___hbr side
…キーンコーンカーンコーン
終わりのチャイムが鳴って、お弁当を直して箸をしまう。よいしょ、と立つとアキラ達は既に屋上のドアの付近に立っていた。
アキラ「たらい。早く」
『おん、!戻るか〜』
セラフ「…雲雀。ゆっくり出来た?」
『…?うん、ゆっくり出来た、けど?』
セラフの発言の意図が分からず、頭を傾げる。セラフは「そっか」と言って歩いて行ってしまった。アキラは俺達を見て軽く笑って、行きましょうか。と声を掛けてきた。その声に応えるように足を進める
ふと、中庭のベンチを見る。もうそこには奏斗とマリさんの姿は無かった
その事実に、酷く安心したような、胸騒ぎがしたような気持ちに襲われた
アキラ「私達用事があるのでまた。」
セラフ「またね。雲雀」
『おん、またな!』
アキラとセラフに手を振る。いつものように笑顔を見せると、アキラは少し悲しそうな顔をした。気づかないふりをして、手を振る。すっかり見えなくなった2人に「ごめん」と呟いて、廊下を後にする。
きっとアキラもセラおも俺の異変には気づいているのだろう。今日だって、上手く笑えてた自信が無かった。でもその原因が俺にも分からないから、どうすればいいかもさっぱりだ。
『…どうすればいいんだろ』
「なにが?」
後ろから誰かの声が聞こえて、急いで振り返る。そこには、きちんと制服を着こなして、俺を真っ直ぐ見てふわりと微笑んだ自分の想い人が立っていた。
『は、早川先輩、!』
胸がドキリと高鳴る。今、俺髪型とか変じゃないかな、少し髪を整えて笑みを浮かべる。
「…それで俺の可愛い後輩は何に悩んでるのかな?」
早川先輩は俺を見て、そう言った。少し喉が引き攣る。先輩相手…いや、好きな人にこんなことを言ってもいいのだろうか
“友達に変な感情を抱くと事がありますか”なんて、曖昧な質問すぎて返答に困ってしまうだろう。
数秒、先輩に何も言えず立ち尽くしていると、痺れを切らしたのだろうか先輩から口を開いた。
「言いたいなら言わなくてもいいけど、俺は雲雀の悩み事知りたいな」
『…、…せ、んぱ…ぃ』
胸が小さくトクリと鳴る。そんな先輩の優しい所に惹かれたのだ。今だって、頬に熱が集まっている事に気づいて下を向く。
「雲雀、言ってみて。」
ダメだ、早川先輩の優しい声色に甘えてしまいそうになる。ふわりと頭に何かが置かれた。それが早川先輩の手だと気づいて、また忙しなく心臓が音を立てた。甘い空気に耐えきれなくなり、口を開く。ずっとこのままだと俺の心臓が壊れてしまう感じがして、気が気じゃなかった。
『…ぇ、……と、…お、おれ…』
「うん」
『こ、このごろ…友人に、変な感情を…抱いちゃう事が多くて、』
「変な感情…?」
早川先輩の声が聞こえて、ハッと我に帰る。なに変なこと言ってるんだ俺、早川先輩に変に思われたらどうするんだ。
『や、やっぱなんもないっす…!大丈夫です、!』
「なんもなくない顔じゃないけどなぁ?…でも、そうだね。普通のことなんじゃない?」
『へ、』
予想外の返答に思わず声が溢れる
「…まあ俺も親友とかに嫉妬するもん。”俺のなのにー”とかね。だから大丈夫。心配する事じゃないよ」
『普通、』
早川先輩の言葉に酷く安心する。そうか、誰にでもあることなのか。胸を撫で下ろして先輩に感謝を伝える。
『先輩ありがとうございます!じゃ、俺教室戻ります!話聞いてくれて嬉しかったです!』
「うん俺も話せて良かった」
早川先輩に手を振って、廊下を駆け出す。
___普通、普通なんだこの想いは
『…良かった、』
ただそう思うだけだった
___knt side
「奏斗くん、何ヶ月先になっても良いからさ、また一緒にご飯食べようよ」
そう横を歩いているマリさんが言った。
少し驚いて彼女を見ると、マリさんはふわりと笑った
「…っふ、奏斗くん変な顔。嫌なら大丈夫だよ」
『いやいや嫌じゃない!全然』
『反対に僕でいいのかなって思っただけ』
「もちろん奏斗くんがいいから誘ってるんだけど。…でもそっか、奏斗くん好きな人いるし誤解されちゃったら嫌か」
静かにドクンと心臓が鳴った。
誤解、___誤解ねえ、雲雀は嫉妬とかしてくれたりするのかな。”俺の奏斗をー”とか、雲雀が するわけないか、
『誤解かあ…そういうのしないよ。きっと』
反対にマリさんとの仲を応援してくれるのだろう。”めっちゃお似合い!”とか”付き合ってないん?”とか、きっとそんな感じ。僕は雲雀の視界にすら映れない
『…アイツは、僕のこと好きじゃないからさ』
「そっか……。……でも奏斗くんならきっと大丈夫だよ。…もしその人と結ばれなくても私はずっと奏斗くんのこと応援してるから!」
そう言ってマリさんは僕を見てはにかんだ。
『ありがとう、マリさん』
そんな彼女の存在がどこか雲雀に似ていて、思わず目を細めた。まるで太陽みたいだ、なんて柄にもないことを思う。でもそれくらい、目の前の彼女は、僕の想い人と同じくらい輝いていた
___いっそ、マリさんを好きになれたら良かったのに
昼休みが終わり、また授業が始まった。
一応優等生の立場にいるので授業は受ける。が、右から左へ聞き流しているだけだった。黒板見てれば何となくわかるし、そんなに深く聞く必要もない
“___ピーー、はーい次三班と四班のチーム!
グラウンドでは他のクラスが体育をやっているのだろうか、生徒の声と楽しそうな笑い声が教室まで聞こえてきた。
窓の外に視線を向けると、雲雀も同じように外を見ていた。その顔はどこか哀愁漂っていて、まるで愛しいものを見ているような感じがした。
見なくても分かる。きっと、その視線の先にいるのは___
“ふー!蒼、ナイス!かっけえ!”
“開始数分で点入れるとかやばすぎね”
生徒の声が耳に入ってくる。雲雀も微かに口元が緩んで、窓の外に釘付けになっていた。
「渡会〜。ちゃんと授業聞け」
「ぇあッ!?は、はい!」
『…』
見なきゃ良かった
コメント
19件
時差コメ失礼致します! 先程ランキングに入っていてさらっと見るつもりだったんですけど、 気づいたらめちゃくちゃじっくり読んでましたw ストーリー性がしっかりしていて、展開にワクワクさせられます! 特にkntがαになりかけてるところとかほんと面白かったです…👉👈 こんな神作を作ってくれてありがとうございます…😇 長文失礼致しました!
くっ…お幸せになりやがれください…!!早川先輩の久しぶりの登場の神回でした…
最近全然見れてなくて泣きそう🥹やっぱり雲雀は早川先輩の方が気になってるのかな...。逆に早川先輩は雲雀のことが好きだから邪魔してるのか、ただ面白がってるだけなのか...とか気になります👀✨いつか早川先輩sideとかも見てみたいです〜‼️これからも頑張ってください!大好きです〜💕💍