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「勿論です。必ず、約束します」
「俺も、約束します!」
「……分かった。とにかく、鬼龍はまだ歩ける身体じゃねぇから車椅子だ。準備するからどっちか一人付いて来い」
結局三人の熱意に根負けする形で一時的に出掛ける事を許可した中城。
理仁と車椅子をワゴン車に積んだ翔太郎たちはこの場所から三十分程の場所にある産婦人科まで向かって行く。
そして、
「真彩!」
朔太郎に押されて車椅子で真彩の入院する病室までやって来た理仁は、ドアを開けるなり病院という事を忘れているのか大きな声で真彩の名前を口にした。
「理仁、さん……」
その声とドアが開いた音に少し驚いた表情を浮かべる真彩だけど、理仁が会いに来てくれた事が嬉しかったのか瞳に涙を溜めながら理仁の名前を呼んだ。
「大丈夫なんですか、こんな所に来て……」
「問題無い。それよりも、お前こそ平気なのか!?」
「はい、処置も早かったおかげで危険な状態は脱したようで、後数日で退院して、かかりつけの病院で再度診察してもらうようにと言われました」
「……そうか」
「理仁さんこそ、本当に大丈夫なんですか? 助かったと聞いた時は本当に安心しましたけど、心臓が止まったと聞いた時は目の前が真っ暗になっしまって……私……私っ」
気丈に振る舞っていた真彩だけど、本当はずっと不安で堪らなかった。
理仁が助かった事は聞いていたものの、直接自分の目で確かめるまで気が気でなかった真彩は今ここに理仁が来てくれた事が嬉しくて、感極まって涙を零してしまう。
「真彩、泣くな。もう大丈夫だ。心配掛けて済まなかった」
「うっ、ひっく……理仁さん、私、私……っ、不安で、怖くて……っ、助かって、本当に良かった……っ」
二人が抱き合う中、邪魔してはいけないと朔太郎は音を立てずにその場を離れ、病室を後にした。
それから数日後、理仁も真彩も医者からの許可が出た事で自宅へ帰れる事になった。
真彩はかかりつけ医に診てもらい、今度こそ絶対安静を条件に自宅で過ごす事を許可され、理仁は朔太郎や翔太郎が目付け役となって無理しない程度に日常生活を送る事を許されていた。
「ママ、だいじょーぶ?」
「うん、平気だよ。悠真にも心配掛けてごめんね」
「ううん、へーき。だけど、もうゆうまをおいて行かないでね」
「うん、ごめんね」
真彩は絶対安静となり、ほぼ寝たきりの毎日を送る事になってしまったので、悠真は学校から帰ってくると、常に真彩の傍に付いていた。
それからひと月後、理仁が撃たれた事によって西区域の上位組織も流石に黙っていられないと立ち上がり、東西の上位組織が協力関係となった事で、穂積会は一気に追い込まれていった。
そして、話し合いの場が設けられ、穂積会は解散、属していた組員たちは各組織に身柄を預ける形でそれぞれ別れていった。
これでこの一件は全て片付き、理仁も忙しく動き回らずに済む事に。
臨月を迎えた真彩も安静を守り続けたおかげか、医者からは無理の無い程度に動いていいと言われ、鬼龍家にはいつもの平穏な日常風景が戻っていた。