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彰久と鷹矢の静かな生活に、新たな風が吹き込んだ。それは、山道を歩いている最中、偶然に出会ったひとりの少年だった。見た目はまだ十歳にも満たない、あどけない顔立ちの少年。薄い青い髪に、透き通るような肌、そして赤い目をしている。その不思議な容姿に、最初はただの人間の少年だと思った彰久も、鷹矢も、すぐに彼がただの人間ではないことに気づく。
少年は突然、二人の前に現れた。彰久が軽く声をかけると、少年はニコリと笑って答えた。
「こんにちは。僕、名前は青(あお)っていうんだ。」彼は小さな声で言った。普通の少年のようだが、その目にはどこか大人びた、妖しげな光が宿っている。
「…青?お前は、どこから来た?」鷹矢は警戒心を隠さずに尋ねた。少年の笑みは変わらず、しかしその目にはどこか計り知れないものが含まれている。
「僕は、山の精霊だよ。」青はあっけらかんと答えると、ふわりと手を広げて見せた。すると、彼の周りに一瞬、青白い霧のようなものが漂い、まるで彼が妖怪であることを示すかのように、周囲の空気がひんやりと冷たくなった。
鷹矢はその一瞬に感じた違和感を見逃さなかった。青が妖怪であることをすぐに確信した。そして、心の中で何かが引っかかる。
「山の精霊、か…。」彰久はその言葉に眉をひそめたが、青の無邪気な笑顔に和んでいるようだった。「でも、どうしてここに?」
「あなたたちがいる場所に、僕も興味があったんだ。」青は彰久をじっと見つめ、続けた。「特に、あなたには興味があるんだ。」
その言葉に、鷹矢の胸が微かに痛んだ。青の視線があまりにも彰久に向けられ、まるで彼に対する興味を示しているように感じたからだ。
「……。」鷹矢は一言も発さず、その場で立ち尽くしていた。しかし、心の中では青への警戒心と、彰久と青の関係に対する不安が募っていく。
その後、青はしばしば二人の周りに現れるようになった。毎回、彼は無邪気に彰久に話しかけ、時には肩を組んで笑顔を見せる。青の笑顔は本当に可愛らしく、まるで彰久にとっては兄弟のような存在のように感じられた。だが、鷹矢にはそのすべてが不快に思えた。
ある夜、彰久が焚き火を囲んでいると、青がふっと現れた。
「彰久、君と話したいことがあるんだ。」青は彰久に近づき、そっと座り込んだ。彼の目は真剣そのもので、彰久を見つめていた。鷹矢はその瞬間、胸の中で何かがうずき、言葉にできない怒りが湧き上がった。
「青、またお前か。」鷹矢は冷たく言い放つが、青はにっこりと微笑んだ。
「どうしてそんなに怖い顔をしているの?」青はからかうように言った。彰久がその言葉に笑ったため、鷹矢はさらに不快感を覚えた。
「お前は、彰久と何を話すんだ?」鷹矢は我慢できずに尋ねた。その言葉に、青はちょっと驚いた表情を見せたが、すぐに軽く肩をすくめた。
「ただ、君のことも知りたいんだ。」青は義高に向き直ると、また優しく話し始めた。だが、その話は、鷹矢には不安を煽るものばかりだった。
その後、鷹矢の心の中で、青に対する嫉妬の感情が膨らんでいく。彰久は青に優しく接していたが、鷹矢はそれが何とも気に食わなかった。青が彼に向ける特別な関心が、彰久に対する独占欲を刺激しているように感じた。
ある晩、青が彰久に無邪気に肩を寄せて話しているのを見て、鷹矢は耐えきれず、部屋を飛び出した。月明かりの下、冷たい風が頬を撫でる中、鷹矢は自分の怒りと嫉妬心をどうにか押し殺そうとしたが、次第にその感情が大きくなっていった。
その時、青が静かに鷹矢の背後に現れた。
「嫉妬しているんだろう?」青の声は静かで、少しだけ冷たい。鷹矢は振り向き、青を睨みつけた。
「お前が彰久に近づくことが気に入らない。」鷹矢は冷徹に言ったが、その言葉の中に自分でも気づかないほどの切なさがにじんでいた。
青は少しだけ微笑んだ。「君の気持ちは分かるよ。でも、君が彰久を独占する権利はないんだ。」
その言葉に、鷹矢は言葉を失った。そして、青が再び彰久に近づくことで、心の中の嫉妬と不安がさらに強くなるのを感じた。
翌日、青は突然姿を消した。どこかへ消えたのだが、鷹矢にはその理由がわからなかった。彰久はその後も青のことを心配していたが、鷹矢はその不安が自分の胸の中で次第に広がっていくのを感じていた。
「青は、ただの少年じゃなかった。」鷹矢はふと思い、冷たい月明かりの下で口にした。
「彰久、俺の心は…お前だけだ。」その言葉を胸の中で何度も繰り返し、鷹矢はやっと、少しだけ安堵の気持ちを感じていた。