続けています。
同じ地形、同じ景色。
どれほどの時間が経ったのか。
どのくらい移動したのか。
全くわかりません。
「……そろそろ休憩にしましょうか」
私は地図から顔を上げ、みんなに声をかけました。
「賛成!座りっぱなしで身体が鈍ってまうわ」
椥辻さんが立ち上がり、身体を伸ばしてストレッチを始めました。
「ちょっと軽く身体を動かしてくるわ」
車両を降りた椥辻さんは、周囲を見渡します。
「……あ」
その視線の先に、一体の化物がいました。
椥辻さんは、それを見逃しません。
「百化狸やんけ……さて、どれにしよか……お!ちょうどええやん」
椥辻さんは御厨くんから貰った金棒を手にします。
そして――
次の瞬間────。
金棒が振り抜かれました。
ドンッ!!
百化狸が地面に叩きつけられました。
夕飯のおかずゲットです!!
「やったで!」
椥辻さんが嬉しそうに笑い、金棒を眺めます。
「名前……何にしよ……」
その一方で。
「薬草、ありますね」
皇刃くんは近くに生えている薬草を見つけ、しゃがみ込みました。
「少し、持って……帰る?」
「うん。お願い」
私は皇刃くんから地図に視線を戻します。
……いま、どの辺なのかしら。
この地図にある目印……まだ見つけてないのよね……。
いつも通りの休憩。
いつも通りの討伐。
――そのはずでした。
「……」
その時です。
御厨くんの視線が止まりました。
百化狸。
そして、皇刃くんが採取している薬草。
御厨くんは二つを交互に見つめています。
「……おかしいわ」
「何がや?」
椥辻さんが倒した百化狸の皮を剥ぎながら、御厨くんに視線を向けます。
ですが、御厨くんはすぐには答えません。
そして、もう一度百化狸を見ます。
次に、薬草へ視線を向けました。
「この二つ……同じ場所にいるはずないわ」
「え?」
御厨くんの声に、私は身体を震わせ、御厨くんへ視線を向けます。
「生息地が違うはずよ?」
御厨くんは周囲を見渡しました。
さっきまで、何もおかしいとは思っていませんでした。
けれど――
気づいてしまえば、明らかだったのです。
「……ここは、どこなの?」
その瞬間。
足元から、
ぐちゅっ……
と、湿った音が響きました。
「……!」
御厨くんが振り返ります。
しかし、そこには何もありません。
ただの地面。
何も変わったところなどありません。
「……?」
御厨くんは眉を寄せています。
聞き間違い……?
そう思った、その時です。
足元から、再び――
ぐちゅっ……
小さな音が響きました。
御厨くんは、ゆっくりと地面を見つめています。
その下で何かが蠢いていることなど、まだ誰も知りません。
そして。
私たちを包み込んだ地喰花の内部では、消化液が静かに車両を侵食し続けていました。
コメント
1件
っと、読み終えたわ。「偽りの旅路」か…。御厨くんの違和感、めっちゃ分かった。百化狸と薬草が同じ場所にいないって気づく観察力、さすがすぎる。で、ラストの地喰花の内部とか消化液でじわじわ侵食されてるって…この絶望感、たまらん。輪廻さんの「日常の隙間に仕込む違和感」の積み重ねが本当に上手い。次、どうなるか気になるわ…。
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