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誰にも、渡したくないって思った。
この人を、私以外に触らせたくない。
彼の、こんな表情を、声を、仕草を、誰にも見せたくないって思った。
先生が悩ましげに眉を細めた。
頬を伝った先生の汗が私の肌に落ちる。
『先生…っ』
「ん?」
柔らかい笑み。
下から見上げる彼の汗で濡れた髪が色っぽすぎて瞬きなんてしたくない。
『…しょ…』
「…え」
『…翔太…』
何百人、何千人からも呼ばれてる「先生」から「翔太くん」に変えたのに、まだその先をいきたいと思ってしまったのは
きっと、私の独占欲。
「うっそ…今かよ、…バカっ」
先生は、「反則だろ」って悔しそうに笑う。
・
朝起きたら、隣に好きな人がいる朝ってどんだけ幸せなんだろう…ってずっと思ってた。
それは、思い描いていた景色よりももっと幸せな光景で
無防備な寝顔だったり、乱れてる髪も、全部好きって思っちゃった。
翔太の長い睫毛に触れようとしたら、その目がゆっくりと開く。
『あ…起きた…』
「…おはよ…」
また、新しい声。
寝起きはちょっと掠れてる。
「早起きだね…」
『ふふっ、もう9時です』
「日曜の1桁代は早起きよ…」
ムニャムニャって感じ。
クスクス笑ってると、ガバって抱き締められた
「何笑ってんの」
『何か、子供みたいだなぁーって』
「生意気言ってたら襲うぞー」
そう言った彼が、布団の中から手を出す。
想わず、『いや!スケベ』って叫んじゃった。
『…何か』
「ん?」
『思ってたのと違う』
「何が」
『翔太くんの雰囲気。』
「あ、『翔太くん』に戻ってる」
『あ…』
彼の手が、私の頭をワシャワシャする。
『翔太…』
「ふふっ、うん。」
『翔太、何か可愛い気がする』
「それは、〇〇が大人になったから」
「思ってたのと違って幻滅した?」
ふふって笑いながら彼は話す。
『ううん。誰にも見せたくないって思った』
私の答えに彼はオデコをぶつけて微笑む。
「いろいろ、計画立ててたのに」
『え?』
「おまえが予想外のことするから」
『え?何ですか 笑』
「ホント、お前は想像の斜め上をいくよな」
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コメント
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おい、最高かよ! って阿部ちゃんがでてきたよ、私の頭の中。