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#前世
shima7a
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第86話 「決勝前夜」
2023年8月。
夏の甲子園。
決勝前日。
柳城高校の宿舎。
いつもより静かな夜だった。
明日は決勝。
相手は宮城育英。
夏に敗れた。
春にも敗れた。
二度も夢を阻まれた相手。
だが。
不思議と緊張はなかった。
夕食後。
福間監督が選手たちを集めた。
最後のミーティングだった。
監督は全員の顔を見る。
三年生。
二年生。
一年生。
そして静かに口を開く。
「明日で終わりです」
部屋が静かになる。
「勝っても」
「負けても」
「このチームで野球をするのは明日が最後です」
誰も下を向かない。
全員が監督を見ている。
「だから」
監督が少し笑った。
珍しかった。
「楽しんでください」
塁が少し驚く。
啓介。
福間監督。
二人とも同じことを言う。
野球を楽しめ。
結局そこへ戻ってくる。
ミーティング終了。
選手たちが部屋へ戻る。
塁は一人で廊下を歩いていた。
窓の外。
甲子園の灯りが見える。
そこへ史陽がやって来る。
「寝られんやろ」
塁が笑う。
「お前もな」
二人で窓の外を見る。
しばらく無言。
そして史陽が言う。
「兄ちゃんに勝った報告せんとな」
塁が頷く。
「ああ」
「そのためにも勝たんとな」
二人とも笑った。
翌朝。
決勝当日。
甲子園。
満員。
アルプススタンドには柳城の応援団。
舞もいた。
目には少し涙が浮かんでいる。
三年間。
ずっと見守ってきた。
今日がその集大成だった。
グラウンド。
塁がマウンドへ向かう。
史陽がショートへ向かう。
整列。
そして。
向こう側には宮城育英。
夏。
春。
二度敗れた相手。
だが。
もう恐れる存在ではない。
球審が声を上げる。
「決勝戦を開始します!」
大歓声。
甲子園が揺れる。
柳城高校。
宮城育英高校。
三年越しの物語。
その決着の時が来た。
第86話 終
コメント
1件
いやあ、第85話、じんわりきましたね…。「不思議と緊張はなかった」って一文だけで、ここまで来た選手たちの覚悟が伝わってくる。監督の「楽しんでください」も、塁と史陽が辿り着いた同じ答えも、静かな夜の描写と合わさって力強かった。満員の甲子園、舞の涙…すべてが集大成の重みを感じさせます。この三年越しの物語、どう決着するのか楽しみです!