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【深夜・鬼殺隊本部 緊急作戦会議】
黒死牟との激戦は一時中断された。
“柱の負傷”
“猗窩座の左腕切断”
“凩 侃の鬼化進行”
“黒死牟の撤退”
……そのすべてが、静かに隊の士気を削っていた。
「……次に来るのは、“夜明け前”だ」
義勇の低い声が、空気に沈む。
「黒死牟が再出現すれば、そのまま無惨戦へ繋がる。準備する時間はない」
「侃の状態は?」
煉獄が問う。
胡蝶しのぶは小さく首を横に振った。
「鬼化進行率、49.2%……あと一歩で、自我を越えます。
彼自身の意志が持つ限りは保つけど――猗窩座の存在が支えです。彼を離せば、一気に進みます」
「……わかった」
誰も、何も言わなかった。
ただ、“それでも共に戦う”という空気だけが、そこにあった。
⸻
【侃の部屋・静かな夜】
窓の外には、月。
割れたような、歪な三日月。
侃はぼんやりとその光を眺めていた。
身体は冷たいのに、心臓の奥だけが熱い。
“鬼になってしまうかもしれない”
“戦えないかもしれない”
“守れないかもしれない”
不安は、とうに超えていた。
(でも――俺は、ここにいる)
「……動けそうか?」
猗窩座の声に、侃は顔を向けた。
「動けるよ。少しずつだけど、“身体”はまだついてくる」
「……なら、最後に一つだけ言わせろ」
「ん?」
猗窩座は、侃の肩に手を置いた。
左腕を失っても、残った右手は強かった。
「この戦いで、俺が死ぬかもしれない。
お前も、たぶん無事じゃ済まねぇ」
「……うん」
「でもな、“お前が生きてる限り”、俺の願いは成る。
だから、絶対――生き残れ」
侃は、静かに笑った。
「……それ、俺が言う側じゃない?」
「いいんだよ、たまには」
⸻
【戦場へ】
柱たちが、次々に前線へ向かう。
空はまだ暗い。
だが、“最後の夜明け”はすぐそこだった。
凩 侃も、刀を握った。
その刀は、“鬼化”の影響で刀身に黒い紋が浮かんでいる。
それでも――折れていない。
彼の“心”と同じだった。
「俺の剣は、まだ“人を守る”ために在る」
⸻
【戦場・再び黒死牟】
静寂の中、黒死牟が再来する。
その背には、鬼舞辻無惨の気配が重く乗っていた。
「最終命令。“凩 侃を完全に鬼に堕とせ”」
その言葉が告げられた瞬間、地面が割れた。
柱たちが布陣を張り、迎撃態勢を整える。
煉獄、義勇、実弥、しのぶ、天元、蜜璃、悲鳴嶼――
“全柱”が、一斉に動く。
黒死牟と真正面で向き合うのは――凩 侃。
彼の刀が、月光を浴びてきらめいた。
⸻
【侃、覚悟の技】
「……俺は、“人間”でありたい」
その一言と共に、型が放たれる。
“凛月の型・終終式(しゅうしゅうしき)――明月哭刃(めいげつこくじん)”
侃の最後の技。
鬼化の力を“抑制”に転じ、鬼の血を縛る代償に、自分の命を削る剣技。
それが黒死牟の胸元を深く貫いた。
「なに……!? この技は――“鬼”の力を、拒絶する……?」
「俺は、鬼にはならない。たとえ、命を失っても」
⸻
【猗窩座の覚悟】
黒死牟が、咆哮をあげて反撃に転じた瞬間。
猗窩座が前に立つ。
「侃ッ!! お前は下がれ!!」
「なっ――待て、猗窩座!!」
猗窩座の身体から、“鬼の核”が露出する。
――“自らの命を焼き尽くす術”。鬼の肉体を爆発的に変化させ、一時的に“太陽”の熱を持つ破壊技。
「俺の“鬼”としての最期の技だ――これで黒死牟ごと、俺の過去も終わらせる!!」
「やめろ!!そんなの使ったらお前は……!!」
猗窩座は――微笑んだ。
「“誰かのために死ぬ”ってのも、案外悪くねぇな」
⸻
【第九章・終】
爆音。
光。
熱。
一瞬で、世界が白く染まった。
黒死牟の咆哮が消える。
その場に、猗窩座の姿はなかった。
「……う、そ……だろ……?」
侃は、動けなかった。
動けば、壊れてしまう気がした。
彼の中で、鬼の血が静かに止まり始めていた。
“自我が勝った”
だが、その代償はあまりにも――