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ここに来てから、何回か季節を重ねたけどやっぱり冬は慣れない。
「ひぇーっ、寒い寒い 」
特に頬をちくちく刺すような風、早い時間であればあるほど強いから、朝早くから仕事がある私にとっては宿敵だ。
しかし、このどうしようも無い宿敵にも対策があるのだ。
マフラーである。
ただのマフラーではない。貴銃士であるフルサトさんが編んでくれた、特別なマフラーなのだ。
少しでもレジスタンスの財政の役に立てたらと始めた郵便局のバイトだったが、冬の朝の寒さは盲点だった。くっそ寒い。
部屋の入口近くに置いてある姿見で服装を整えて、いざ出発。極寒へ。
やっぱり、マフラーがあるのと無いのではだいぶ違う。空気に触れる皮膚面積が減ってとてもあったかい。
それに、フルサトさんがこのマフラーをくれた時の笑顔を思い出せば外側だけじゃなくて心までぽかぽかしてくる。
「これ、サイズは合ってるか分からないケド、、、」
夕食を食べ終わり、食堂でだべっている人もまばらになってきたのでどれ私も、、、と退散しようとしたら、突然フルサトさんに呼び止められた。
「これ、、、マフラー?」
「ほら、最近マスター朝早くにアルバイトに行くデショ?
帰ってくる時、寒くていつも鼻が真っ赤になってたから、よかったら使って?」
渡されたマフラーは赤くてふわふわだった。端っこの方には最近基地に住み着いた猫の刺繍が入っていて、ひと目でこのマフラーにたくさんの時間と労力がかかった事が分かる。
「この猫ちゃんって」
「気づいた?窓辺で作ってたんだケド、冊子に猫ちゃんが来てネ。マスターが可愛がってた子だから、刺繍させてもらったのよ。」
「あ、あの!今付けてもいいですか?」
「えっ?いいケド、、、」
前からフルサトさんは手が器用で、他の皆にマフラーとか手袋とかを作ってたのは何となく知ってた。前にクニトモが見せてくれたけど、市場で売ってるのと変わりないくらい綺麗でフルサトさんが作ったと聞いた時はびっくりした。
「、、、サイズぴったりです」
「ほんと?良かったわァ〜合わなかったらどうしようって心配だったから、、、マスターすごく似合ってるわヨ!」
思わずうへへ、と気持ち悪い笑い方をしてしまった。
「明日のバイトからつけます。宝物にします。」
「そういって貰えると嬉しいワ。でも、大変な時は直ぐに言ってネ。力になるから!」
それじゃあおやすみなさい と、フルサトさんは食堂を出ていった。
その後めちゃくちゃガッツポーズしたのは誰にもバレてないはずだ。多分。
外はまだ少し暗くて、風がぴーぴー吹いている。いつもならそのままUターンをぶちかまそうとするが、今日の私は違うのだ。
だって、こんなにあったかいマフラーを着けているのだから!