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物心ついた頃から、あの人は暴力を振るっていた。言葉でも、物理でも、区別なく。
怒りの矢印は常に私とママに向いていた。
まだ小さかった私は、あの人より先にご飯を食べていただけで、
茶碗が飛び、ママが殴られ、私も殴られそうになっていた。
四歳の頃の記憶は、割れたガラスより鮮明だ。
理由も分からないのに突然怒り出し、窓を割り、
ママの髪を乱暴に引きずった。
その日、ママは長い髪を切った。
それから二度とロングにはしなくなった。
私は常に地雷原を歩くように生きていた。
学校行事にあの人を呼んだことは一度もない。
呼びたくなかったし、友達に合わせたくもなかった。
私は妹がいる。
あの人は妹には手をあげなかった。
むしろ可愛がっていた。
それがつらかった。
“私だけ嫌いなんだ”って思った。
でも同時に、それで良かったとも思えた。
小学生の頃、私があの人を怒らせてしまい、
妹が大切に作っていたものが壊された。
――私のせいで。
今思えば私のせいじゃなかった。
だけど当時の私は、自分を責めることしかできなかった。
小さな私は、“お姉ちゃん失格だ”と泣いていた。