妊娠中の🌸はそわそわしていた。今日は侑への「赤ちゃんの性別サプライズ」決行日。
テーブルには小さめのケーキ。
見た目は普通だけど、中には──
淡い水色のクリームが隠れている。
そんな中、侑が帰宅。
「ただいま〜。あ〜腹へった。なんかおもろいこと起きへん?」
今日に限ってフラグを立てる。
侑はケーキを見ると目を細める。
「え、ケーキ? なにこれ。俺、今日なんか頑張ったっけ?
あれ? もしかして俺、知らんうちに世界救った?」
「そんなことしてないよ」
「ほななんでケーキなん? え、俺泣くようなこと起きる?」
「なら、切ってみて?」
自信満々に言うと侑はニヤっと笑い、ケーキナイフを構えた。
「ほな、華麗にいきまーす」
スポンジが割れ、その瞬間──
淡い水色がふわり。
侑、フリーズ。
「……………は?」
水色の部分を見て、
🌸の顔を見て、
また水色見て、
「……え、これ……青?」
「うん。青だよ」
「……青って……もしかして?」
「そうだよ。男の子」
沈黙0.3秒。
「っっしゃあああああああああああ!!!!!」
侑、大爆発。
「侑! 近所迷惑!!」
「いや無理やって!! 俺、息子できんの!?
マジ!? 嘘ちゃう!? 俺の子!? え!? ちょ……待って……!」
侑は部屋をうろうろしながら頭を抱える。
「どうしよ……絶対かわいいやん……
俺みたいにイケメンで……🌸に似て優しくて……
あーーやばい……もう好き……! まだ生まれてへんのに好き!!」
ぐるぐる歩きながら突然しゃがみ、
お腹に向かって真剣に話し出した。
「なぁ息子。パパやで。
お前のこと絶対守るし、なんでもしたるわ」
その声はほんの一瞬だけ低くて優しい。
……と、急に顔を上げて勢いよく立ち上がる。
「よし決めた!!!!!」
「え、なにを?」
侑は指を天に突き上げた。
「息子、絶対バレーさせる!!!」
「えっ!?」
「いやいやいや、これはもう運命やろ!?
俺の息子やで!?
身長も伸びるに決まっとるし、ジャンプ力もえげつなくなるし、
絶対天才スパイカーになるやん!!」
突然ダイニングの椅子に向かってフォームを確認し始める。
「ほらこうやって……いや、この子はもっと跳ぶかもな……
あかん、想像しただけで泣きそう……
俺の息子がレシーブして、俺がトスあげて……うわもう最高やん……!」
「まだ生まれてもないよ!?」
「ええねん。
俺は今日から“宮侑・父親コーチ”になるからな」
胸をどや顔で叩く。
「毎日ボール触らせるし、
ハイハイし始めたらミニボール転がして取らせるし、
歩いたらすぐにトス教えるし……
やっべぇ、楽しみすぎる……!」
完全にスパイラルに入った侑は、
ケーキの青い部分を見てはにやけが止まらない。
「は〜〜……息子か……
俺、絶対メロメロになるわ……」
その顔は、MSBYのどんな試合よりも嬉しそうだった。
水色のケーキは、
三人の新しい未来の輝きみたいに見えていた。
コメント
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全力で喜んでるところが沼すぎる