治目線
そろそろ各学級の出し物も終わる頃、俺はスナと2-1へ向かおうとしていた。
だが、スナはあまり乗り気じゃないらしい。
「ねえ、ほんとに後つけるの?」
「当たり前やん。」
「当たり前なのかよ。もし侑にバレて怒られても俺は知らないからね。」
「提案したのスナやし。スナの責任やろ。」
「ほんと勘弁して..。」
2-1は隣の教室なので一瞬でつく。
さっきから荷物を運んだり、片付けをしている生徒が教室を出入りしている。
ちょうど終わったところだろうか。
少しだけ開いている扉の隙間から中を覗いてみる。顔の角度を変えながらバレないように侑を探す。
が、その姿はどこにもなかった。
着替えに行ったのかと思い、近くを通った人に聞いてみると、案の定、着替えに行っていた。
ついでに更衣室として使っている教室の場所も教えて貰う。
ここからは結構離れた空き教室で、移動時に皆に見られているのを想像すると少し腹がたつ。
こんなことで 、とは言えないが、自分の嫉妬深さと愛の重さを再確認させられる。
きっと侑はこの愛を受け止めきれない。
侑も俺に家族愛以上の感情を持っているに違いない。
でも侑は自由で、例え恋人でも縛られたくないタイプだ。もし付き合えたとしても、結局俺の愛の重さに耐えられなくて振られるのがオチだろう。
だから告白するのも悩んでしまう。振られて元の関係にすら戻れなかったらもう立ち直ることは不可能となる。
侑に俺と同等以上の感情が芽生えていれば今すぐにでも想いを伝える決心がつくのに─
数分歩いた後、あの空き教室が見えてきた。3階なので、いつ北さんが見ているか分からないから走らなかった。(走れなかった)
途中
「治はメイド服着ないん?」
「2人で着ってるとこみたいわぁ」
と大嫌いな先輩らから絡まれ た。何故だろうと考えるまでもなかったが、後で一発あの片割れを殴ってやろうと思った。
気づけば10分も時間を無駄にしていた。今すぐにでもこの場を離れたいが、先輩のウザ絡みのせいでそうさせてくれない。教室まであと少しなのに。
あと、ちょくちょく侑の話題を出してくるのがいけ好かない。もしかしたら俺と仲良くするのは侑に近ずきたいからかもしれない。
もしそうだとしたら絶対に侑に近づくのを阻止しなければならない。
結局先輩が離してくれたのはあれから20分後の事だった。
スナに目配せをして、早足で空き教室へと向かう。
教室の前で、扉の溝に添えられたスナの手の動きがピタッと止まった。
どうした、と開きかけた口がスナの人差し指で止められる。
「だ れ か い る」
だれかいる、とは侑以外にも人がいるということだろう。
さっきから言い争いをしているような声も聞こえてくる。
これは結構まずい状況なんじゃないだろうか。
「ほんまにッやめてくださいッ..!俺ファーストキスの人は決めてるんですッ!」
怯えるような、苦しいような、そんな侑の声が外まで響いてくる。
きっと今侑はキスを強いられている。
いてもたっても居られなくて教室に飛び込む。
そこにはバスケ部の先輩と上裸で壁に押し付けられている侑がいた。
「おい、何してねん」
俺の怒りはすでに最高潮へと達していた。
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