虎大と竜也は満足気に頷いていた。
二人ともこの北の地で出会ったカイムからコユキと善悪の仲間だという事を聞いていたのだ、んまあ、ちょっとしたサプライズのつもりだった様だが、カイムと善悪の喜びように心底感動を覚えている様であった。
カイムが言った。
「坊ちゃんとオルクスが私と熊達をここに送った限りは何か理由がある、いつか必ずこの地に迎えに来てくれる! そう信じて待ってたキョロロよ…… 暫(しばら)くしたらこの二人に会ってね、コユキ様がイラとルクスリアに謝っていた件(くだり)を見てたからピンッと来てさ、ここで待つ事に意味があるんだと確信したキョロロ、それでこの場所で出来る事を頑張っていたんだよぉー、キョロローン、キョロローン!」
「カイム!」
「カイムちゃん! アンタって悪魔は……」
「良かったぜ、グスッ、なあ竜也」
「全くだぜ兄貴、グスッ」
コユキと善悪だけでなく虎大と竜也の二人は貰泣きだろう、ホロリとしている。
トシ子が不思議そうな顔をしながら言う。
「それにしても尾瀬に送ろうとした筈が北海道まで飛ばされてしまうとは…… いったい何が原因だったのかのう?」
デスティニーが気まずそうな表情を浮かべて答える。
「あーそれな…… アスタロトがコユキ達と行動を共にした後さ、バアルを連れて来いってフェイトがラビスに頼んで伝えたんだよな? 俺そんなの知らなかったじゃん? んだから尾瀬のクラックの入り口にさ、細工して置いたんだわ…… 魔力が通れるように隙間を作ったんだけどさ、それで魔力が他の場所より濃くなってたんじゃないかな? 転移系の魔法って魔力の密度とかでズレたりするじゃん、申し訳!」
善悪が思い出した様に言った。
「あーそう言えばクラックの入り口から目でも捉えられるくらい濃密な魔力が溢れていたでござるなぁ、んでも何でそんな事したのでござる? 地上の魔力を減らす事が目的でござろ? ヘルヘイムから溢れ出させたりしたらもっと濃くなっちゃうじゃん? おかしいのでござるよ?」
「逆だよ善悪、魔力を集めていたのさ、地上からヘルヘイムに向けて! 考えても見なよ、前回の主力がバアル軍だったんだぜ? 少しでも強化しようとしたんだよ、んだから俺のせいって訳なんだわ、ゴメンな、悪気があった訳じゃ無いからさ、許してヨロシク」
コユキはやれやれといった表情で答えとし、続けて思い出したように言った。
「そう言えばあの時ってアスタとお婆ちゃんの存在の絆通信が遮断されたのよね? それも魔力密度が高かったことが原因だったのね、きっと! 善悪も一年前にカイムちゃんが消えてから、毎日朝昼晩と欠かさずに通信して来たってのに、一回も通じなかったんでしょ? 恐ろしい物ね、高密度の魔力って……」
善悪も同感だった様だ、抱き合っていたカイムを地面に降ろし、顔を覗き込みながら言ったのである。
「本当でござるよ、拙者だけじゃなくベレトやゼパル、ガープもしょっちゅう試していたでござるが通じなかったもんね、やはり魔力の除染作業を急がねばならないのでござるなぁ」
カイムはここまでの詳しい事情も知らない癖に当然だと言わんばかりに言った。
「きっとそうだよ、でもこうして再会できたんだから過ぎた事はもう良いじゃん! これからの事を考えようよ! でしょ? キョロロン」
流石はカイム、尤(もっと)もな意見である。
だと言うのにレグバのリーダー、ロットが首を傾げながら言ったのである。
「いやそれはおかしい話だぞ、魔力密度が濃ければ濃い程、通信系の魔法やスキルは感度が良くなるもの、これが常識だからな、ほれ、コユキも善悪も記憶を取り戻して魔力が増えてから使えるようになったんじゃ無いか? 悪魔や神々、魔獣が使えて一般の人間が使えないのはそのせいなんだからな」
トシ子も頷いて続いた。
「そうじゃぞい、それが常識じゃ、それにヘルヘイムにお前らが向かった頃のアタシは、ダーリンとの先行きに不安を感じていたからのぉ、それが繋がらなかった理由じゃぞい」
「え、だったらどうして……」
「カイムと繋がらなかった理由はなんでござろ?」
「謎だね、でもそんなこと良いじゃん、どっか行くんでしょ? それとも帰るの? 早く行こうよキョロロン」
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