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「いずれにせよ、僕の生存率は高くなさそうだね。……だったらさ、僕、先生の手伝いをしていいかい?」
「なに?」
「家にいても、学校にいても、どっちにしろ殺される可能性が高いんだろ? だったら、拓海をこんなふうにしたやつに一矢報いたいんだ! 正直、まだ拓海が死んだって実感がない。突然のとこだし、わけのわかんねぇ出来事ばかりで、感情が追いついていない。けど、拓海とはずっと友達だった。それが、こんなことになって、黙ってられるかよ」
「……俺が事情を話したのは、お前の生存率をあげるためだったんだがな。俺を手伝うのは、危険すぎる。敵の手がどこまで伸びているかわからない。一応、あれほど高度な死霊術なら、生きる屍(リビングデッド)を一体作るのにも相当時間がかかるだろう。だが、相手がいつから準備を始めていたかわからない。学校の大半のやつが既にゾンビ化しているのかもしれんぞ。そうなったら……」
先生の話を聞きながら、僕は必死で自分の考えをまとめていた。
「それは、ないんじゃないかな?」
「何?」
「だって、ここは学校だ。卒業生に新入生、毎年人が入れ替わっている。何か異常があったら、誰か気づいているはずだ」
「ふむ、一理あるな。だが、教師たちがすでにゾンビ化し、異常を隠蔽しているとしたら?」
「それは……、そうだ、先生は、学校に教師として潜入したんだよね。そのことを知っている人は?」
「校長や教頭など、一部の人間は、俺が特殊な任務で入ってきたことは知っている。ただ、魔術だのなんだの、詳しい話は知らない」
「なら、少なくとも校長や教頭はまともな人間なんじゃないか?」
「それは何とも言えないな。まともな人間のふりをしているのかもしれないし、俺を襲ってきたのは校長たちから情報が漏れたのかもしれん」
「うーん、そうか……。だけど、少なくとも僕は異常に気づいていなかった。例えば三年生をゾンビにして、一年生ということにして再入学、とかやったらさ、知り合いが気づいて、おかしいって噂になるだろ? そんな噂聞いたことない。学校にゾンビが紛れ込んでいるとしても、教師とか一部の人間で、生徒が丸ごととか、そこまで大規模なものじゃないんじゃないかな?」
「ふむ、希望的観測の面もあるが、まあ筋は通っているな。言いたいことはわかった。だが、相手が少人数であっても、危険であることに代りはない。俺の仕事は、黒魔術師を仕留めることであって、人を守ることじゃない。例え目の前でお前が殺されかけても、俺は黒魔術師を倒すことを優先する。俺に協力するというのは、黒魔術師を倒すことに命を賭ける、ということに等しい。それをお前はわかっているのか?」
「分っているか、ってあらためて聞かれると、自信はないさ。けど、……先生は今、敵をあぶりだしたいんだよな? なら、僕にひとつアイディアがある。無茶な考えだけど、先生の立場なら出来るんじゃないかな?」
「ほう? 話してみろ」
「ダメだ、先生が手伝わしてくれるって約束してくれないと」
「それこそダメだな」
「なんでだよ!」
「アイディアの内容次第だからだ。……しょうもない考えなら、残念ながら不採用だ」
そういうと先生はにやりと笑った。それって、アイデア次第では認めてくれるってことだよな? ようし……
しばらくして。
「ふむ。確実ではないが、このまま座して待つよりはましだな。いいだろう、採用しよう」
「じゃあ、手伝っても?」
「かまわない。だが、後悔するなよ」
よしっ! と一瞬気持ちが高ぶった、……が、すぐにテンションは落ちていった。そりゃそうだ、僕はこれから謎の魔術師と戦うのだ。僕は、どうなってしまうんだろうか……。(続く)