コメント
4件
わぁ…すごくおしゃれなお話だ…おしゃれで綺麗で美しい話ですね アーサーの心情描写がないのが余計に好きです
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
⚠︎注意⚠︎
・仏英
・アニメ「連合会議ー似顔絵ー」から思いついた衝動ネタ
・モブ出てきます
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お店に入った時、真っ先にその絵が目に止まった。
レジの横に飾られたその絵は、素直に言えば凄く中途半端な絵だった。
水彩絵の具がほんの少しだけ塗ってあって、他は鉛筆で描かれた所で止まっていた。
本業の画家が見れば、「なんて絵なんだ」と言い出してしまいそうな、そんな中途半端な絵は、俺の心をガっと掴んだ。
何故かは分からない。けど、確かに俺はその絵に惹かれた。
知らないようで、知っているような風景をしていた。
「ねぇオーナー、この絵…」
「ああ、この絵ですか…私も父から聞いて、父も祖父から聞いて、その祖父も…と、そこそこ昔に一人のお客様から渡された品らしくてですね、詳細は分からないんですよ。そのお客様の容姿とか、その絵の風景は何処の土地かとか、でも魅力的で、未完成なのがもったいない」
古くに渡されたというなら、この絵画の作者は、もう既に死んでしまっているのか。そう思うと、酷く残念に思った。
この絵画が完成されることが無いのは、寂しく思えてしまった。
値札も無い、店に溶け込む飾りの一つの様に存在する絵画。
作者は、一体どんな気持ちでこの絵に筆を置き、どんな気持ちでこの絵を当時のオーナーに差し出したのだろう。 一体誰に向けて筆を走らせたのだろう。
その作者が生きている間に、出会ってみたかった。
そしたら今頃、この絵画は完成されていたのかもしれない。
描かれているのは、色々な種類の花だ。ここヨーロッパで多く見る花から、アジアやアメリカの方でよく見る花と、それは言葉の通り多種多様。
この絵に色がついたら、どれだけ色鮮やかで、色とりどりなのか考えて、また更に沼へと引きずられた。
どうして、未完成のまま終わらせたのだろう。俺は、それが酷く気になった。
誰かに何を言われたのかは知らないけど、少なくとも、俺とオーナーはこの絵を魅力的だと感じた。
できるなら、この続きを描いて欲しかったものだ。
オーナーと一緒にその絵を眺めていると、出入り口の扉に付けられたベルが音を鳴らした。
「おいフランス、何やってんだよ、こっちは寒い外で待ってるってのに…」
ベルの音が鳴りながら扉が閉まると同時に、鼻先を赤くしたイギリスが不満そうにこちらを睨んできた。
ついつい見とれ過ぎていた。おかげで、外にイギリスを待たせていたことを忘れていた。
流石にこれは謝っておかないと、夜な夜なケツバットを喰らいそうだ。
「ああ、ごめんごめん、でももうちょっとだけ待って、店内に居ていいから」
「……その絵、気になるのかよ」
「うん…まぁ、お兄さん結構好きだな、この絵…未完成なのが残念なくらいには」
「ふーん…」
俺が変わらず見とれながらそう答えると、イギリスも壁に飾られたその絵画を見た。
ただ、絵画を見るその目に、俺は何処か違和感というものを覚えた。
その目はまるで、この絵画の先を知っているかのように透明だった。
この絵画の過去、現在、そして未来をも知り尽くしているような、そんな、遠い目だった。
暫く絵画とにらめっこをしたら、イギリスは静かに踵を返して、「帰る」とだけ呟いてお店の出入口へと歩き進み始めた。
置いてかれそうになったものだから、俺は慌てて「え、ちょ、待ってよ!」と小走りにその背中を追いかけた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「え…引き取られた?」
「そうなんですよ、つい2週間前程ですかね…貰いたい、という方がいたので…」
あの日からしばらく経ってから、今度は一人であの店に足を運ばせると、あの絵画は綺麗さっぱり無くなっていた。
驚いてオーナーに詰め寄ると、どうやらあの絵画は2週間ほど前に誰かの手に渡ってしまったらしい。
(引き取れるなんて事、もっと早く教えてくれれば、俺が手に入れたのに…)
オレはガクりと肩の力を下ろした。
割と本気でショックだ。あの絵には、本当に魅了された。
ずっと眺めてたいな、と思うくらいには、目を奪われたのに、もう、見ることすら叶わないなんて。
引き取り手は一体何処の誰なんだろう。誰だか分かれば、まだ、もう一度お目にかかるチャンスがあるかもしれない。
「ねぇオーナー、その引き取り手、どんな奴だった?男?女性?」
「ああ引き取り手ね…それなら、以前貴方と一緒にこの店にいらしていた男性の方ですよ、あの金髪の、ヨーロッパ住みの方にしては、随分幼い顔立ちをなさった…」
「…え?」
オーナーが教えてくれた引き取り手に、俺は耳を疑った。
年に見合わず幼い顔立ちをした人物というだけなら、何人か、チラホラと候補はいたのに。
俺がココ最近で、一緒にこの店に足を運んだ奴は、一人しかいない。
イギリスだ。
あのイギリスが、あの絵を引き取ったというのか。何故。
あの時だって、特になんの反応なんて無かったじゃないか。 ただ静かに、眺めていただけなのに。
理由が知りたかった。何故いきなりあの絵を引き取ったのか。理由は。発端は。
知りたい欲が限界突破した俺は、急いでお店を飛び出して、イギリスの家へ走った。
普段は大事に、そして丁寧にセットしている髪も、今ばかりは気にしてられない。
一秒でも早く、イギリスの元へ辿り着きたかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「イギリス!居る!?」
イギリスの家の玄関口に立つや否や、俺はインターホンを数回押した。
でも、なんの反応も無かった。
留守か、刺繍にでも打ち込んでいるのか、どちらにせよ、このままインターホンを連打したところで、どうにもならないと悟った俺は、静かにイギリスの庭園がある方へと向かった。
そこには、ひとつのキャンバスがポツンと置いてあった。
その横には、お一人様専用サイズの机が置いてあって、その上には小さなパレットと色の着いた筆、そして沢山の水彩絵の具が散乱していた。
その光景を見て、俺は何となく察した。
そっとキャンバスを除くと、そのキャンバスにはお店に飾られていた瓜二つの絵が描かれていた。
ただ少し違うとこで、お店に飾られていた時よりも、水彩絵の具の塗られている所が増えていた。
そのタッチは、先に塗られていた所となんの代わりもない、明らかに同一人物がやったであろうタッチだった。
「何してるんだよ」
知らぬ間に彩られていたキャンバスに、あの時同様目を奪われていると、横から聞き馴染んだ声がした。
「…ねぇ、この絵」
「ああ…100か200年前に描いてたんだけど、飽きたから暫くの間知り合いに預かっててもらったんだ、そしたら最近、この絵が好きだって言う奴が居たから、ちょっと描く気が出たんだ、丁度この頃と同じ様に花が咲いたしな」
その言葉を聞いて、はっと顔を上げて庭園を見渡した。
俺の目に映る庭園は、その絵に描かれている風景とソックリだった。
なるほど。知っているような気がしたのは、これだったんだ。
何度も目に映してきた。イギリスが、手間隙かけて育て上げた、色とりどりの花々。 春夏秋冬、枯れることの無い花々。
そんな庭園の様子を、このキャンバスは写していたんだ。
「この絵、描けたらどうするの?」
「欲しいやつがいたら、やるつもりでいる」
「…そう、なら、直ぐにあげることになっちゃうね」
きっと、リビングに大事に飾ってくれる奴が貰うよ―――
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
連合会議ー似顔絵ーのやつを見て、イギってそこそこ絵描けそうですよね、連合会議のは結構可愛い目の絵でしたけど、英国紳士を大事とするイギなら絵画的な絵も描けそうです。
NEXT♡ 150
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈