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錆びた傘

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錆びた傘

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2025年08月10日

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手を伸ばしたくても、手を伸ばしても

指先すら触れられなかった。



2xxx年。世界は異能力に支配されていた。



この世界を作ったのは、7人の神様だった

その神に選ばれ、神を宿す器となることで、絶大な力を手に入れることが出来るのだ。


私は 、わたしが嫌いだった。

頭も良くなくて、運動もできなくて、いつも誰かに迷惑をかけて 。臆病で、弱くて、おまけに泣き虫で 。

異能力が全てのこの世界で大した能力も使えず 、固有能力だって炎を出すという地味なものだった。

いつも、姉の顔に泥を塗るばかりだった 。

天は二物を与えず、なんてそんなことはなかった。姉は、常に完璧だった 。

頭も良くて、運動神経も良くて、いつも人を助けて、強くて、優しかった。

この世界の 7人の神 のうちの一人 、水の神に認められ器となった凄い姉 。私はそんな姉がだいすきだった 。




それは雨が降っていたある日のことだった。

姉が死んだのだ。私を庇って。

… 私の不注意だった 。


私はいつも虐められていた。弱いから、姉と比べられて。でも慰めてくれる、とっても優しい姉がいたから私は生きてきた 。

それが気に食わなかったらしい。

主犯は私を刃物で刺そうとした。

馬鹿な姉はそれを庇って致命傷を負った 。


私の能力は炎で、雨は天敵だった。

守ることも出来ず、完璧で天才だった彼女は私の前であっけなく息絶えてしまった。


雨が強くなっていった 。


私は何もすることが出来ない 。

頬に伝う水滴が雨なのかそれとも涙なのか 。

もう私には分からなかった。


帰ってきて、と

強く神に願うけれど、神なんて存在しないんだと私は分かっている 。


神も人も悪魔も天使も、結局は自分の為に動くのだから 。

この世界をしきる7人の神だって水の神だって 。

きっと器として姉を利用しただけ 。

替えなんていくらでもいると。その証拠に器が死んでもその姿を現さない 。


私は姉の死体を抱きしめた 。

強く、強く 。骨が折れるくらいに 。

姉だけだった 。私に触れてくれたのは 。劣等生の私を認めてくれたのは 。

姉がいない世界に、私の居場所は無い。

なら、それなら今度は何にも縛られずに自由に生きていきたい。



神様でも仏様でも悪魔でももうなんでもいいから私に、力を頂戴 。

全てを壊すくらいの、圧倒的な力を。居場所を自分で作れるほどの力を。


私は強く願った


『 …特別だからね 』


ふと声が聞こえたような気がして、次の瞬間唐突な眠気に襲われ私は気を失った 。

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