「…やはり、私は間違っていたのか」
彼は静かにしかし深い苦痛を滲ませて呟いた。
六葉が自分を特別視し、自分の心を開いてくれることで彼は満たされていた。
しかしその感情が人前で露呈するたびに彼は弱さを晒し、生徒会長としての威厳が揺らいでいることもまた事実。
そしてこのように六葉が他の生徒と親しくしているのを見ると、彼の心の奥底にある**「*支配*」と「*独占*」**の感情が頭をもたげてくるのを感じた。
(六葉は、私の領域を侵食しすぎている。このままでは、私は制御を失う。そして、六葉自身も、私の私情によって周囲から孤立させられるかもしれない)
彼は、六葉を 、「*守る*」という幼い日の誓約を、別の形で思い出し始めた。
「六葉を世間の好奇の目や、私の勝手な感情から切り離さなければならない」
彼は冷たい覚悟と共に固く目を閉じた。
自分が六葉を遠ざけ、以前の冷酷な、手の届かない生徒会長に戻ることで六葉は平和な学園生活を送れるはずだ。
そして自分自身もこの制御不能な感情から解放され、完璧な生徒会長に戻れる_
それが、二人にとって最良の道だと、彼は自分に言い聞かせた。
彼は目を開くと表情から感情の全てを消し去り、冷徹な仮面を完全に修復した。
そして二人の生徒が下駄箱に消えていくのを見届けた後、生徒会室へと続く階段を氷のように冷たい足取りで登り始めたのだった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!