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久しぶりの投稿。
カンヒュにはまってた
ごめんなさい。
権力争いと裏切りが渦巻く王都――。かつて政敵によって全てを奪われた元貴族の令嬢、レティシアは、血と涙の復讐劇を胸に秘めていた。失った名誉と家族のため、彼女は冷静な策士として再起を図る。かつての味方も敵も、誰一人信用できない中、レティシアは巧みな政治手腕を駆使し、政略結婚や外交、裏取引を駆け巡る。
一方で、彼女の周囲には信頼できる仲間や、複雑な感情を抱く青年たちが集まる。愛憎入り混じる人間関係が、彼女の復讐の行方を左右するのだった。傷つきながらも前を向き、権力の座を目指すレティシアの戦いは、やがて王都の未来を大きく変える。
逆転と返り咲きの物語は、ただの復讐劇にとどまらず、切なさや葛藤、真実の愛も描きながら、緻密な政治ドラマ。
果たしてレティシアは、失われたものを取り戻し、新たな道を切り開けるのか――。
*
冷たい石畳の上に、雨が静かに降っていた。
灰色の空からは重たい雲が垂れこめ、遠く雷鳴が轟く。王都グランディール城門前は、尋常ならざる緊張に包まれていた。
黒いフードを深く被った群衆は、身を寄せ合いながらも沈黙を守っている。誰もが固唾を呑み、その中心に据えられた断頭台を見つめていた。冷えた石の感触が伝わってくるような、その断頭台に、今まさに一人の女が引き出されている。
彼女の名はレティシア・ヴァレンティーヌ。かつて“紅の伯爵令嬢”と讃えられた、美貌と知性を兼ね備えた令嬢だ。貴族の中でも一際目立つ存在でありながら、その華やかな美しさの裏には、多くの秘密と哀しみが隠されていた。
銀の髪は雨に濡れて顔に張り付いている。鮮やかな緋色のドレスは、もはや血の象徴としてしか映らない。
彼女の肌は青白く、震える唇はかすかに動くものの、声はほとんど聞こえない。
「魔女……!」
「王太子殿下を惑わせた罰を……!」
民衆の罵声が轟き、まるで遠く深海の中に沈んだように彼女の耳に届く。ひとつひとつの言葉が、まるで針のように胸を刺していた。
だが、その視線は一点だけに向けられていた。
──王太子、ルシアン・グランディール。
その冷ややかな眼差しで自分を見下ろす彼は、かつて囁き合った恋人。
約束を交わし、愛を誓ったはずの彼。
「お前のすべては嘘だったんだな、レティシア」
あの夜、彼はそう言って剣を抜いた。
彼の言葉は冷酷だった。真実を知らない者が、憶測だけで彼女を悪魔に仕立て上げた。裏切り者の烙印を押し、王家を脅かす魔女として断罪した。
しかし、誤解だった。彼女は王家を裏切ってなどいない。むしろ命を賭して王家を守ろうとしたのだ。
だがその真実は、誰にも届かなかった。
──そのはずだった。
「最後の言葉は?」
黒衣の神官が彼女に問うた。
レティシアはゆっくりと顔を上げ、曇天の空を仰いだ。
「……神よ。もしも時が巻き戻るのなら、私はもう一度この人生をやり直し、必ず真実を貫いてみせましょう」
その瞬間、稲妻が空を裂いた。
──そして、彼女の意識は闇に包まれた。
*
目を開けた瞬間、レティシアは息を呑んだ。
窓の外に広がるのは、あの懐かしい庭園。白百合が咲き誇る、ヴァレンティーヌ伯爵邸の中庭だった。
鳥のさえずりが聞こえ、初夏の柔らかな陽光がカーテンを通して部屋に差し込んでいる。だが、彼女はその明るさを感じられなかった。
鏡を見れば、まだ十七歳の少女の顔。
「……嘘。これって、まさか……」
胸の中に込み上げる感情が激しく揺れた。
死の直前、絶望の淵に沈んだはずの自分が、まるで時間を遡り、運命の分岐点に戻ってしまったかのようだった。
過去に戻った──二度目の人生が始まったのだ。
初めて自分の手を見つめた時、冷たい震えが走った。
「……これで、やり直せる」
その言葉は希望だけでなく、決意をも孕んでいた。
彼女が一度目の人生で失ったものは、あまりにも大きい。
愛した人の裏切り、信じた者たちの嘲笑、そして何より自分の無力さ。
しかし、今度こそは違う。
「今度こそ、私は真実を貫く。愛も、誇りも、すべてを守り抜いてみせる」
涙が頬を伝う。だが、その眼差しは前よりも鋭く、強くなっていた。
過去を知る者として、未来を変える者として、彼女は動き出す。
――断頭台の薔薇は、再び舞い散ることを許されなかった。
これからは、彼女が運命を切り開く悪女ではなく、真の愛と誇りを背負った女王となる物語が始まる。
*
目を開けた瞬間、レティシアは息を呑んだ。
窓の外に広がるのは、あの懐かしい庭園。白百合の咲き誇る、ヴァレンティーヌ伯爵邸の中庭。
鏡を見れば、まだ十七歳の少女の顔。
「……嘘。これって、まさか……」
運命は、彼女に二度目の人生を与えた。
胸の奥でくすぶっていた痛みと悔恨が、今は覚悟に変わる。
「……今度こそ、私は真実を貫く。愛も、誇りも、すべてを守り抜いてみせる」
そう決意した彼女の瞳に、かすかな光が宿った。
──これは、悪女と罵られた一人の女が、己の誇りと愛をかけて世界を変える物語。