テラーノベル
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火曜日。
朝のホームルーム。
「来月の文化祭についてだが――」
担任が黒板に予定を書いていく。
教室が一気に騒がしくなる。
「うちのクラスは喫茶店をやるぞ」
「やった!」
「何の衣装にする?」
「メイドとか?」
クラスメイトたちが盛り上がる中、玲は静かに話を聞いていた。
すると――。
「天城さん、何がいい?」
「私は……」
星羅は少し考える。
そして玲を見る。
「玲くんは?」
「俺?」
「うん。玲くんがやりたいのがいい」
「別に何でも」
「じゃあ私も何でもいい」
「……」
「玲くんと一緒なら」
「……そうか」
星羅は満足そうに笑う。
結局、クラスの出し物はカフェに決まった。
放課後。
「じゃあ今日は文化祭の係を決めるぞ」
担任が言う。
黒板にいくつかの係が書かれる。
「装飾係」
「調理係」
「衣装係」
「宣伝係」
次々と手が挙がる。
「黒瀬、お前はどうする?」
「……装飾で」
「じゃあ天城は?」
「私も装飾がいいです」
「二人とも装飾な」
星羅は玲を見る。
「一緒だね」
「ああ」
「ふふっ♪」
その日の放課後。
装飾係のメンバーが集まり、作業を始める。
しかし――。
「ごめん、部活あるから!」
「俺も!」
「明日やるわ!」
一人、また一人と帰っていく。
気づけば。
教室には玲と星羅しかいなかった。
「……二人だけになったな」
「うん」
星羅は嬉しそうに笑う。
「じゃあ、頑張ろう?」
「ああ」
二人で画用紙を切る。
飾りを作る。
壁に貼る。
作業は思ったより順調だった。
「玲くん、これ持って」
「ああ」
「もう少し右」
「ここ?」
「うん!」
星羅が玲のすぐ隣に立つ。
肩が触れる。
「……近くないか?」
「そう?」
「……まあいいけど」
「じゃあ、このまま♪」
星羅は嬉しそうに笑う。
しばらくして。
「……疲れた」
玲が椅子に座る。
「お疲れさま」
星羅が飲み物を差し出す。
「これ」
「……俺の?」
「うん」
「いつ買った?」
「さっき」
「わざわざ?」
「玲くんが喉乾いてそうだったから」
「……ありがと」
「どういたしまして」
玲が飲み物を飲む。
「……美味い」
「よかった」
星羅は玲を見つめる。
――こういう時間が好き。
学校でも。
家でも。
配信でも。
玲くんと一緒にいられるなら、それだけで幸せ。
でも。
最近、少しだけ欲が出てきた。
もっと。
もっと近くに。
「玲くん」
「ん?」
「文化祭、一緒に回らない?」
「いいけど」
「本当に?」
「ああ」
「約束ね?」
「……約束」
星羅は笑った。
そのとき。
教室の外から声が聞こえる。
「天城さん、まだいる?」
男子生徒だった。
「……!」
星羅の表情が一瞬だけ変わる。
「どうした?」
「ううん」
星羅は立ち上がる。
扉を開ける。
「どうしたの?」
「今日、一緒に帰らない?」
「ごめんね」
星羅は笑顔で答える。
「まだ仕事があるから」
「そっか……じゃあまた今度」
「うん」
男子が去っていく。
星羅は扉を閉める。
「……」
「人気者だな」
玲が言う。
「……そうかな」
「よく誘われてる」
「興味ないよ」
「そうなのか?」
「うん」
星羅は玲のほうを向く。
「私が一緒にいたい人は、もう決まってるから」
「……」
玲は黙る。
「……何?」
「いや」
「顔赤いよ?」
「気のせい」
「ふふっ」
作業を終えた二人は、学校を出る。
夕暮れ。
「今日は楽しかったね」
「ああ」
「明日も一緒にやろうね」
「そうだな」
「……玲くん」
「ん?」
「私、文化祭の日……楽しみにしてる」
「俺も」
その一言で。
星羅の心臓が大きく跳ねた。
――俺も。
たった二文字。
それだけなのに。
星羅には、何よりも大切な言葉だった。
夜。
星羅は自室で文化祭の準備をしていた。
机の上には、学校で使う装飾品。
そして――。
文化祭当日の予定表。
星羅は玲の名前が書かれた欄を見つめる。
「……文化祭の日は、ずっと一緒」
指で玲の名前をなぞる。
「誰にも邪魔させない」
小さく笑う。
「だって……約束したもんね」
その声は優しかった。
けれど。
その瞳には、昨日よりも強い独占欲が宿っていた。
そして彼女は知らない。
文化祭が――。
二人の関係を大きく変える一日になることを。
#青春恋愛
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奇蹟あい
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コメント
1件
「二人きりの放課後」、いいですね……。文化祭の準備って、自然と距離が縮まるシチュエーションですよね。玲くんが「俺も」って言ったときの星羅ちゃんの喜び、すごく伝わってきました。最後の「誰にも邪魔させない」の含みがあって、この先の展開がすごく気になります。続き、楽しみにしてますね。