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柘榴とAI

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村長の家を建て始めてから、しばらくの時が流れた。 俺の頼りない指示にも、あいつらは嫌な顔一つせずについてきてくれた。
この酷暑の中、誰もが汗だくになり、土だらけの重い木材を肩に担いで、泥にまみれながら必死に働いてくれている。
「ゲン、こっちの柱、もう立てちまっていいか!?」
「おう、しっかり根元を固めてからにしろよ!」
そんなやり取りを幾度も繰り返しながら、みんなで一歩ずつ、泥臭く未来へ進んでいる。その確かな手応えを感じるたびに、心にこびり付いていたあの暗い澱が、サラサラと少しずつ流れていくような気がした。
もちろん、死んだ連中への申し訳なささが消えるわけじゃねえ。ただ、こうして新しい場所でみんなの汗と笑顔を見ていると、頑なだった俺の心も、不思議と少しだけ軽くなるんだ。強がりで「大丈夫だ」と思っていても、リンに言われた言葉が枷のように、ほんの僅か、俺の奥底にまだ冷たく残っているのを感じてはいたが。
俺は作業の手を止め、視線を上方に巡らせた。
集落を見下ろす高台の上に、俺たちの第二の故郷のシンボルとなる、新しい村長の家が建ち始めていた。まだ骨組みの段階だが、太い原木を贅沢に使ったその姿は、遠目から見ても威風堂々としていて実に立派な構えだ。
追手が来るのも時間の問題だろう。とはいえ、ここは森林の中央地。その上、周囲の巨木が高台を遮るように囲んでいるため、そう簡単には見つけられないはずだ。
――ふいに、俺の思考は、村が襲撃されたあの日に引き戻される。
奴――ガニメデは未来から来た人間。そして俺は、「少女」と初めて繋がった人間だ。
あの瞬間、これまでの世界から未来に至るあらゆる記憶が、奔流となって脳内に流れ込んできた。もっとも、その一片一片が正確に再生されたわけではない。凝縮された膨大な記憶が一瞬にして脳を駆け抜けたのだ。となれば、そこから特定の精緻な記憶を、逆探知のように手繰り寄せるのは至難の業と言わざるを得ない。
ガニメデのような一個人を特定し、奴の急所を探り当てるのは難しいか。ガニメデ以外の取り巻き、リザードマンも複数いる。そればかりか、奴らが使うあの結晶も気に掛かる。
それに間違いなく「王国」がある。ということは、そこには王様やその家来、ひいては多くの民草も存在することになるはずだ。まったく、分からないことだらけだな。またあの少女と再び繋がって深層意識に潜ることは今の俺にはできないし、記憶を遡る技術も知識も、俺にはないからな。
唯一の救いは、自分と波動が似ていた『武田信玄』という存在に惹かれたことだった。いや、あの時感じたのは特定の戦国大名だけじゃない。歴史に生きた様々な人間たちの息吹を感じられたのだ。ある意味、何にでもなれる力――そう、思っている。
現にあの時の俺は、記憶のなかで見た武田信玄の存在感に強く引き付けられ、それを再現するために己の身体を形態変化させた。まさか、武具ごと完全に再現できるとは思いもしなかったが……これこそが、俺に宿った新しい力なのだろう。もしかしたら、俺が違う時代の誰かに成って戦うことは、武田信玄以外にも出来るかもしれない。
ただ、それには極めて難しい条件が伴うだろう。波動のような深層意識で繋がった心地よい感覚、細胞の中から巡る瞬間、すべてが因果のように奇跡を起こさなければならない。一度、武田信玄として身体を成したことにより再現することは簡単になったが、エネルギーの消費量も凄まじい。
そもそも、その力を授かるための『儀式』。
あれを成立させるには、少女が望むことをしなければならない。それはおそらく――親しき者との決別。
彼女が俺に何をさせたいのか、その真意はまだ分からない。「王国を止めろ」と言われても何のことだか。何はともあれ、あの決別こそがトリガーとなり、接続が可能になったのだ。ただ、また深層意識に潜り、聞きたいことを少女と詳しく話せているわけではない。まあ、深層意識に潜ること自体が、そもそも難しいからな、やり方さえ教わった訳でもない。深く考えれば考えるほど、堂々巡りのように思考がぐるぐると渦巻いていく。
視線を落とすと、家の麓、少し陽が陰り始めた空き地の方に、二つの小さな人影が踊るように激しく動き回っているのが見えた。手にした木の棒をカンカンと小気味よくぶつかり合わせながら、子供たちがチャンバラごっこに興じている。
風に乗って、あどけないが真剣な声が、俺の耳に届いてきた。
「ラルク、そんなんじゃ、バガールの一匹も仕留めることなんて出来ないよ!」
声を張り上げたのは、細身で素早いヤンだ。ひらりと身を翻し、突き出された棒を器用に避けてみせる。
「ふん、ヤンの方だって避けてばっかりじゃないか! 奇策ばっかり仕掛けやがって、おれの力に負けて逃げ回ってるだけだろ!」
対するラルクは、ヤンより一回り体格がいい。悔しそうに声を荒らげながら、力任せに棒を振り下ろした。
「馬鹿だね、ラルク。力が弱いなら頭を使うんだよ」
カチン、と乾いた音を立てて、二人の木の棒が正面から噛み合った。ギリギリと力比べの鍔迫り合いが始まる。
体格で勝るラルクが力で押し潰そうとしたその瞬間、ヤンは不敵に笑い、自分の言葉をそのまま行動に移した。
ヤンがすっと棒の力を抜くと、勢い余ったラルクの身体がガクリと前に崩れる。その隙を逃さず、ヤンは思い切り自分の額をラルクの顔面に叩きつけた。
ゴツン、と肉と骨がぶつかる鈍い音が響く。
「グガッ!……ず、ずりぃ。そんなの、策じゃない!」
鼻とおでこを押さえて涙目でうずくまるラルクに、ヤンは鼻高々で胸を張った。
「へーん、全体の流れを掴まないとね。狩人なら当たり前さ!」
「クソ、また負けたのか……」
「ラルクも少しは頭使いなよ」
あいつらは、ヤンとロドの夫婦の息子と、ジャンヌとシエルの夫婦の息子か。
いつもこうやって切磋琢磨している。親たちの顔が脳裏に浮かび、思わず口元が緩んだ。競い合いながら、お互いを高め合っているその姿が、どこか眩しくて、愛おしい。
俺は一歩一歩、足音を忍ばせながら、背後からあいつらの影に近づいていった。
「おうおう、チビ達、やってんじゃないの」
低めの声でニヤニヤしながら声をかけると、二人は弾かれたように飛び退いて振り返った。
「あ、あなたは!」
驚きに目を見開くヤンの横で、ラルクがこれ幸いとばかりに生意気な口を叩いてくる。
「ゲンだ、馬鹿ゲンだ!」
「だーれが馬鹿だ、この野郎」
お決まりの軽口に青筋を立てつつ、俺は大人げなくも素早く腕を伸ばした。ターゲットは当然、さっき頭突きを喰らって、まだおでこを押さえてしゃがみ込んでいるラルクだ。俺の大きな手が、その無防備な額を捉える。
――ピッ、と人差し指を力強く弾いた。
「いってえ! さっきヤンが頭突きした所にデコピンすんなーーー!」
ラルクはおでこを両手で強く押さえ、派手にのたうち回りながら絶叫した。その無様な姿を見て、さっきまで勝ち誇っていたはずのヤンが、ここぞとばかりに「ざまあみろ!」と腹を抱えて大爆笑し始める。
頭突きのダメージにデコピンを重ねられて悶絶するラルクと、それを見て笑い転げるヤン。
傾きかけた陽光が、未完成の村長の家を透かして、泥だらけの三人の影を地面に長く伸ばしていた。
にぎやかなガキどもの声を背中で聞きながら、俺は完成に近づく高台の家を見上げ、深く、静かに拳を握りしめた。
そこへ、背後からさらにもう一つの影がゆっくりと歩み寄ってくる。
コツコツと杖をつく気配で分かった。ヤンガの爺さんだ。
その足取りは重く、だがどこか決意を秘めている。まるで、自らの生涯の有終の美を飾る場所を、見定めに来たかのように――、そう思った瞬間、爺さんはカッと目を見開き、杖を天高く掲げた。
「さぁ、機は熟した。ワシのマイハウスの完成ぞよおおおおおおおお!!」
「ああ? もう体力回復したのか爺さん! だけどここ麓だぞ、そんな遠くから…………」
「黙っとれえええええええええいいいい!!こわっぱがあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
(こわっ、家のことになると、この爺さん人変わりすぎだろ……)
刹那、掲げられたジョウロのような杖が一瞬、強烈な輝きを放った。先端の注ぎ口から、意志を持つかのように太い根や蔓が生い茂り、瞬く間に形を成していく。それらは周囲に積まれていた残りの木材を器用に巻き上げると、未完成だった残り三分の一の構造を、長距離からの遠隔操作で一気に組み上げ始めた。
それは実に精密なもので、まるで複雑なパズルを解くかのように、木の構造と特性を最大限に活かしながら、吸い込まれるように噛み合っていく。
爺さんは、まるで地面に水やりでもするかのように、杖をほれほれと軽快に左右に振る。その動きと完全に同調し、根や蔓は麓から高台へと縦横無尽に伸び、家を構築していった。
やがて、その緑の手が引くと――そこには、見事な家が完成していた。
それはただの家ではない。三階建ての、まるでどこかの貴族の「邸宅」と言って差し支えないほどの威風堂々たる大きさ。村の人間を収容するのにも、充分すぎるほどのサイズだった。
「ありがとうな、爺さん。これでみんなの家が出来たよ」
「ぬ、わ、ワシの家じゃよ!」
「まあそうだが、みんなの家だ。いつでも寄るからちゃんと入れてくれよな。村のみんなは家族だろ? そういうしきたりだ」
「わ、わしの、わしだけの……わしのための、わしによる……マイライフハウスプランがあああ! 苦花を植えて悠々自適に村の民にふんぞりかえる、ワシだけのマイハウスがああああああああ!!」
(ツッコミを入れる音が盛大になる。)
「そら駄目だろ、それはよまったくこの爺さん。まあ、とりあえず完成だな」
「すげ〜! ヤンの爺さん!」
「爺ちゃん、凄い!!」
チャンバラを止めて一部始終を見ていた子供たちが、目を輝かせて歓声をあげる。
「おお、そうじゃろう、そうじゃろう! ワシは凄いんじゃあ! もっと崇め奉るのじゃ、孫達よ!」
ヤンガの爺さんは、自分の孫とその友達にベタ褒めされて、これでもかと鼻高々にふんぞり返っている。まったく、調子のいい爺さんなこって。
何はともあれ、これで村の最終防衛ライン、砦となる要塞が出来上がったわけだ。
今度こそ、麓の家づくりに本腰を入れてやるか。やることが山積みすぎて、それこそバガールの手も借りたいところだが、そんな泣き言も言っていられない。
俺はもう一度、完成したばかりの高台の要塞を見上げ、小さく息を吐いてから、次の作業に向けて歩き出した。
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【キャラクタービジュアル】
〈Doctor.J〉
「私は知りたい。あの時代の叡智を……。」
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<村の発展度>
村:レベルII
村のシンボル完成!!爺さんの邸宅
質素な小屋
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ここまで、お読み頂き感謝感激の舞レベル200です。出来れば、出来ればで良いんです。私に星を下さい。そうすれば、あなたと私は星と共に宇宙へと昇ることができます。そうです、宇宙の旅へ一緒に行きましょう。私のモチベーションがぎりぎりのぎりなので、私のメンタルケアと思ってポチッと押して貰えたら嬉しいなあああああ。あと、いつも読んでるそこのあなた!いつも見てるでしょおおおお?ブックマークしたらいつも見る時楽だよ?ね、ブックマークしよ、そして星も付けちゃお?そしたら作者喜んじゃうよん。
嘘です。嘘じゃないですけど、読者様に少しでも楽しんで貰えたら私はとても嬉しいです。引き続き作品をお楽しみ下さい!
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