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第74話 〚宿題会と、甘い寄り道〛
海翔の部屋には、
机を囲むようにして六人が集まっていた。
澪、海翔、玲央。
えま、しおり、みさと。
ノートのページをめくる音と、
ペンが走る音が重なる。
「うわ……この問題むず」
えまが頭を抱える。
「そこ、こうじゃない?」
玲央がさらっと答えると、
「さすが……」と感嘆の声が上がった。
澪は黙々と英語と向き合っている。
時々、海翔がちらっと様子を見る。
(ちゃんと進んでるな)
そう思うだけで、少し安心する。
――その時。
「みんな、休憩にしなさい」
ドアが開いて、
海翔の母が笑顔で入ってきた。
両手には、
お菓子がたっぷり入ったお皿。
「六人分、あるからね」
「ありがとうございます!」
一斉に声がそろう。
澪は少し驚きながらも、
「……ありがとうございます」と小さく頭を下げた。
クッキーやチョコをつまみながら、
会話が自然と増えていく。
気付けば――
時計の針は、昼の三時を指していた。
「え、もうこんな時間?」
しおりが目を丸くする。
「集中してたな〜」
みさとが伸びをした。
そこへ、
今度は別の足音。
「お、勉強会か」
入ってきたのは、
海翔の父だった。
「よし、じゃあ」
にっと笑って言う。
「このまま、みんなでご飯行くか?」
一瞬の沈黙のあと。
「行きます!」
「ぜひ!」
即答だった。
⸻
車に揺られて着いたのは、
スイーツとご飯が食べ放題の店
――『ルミナスガーデン』。
テーブルに料理が並ぶ。
澪と海翔はカレー。
えまはハンバーグ。
しおりはステーキ。
みさとはシチュー。
海翔の父は、なぜかラーメン。
「なんでラーメンなんですか」
海翔が突っ込むと、
「食べ放題にラーメンがあるなら、行くでしょ」
と父は堂々としている。
笑い声が広がった。
デザートコーナーでは、
えまがケーキを山盛りにし、
みさとはプリンを二つ確保。
澪は少し迷って、
小さなパフェを選んだ。
「それ、可愛いな」
海翔がぽつりと言う。
澪は一瞬だけ目を逸らして、
「……うん」と小さく返した。
気付けば、
外は夕方の色。
時計を見ると、夜の六時だった。
「そろそろ帰ろうか」
海翔の父が言い、会計を済ませる。
店を出ると、
少し涼しい風が吹いていた。
帰りは、父の車で順番に送ってもらう。
「今日は楽しかった!」
「またやろうね!」
それぞれ別れ際に手を振る。
最後に残ったのは、澪。
「送ってくれて、ありがとうございました」
澪が丁寧に言うと、
「こちらこそ。仲良くしてくれてありがとう」
父は優しく笑った。
家の前で車を降りる。
「……今日は、ありがと」
海翔が少し照れた声で言う。
澪は、少しだけ笑って、
「うん。楽しかった」
車が走り去ったあと、
澪は胸の奥が、ほんのり温かいことに気付いた。
(こういう時間、いいな)
静かな夜の始まりの中で、
その気持ちは、そっと残っていた。