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——数時間前——
蛇珀が天獄の前に強制連行されたその時。
蛇珀はこれまでの自身の行い、そしていろりと出逢ってからの変化を懺悔させられるように地面に両膝を貼りつけられ身動きが取れなくなっていた。
『度重なる人間に対する必要以上の寿命の取り立て。規律を乱す言動。主は特別な神と今まで多めに見ておったが、もはやこれまで。人の子に心奪われ責務を怠り、あげく感情の起伏による大地の揺れの数々、見過ごしてはおけぬ。これより主に苦行を課す。そして主を乱した人の子。よきことではないとわかっておきながら主を仙界から遠ざけ、自身の欲で側に置いた罪もある。よって人の子にも一時、竜の寝床での肉体的な苦行を施す』
蛇珀は天獄の力により口を開くことすら許されない。
一身に重力がかかり、地に腰を据えているのがやっとであった。
しかしそれほどの力の差を見せつけられても、一切怯える様子はない。
絶望など露ほどもなく、蛇珀本来の気性の強さで天獄を睨みつける瞳には光が宿っていた。
「……ふざ、けんなよ……」
『……何……?』
「悪いのは、俺、だ……いろりは、俺を信じて、ついて来ただけ……あいつに苦行を強いるのは、許さ、ねえ……」
天獄にもし眼《まなこ》がついていたなら、この時間違いなく落っこちるほど見開いていただろう。
天獄の緊縛を自らの力で突破する者など、どこにも存在しなかったのだから。
しかし蛇珀は口を開いた。
そしてついには、戒めをそのままに身体を震わせながらも低い姿勢で立ち上がったのである。
『……許さぬ? ならどうする? 我から逃れる術はないぞ』
「俺が、いろりの分まで罰を受ける……! 百倍でも、千倍でも……それで文句はねえだろ、天獄様よォ!!」
『……よくぞ申した。成せるものなら成してみよ』
「望む、ところだぜ……!!」
蛇珀の不甲斐ない自身に対する怒りと、愛する女に対する莫大な想いは、天獄までも驚愕させる強靭な力と化していた。
上野文
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