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セラおとアキラと喋りながら、ふと中庭を見つめた。
涼しい風が頬をすり抜けた時、ベンチに座っている人物達が目に入る。
『……。』
金髪のサラサラな髪と、風に靡く綺麗な黒髪。あれはきっと、奏斗とマリさん。そんな二人の姿が俺の目には眩しく、それと同じように羨ましく映った。
奏斗の膝にはお弁当らしきものが乗っていて、それを丁寧に食べていた。それをマリさんが嬉しそうに見ている___お前、お弁当とか作んないじゃん。いつもパンばっかだったじゃん。
___人が作ったものなら尚更食べなかったくせに
『…馬鹿野郎』
「…?誰がですか?」
『ぁ、いや…なんもない!ひとりごと!』
アキラから声をかけられて、ハッと我に戻る。視線を二人から逸らしてアキラを見た
不思議そうに眉を顰めて俺の様子を伺っているアキラを宥めるようにして言葉を紡ぐ。
『本当に何もないから!』
「なら、…いいんですけど」
『アキラは優しいなー!』
肩をぽんぽんと叩けば、アキラは少しだけ安心したような顔でまた食事に戻った。
いつも通りに笑ってセラおとアキラの話に相槌を打つ。でも俺の心臓はぎしりぎしりと嫌な音をたたていた。
横目で何度か奏斗の方を見る。けど、二人はずっと楽しそうに話していて、言葉にし難い感情が胸の中を支配した
奏斗が今日屋上に来ないことは知っていた。
奏斗から聞いた訳でもない。でも分かるじゃん。教室で仲良さげに話してお弁当貰って出て行く奏斗を見てたら大体察しはついた。
きっとマリさんの作ったお弁当を一緒に食べるんだろうな。って
見なくても分かる。
きっと今も楽しそうに話してるのだろう。それで、終いには告白して付き合って。 俺に幸せそうに報告しにくるんだろ、きっと
分かるよ、そんくらい
『……、嘘つき…』
___マリさんの事好きじゃないって言ったの、嘘だったのかよ。
正直に言ってくれたら普通に応援してたのに、相棒に言うのってそんな嫌?
…いや、俺も奏斗に好きな人言うのは嫌だったけどさ、
でも嘘つかんくてもいいやん
嘘つかれる方がキツイの知ってるやろ
___期待した俺が、バカみたいやん
『(…なに言ってんだ、…俺)』
そもそも、期待ってなに?
奏斗は俺に期待させることなにも言ってなかったし、”好きな人いる”っていってたじゃん
ああ、もう分からん。
なんなんこれ
グルグルと回る頭を一回沈めようと、ぐしゃぐしゃと髪を掻き乱す。
アキラとセラおの視線も気づかないフリをしてギュッと手を握りしめた
___分かんねえ、分かんねえよ
この頃、変なんだ自分が
俺以外見ないでとか、奏斗の好きな人を知りたくない、とか
友達に向ける感情ではないはずなのに、俺は奏斗にその感情を向けてしまっている
でも、奏斗のことは好きじゃなくて、
分からない、
やっぱり分からない、
___この感情がなんなのか
教えてよ、奏斗
「奏斗くんは、好きな人とかいるの?」
『え、』
突然、横から聞こえてきた言葉に耳を疑う
箸を止めてマリさんの方を見ると、マリさんはお弁当を口にしながら僕を見ていた
「…あ、ごめん急に!…これプライバシーだよね、ごめん」
『いや、大丈夫だよ?』
『うん、まあそれなりには、いるよ。好きな人』
「……そっか。…あー、いいなあ……私も、両思いになりたいよ」
マリさんは軽く笑うと、髪をクルクルと弄った。その笑顔の不器用さにどこか胸騒ぎがして思わず声をかけてしまった
『…マリさんも好きな人いるの?』
あまりにも自然に喉から出た言葉に自分でも驚く。マリさんは少しだけ目を見開き、ふと瞳を伏せた
「…いるよ、好きな人。……片思いだけどね、」
『そう、なんだ』
なんて言えばいいか分からなくて口を紡ぐ。こんな時、なんて声を掛ければいいのか分からない。マリさんは悲しそうな顔をした後、いつもの笑顔に戻った
「奏斗くんが悲しそうな顔してどうすんの!…私は大丈夫だよ、奏斗くんとご飯食べれてて嬉しいし!」
ニコリと笑って僕に言った。
きっと、僕が雲雀を好きじゃなかったら
今ここで恋に落ちてしまっていただろう。
でも今の僕はどう否定しても雲雀の事が好きで、 きっといつかはこの想いもバレてしまうのだろう
『…僕も片思いしてるんだよね。…マリさんと同じ』
「はは、なにそれ!……おかし、」
マリさんはふと、笑うと僕を見た。
「私は、___……いや、やっぱなんでもないや」
…キーンコーンカーンコーン
マリさんがベンチから立った瞬間
昼休みが終わるチャイムが鳴った
「行こう、奏斗くん」
そう言って笑う彼女の顔は
逆光でよく見えなかった
コメント
14件
見るのほんとに遅れたやばい…自分を殴ります…ほんとにありがとうございます!!毎回思うんですけど、作り込みがすごくて…マリさんの気持ちになると結構悲しぃ…
更新ありがとうございます! 恋心を自覚して抑え込んでる奏斗と気づかずに溜め込んでる雲雀がこれからどうなるのか気になります👀✨いつも面白い作品ありがとうございます‼️応援してます🫶💕
投稿ありがとうございます✨️ 自分の恋心に気づけてない雲雀 と奏斗の恋愛も勿論気になるけど、奏斗と雲雀に大きな展開があったとき、マリさんは奏斗の事を諦めるのか、諦めきれずにずっと追いかけ続けるのか、 考えるのも楽しみの一つです! いつも楽しく見させてもらってます! 続き楽しみにしてます💞