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[黒尾目線]
文化祭で忙しいはずなのに──なんか胸騒ぎがして、気付けば彼女を探していた。
(……あれ、あっち人混み多いな)
視線の先に、見知らぬ男子達が彼女に話しかけているのが見えた。
しかも、進路を塞ぐみたいな手の出し方。
(へぇ……調子乗ってんね)
普段ヘラヘラ笑ってる俺だけど、
“俺の子に触ろうとした”ってなったら話は別。
わざとゆっくり歩いて、会話を耳に入れた。
「彼氏とかいるわけ?」
──はい、アウト。
(……俺の可愛い彼女になんて言ってんの)
そんなこと言われたら、出るしかない。
「いるけど?」
わざと軽く、わざと余裕満々で声をかける。
彼女がびっくりして振り向いた瞬間、
その目が少し不安そうだったのを見て、胸の奥がきゅっとなる。
(……守る)
他校の男子はすぐ言い訳みたいな声を出したが、
俺は笑いながら肩に手を置いた。
「俺の彼女に絡んでたよねぇ?」
にっこり。
でも全然笑えない。
「うん、でもね?
可愛いから仕方ないよね〜。
でも触っていいのは俺だけだから、覚えといて?」
最後だけはしっかり言う。
相手はビビって逃げていった。
(よし、終了)
「大丈夫だった?」と頭を撫でたら、
彼女の指が少し震えてるのが分かった。
(怖かったよな……ごめん)
でも、それは口には出さない。
代わりに、明るく笑った。
「ついてこっか?
今日は俺、ずっと護衛やるから」
ちょっと拗ねてるみたいな顔で俺を見上げる彼女。
(かわいい……)
「ほら!一緒に回るぞ」
もう片方の手で指を絡めて引き寄せる。
「離れんなよ?
……お前、ほんとモテるんだからさ」
そう言いながら、
心の中ではずっとこう思っていた。
(絶対、守るから安心しろよ。俺がお前の彼氏だから)
文化祭のざわめきの中で、
彼女の手はいつもよりぎゅっと強く握られていた。