テラーノベル
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雨が降り始めた。
家を飛び出したときのままの服装で、俺、ロボロは夜の街を歩いていた。シャオロンの部屋を出るとき、背後から微かな嗚咽が聞こえたような気がした。
『……やっぱり引き返すべきやったかな。』
交差点の信号で立ち止まり、濡れた前髪から雫が落ちるのを見つめる。雑面は外していた。こんな顔を見せるわけにはいかない。
シャオロンの泣き声が耳について離れない。勢いで「別れよか」と言ったものの、本当は別れたくなんてなかった。ただ、いつもシャオロンの我儘につきあってばかりいる自分が情けなくて……
《なぁ、お兄さん。一人?》
肩を叩かれ振り向くと、知らない女性が傘を差し出していた。
《この雨の中、濡れたら風邪ひくで。うちの店まで来ぃひん?》
夜の繁華街の光が彼女のネイルを派手に輝かせている。
『いや、いいです。』
素っ気なく断ると、彼女は
《つれないなぁ》
と笑って去っていった。
ポケットを探り、財布が入っていないことに気づく。スマホもない。完全に衝動的に飛び出してきたのだ。
『どうしよう……』
シャオロンの泣き声がまた脳裏に蘇る。あれは本当に彼の声だったのか、それとも願望が生み出した幻聴なのか。
街灯に照らされた歩道に、雨粒が跳ね返る。行き先もなく、ただ歩き続けるしかない。
『シャオロン……』
名前を呼ぶだけで胸が締め付けられる。もし戻ったら許してくれるだろうか。いや、あの調子だと絶対に嫌われてる。
ふと横を見ると、小さな公園があった。遊具に雨粒が落ちる音が心地よく響く。
ベンチに腰掛けて、膝を抱える。シャオロンとの思い出が次々と浮かんでくる。初めて会った日のこと、告白してくれた夏祭り、喧嘩しても翌朝には必ず仲直りした日々。
スマホの着信履歴を見たら、きっとシャオロンからの不在着信で埋まっているはずだ。でも今の自分には確認する勇気がない。
『ごめんな、シャオロン。』
雨に打たれながら呟いた言葉は、誰にも届かない。
このままどこへ行けばいいんだろう。この別れは正しい選択だったのか。
翌朝になっても答えは見つからなかった。
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