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第40話 〚予知が静かになった日〛
七月。
空の色が、
少しだけ夏に近づいた。
「おはよう」
校門の前で、
久しぶりに並んだ二人。
海翔の顔色は、
もう大丈夫そうだった。
「体調、もう平気?」
「うん。心配かけた」
その言葉に、
澪は小さく首を振る。
「……無事でよかった」
それだけなのに、
二人の間に流れる空気が
どこか穏やかだった。
放課後。
「屋上、行かない?」
澪の提案に、
海翔は少し驚いてから頷く。
屋上の扉を開けると――
「あ、澪!」
えま、しおり、みさと。
三人はシートを広げて、
お菓子を並べていた。
「ここ、風気持ちいいんだよ」
「一緒に食べよ!」
さらにその奥。
フェンスにもたれて、
相馬玲央がいた。
「……全員集合だな」
そう言って、
小さく笑う。
結果――
六人で屋上おやつ会。
笑い声が、
静かな屋上に溶けていく。
その途中。
澪の視界が、
ふっと揺れた。
――妄想(予知)。
屋上の扉が開く。
先生の姿。
(……見られる)
でも、不思議だった。
頭が、
全く痛くない。
映像は、
そこで途切れた。
「……みんな」
澪は、
少しだけ声を低くした。
「先生、来るかも」
「え!?」
「まじで!?」
一瞬で、
お菓子が隠される。
袋はカバンへ。
シートもたたむ。
数秒後。
――ガチャ。
屋上の扉が開く。
「……誰かいるか?」
先生の声。
六人は、
何食わぬ顔で振り向いた。
「風、気持ちいいですね」
玲央が自然に言う。
先生は一瞬だけ周囲を見回して、
何も見つけられずに頷いた。
「そうか。じゃあ、あまり長居するなよ」
扉が閉まる。
しばらくして――
「……やった」
「セーフ!」
小さな歓声。
澪は、
胸に手を当てた。
(……痛くない)
(予知、なのに……)
海翔が、
澪を見て言う。
「すごいな」
「……うん」
でも、
それ以上言葉は出なかった。
予知は、
確かに現実になった。
けれど――
澪の心は、
前よりずっと落ち着いていた。
(……私)
(もう、一人じゃないから)
夏の風が、
屋上を通り抜ける。
その中で、
澪は静かに気づいていた。
妄想(予知)は、
“怖いもの”じゃなくなり始めている、と。
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