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とは言うものの、冷静に話せる予感はしなかった。
美鈴も慌てて、流石に妊娠のことまでは読めていなかったのであわあわしていた。
「美麗、私の家に来ませんか?」
「家!?」
「今、冷静に麗子さんと話せないでしょう? 貴方に何かあれば心配です」
「そうだよ、お姉ちゃん。そんな事、ないとは思うけど、話しあう前に――突き飛ばされたりしたら赤ちゃんが危険だし」
母は、小百合さんとおじさんに宥められていたが、冷静ではなかった。
私も突き飛ばされることなんて無いとは思いたいけど、こうなったら精神衛生上よくないのは確かだった。
「分かりました。あの、でも」
デイビットさんを睨みつける。
すると、『ん?』と優しく首を傾げて此方の様子を伺う。
「私、その、デイビットさんを許したわけじゃないです」
可愛げのないその発言に、遠くから幹太さんにプッと笑われてしまった。
「ひ、人の一生に関わることを、か……賭けるなんてゆ、許せません!」
怒る私とは裏腹に、デイビットさんは降参だと言わんばかりに両手をあげて首を振る。
「それは、一生賭けて謝る予定です」
一人で育てるなんて見栄を張っていたけれど、実際はそんな事不可能に近いことは薄々感づいていた。
でも、どうしてもお腹にもう一人心臓が動いているのだと思うと、気が気ではなくて。
だから、それが仕組まれたことで私と結婚する為だと豪語したデイビットさんに、腹立たしい気持ちと、私を思ってくれていた気持ちとそれぞれが相反して、素直に慣れずにいる。
ましてや、男の人の家にいくなんて初めてのことだった。
車のドアを開けられ、中に入るよう促されて後ろを振り返る。
美鈴と幹太さんが笑顔で見送ってくれていて、これは良い兆しなんだと目で言ってくれている。
不安を押し殺して、――車に乗り込んでデイビットさんの家へ向かう。
「美麗」
「はい」
「女々しい事を聞きますが、怒らないで下さいね。あ、先に抱き締めるかキスしていいですか?」
車に乗り込むや否や、そう言われ思わず首を振る。
「質問からどうぞ!」
まだレストランから出てもいないのに、この人は何を言い出すのか。
「では。何で連絡をくれなかったんですか?」
連絡?
「ずっと待っていたのに。私から女性の連絡先を聞くのは失礼かなと待っていました」
「そ、それは私の方が言いたいです! 連絡先なんてどこにも書かれていなかったです! だから、――だから貴方は一夜の過ちにするのかと思ってました」
私が連絡をしなかったような、あてこすりは止めて欲しい。
だって、ホテルで起きた朝、どこにも連絡先なんて書かれていなかったし、ワンピースまで無くなっていたら、春の夢の出来事だと誰だって感じてしまう。
「たった一回の逢瀬で貴方を手に入れるつもりは無かったです。それに、連絡先は書きましたよ」
「どこにですか?」
「そのワンピースを贈った時に、入れたメッセージカードの裏に」
メッセージカードの裏!?
すぐにカバンに入っていた財布の中から、あの日に貰ったメッセージカードを取りだした。
その裏に、名前と電話番号が書かれている。
「こんな所分かりません!」
「ふふ。でも気づいていて連絡をしなかったわけじゃないのでしたら、それで良いです。嬉しいです」
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