テラーノベル
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週末のショッピングモールは人で溢れていた。シャオロンは新しいヘアピンを探していたけれど、どれも気にいるものが見つからない。
「ロボロ……どんなのが好きやろ……」
無意識に出た言葉に自分で驚いて口を押さえる。もう別れたのに、なんでまだロボロのこと考えてるんやろ。
携帯を確認すると、やはりロボロからの連絡はなかった。あの日以来、メッセージアプリも電話も全く反応なし。ブロックされたのかと思ったら、既読すらつかない。
「ハァ……」
溜息をつきながら通路を歩いていると、人混みの中に見慣れた姿を見つけた。
『あ……』
俺の方を見て立ち止まるロボロ。その瞬間、周りの人たちが全員消えたように感じた。
「ロ……ロボロ……!」
名前を呼んだ途端、喉が詰まった。どうしよう。話しかけるべき?無視するべき?
でも足は勝手に前に進んでいた。
『しゃ……シャオロン……』
ロボロの声も掠れている。久しぶりに聞いたその声に、体中の血が沸騰するような感覚になった。
「なんで……ここにおるん……?」
聞くつもりじゃないのに言葉が漏れた。
『それはこっちの台詞や……』
二人の間に微妙な距離ができる。目を合わせられない。
その時、小さな女の子が走ってきて、俺とロボロの間に割り込んできた。
《ママぁ!》
『……っ!』
驚いた拍子に、俺たちは同時に肩を寄せ合う形になった。
《ごめんさい!ほら、こっち来て!》
母親らしき女性が娘の手を引いて行く。去り際、
《カップルさんに申し訳ありません》
という謝罪と共に微笑みかけられた。
『ち、違う!俺たち別れて……』
ロボロが慌てて否定しようとする。その腕を反射的に掴んでいた。
「ええよ……」
俯いたまま答える。
『え?』
「今はそう見せといたらええんちゃう……?」
涙が滲んでいるのに気づかれないよう必死だった。
周囲の目が気になるのか、ロボロがゆっくりと歩き始める。
「とりあえず、あそこのカフェ寄ろうか」
と言って指さしたのは、少し離れた静かな喫茶店だった。
席に着くと沈黙が続いた。コーヒーの匂いだけが漂う中、先に口を開いたのはロボロだった。
『あのさ……』
「ごめん……」
遮るように俺が言うと、ロボロの手が止まった。
「ごめん、ロボロ……酷いこと言って……ホンマは大好きやのに……」
堰を切ったように言葉が溢れ出す。
「ロボロがいない生活、辛すぎるんや……毎晩寝られへんし、飯も美味しくないし……」
視界がぼやけてきて、テーブルに滴が落ちた。止めようとしても止まらない。目の前のロボロのピンクの瞳が真っ直ぐ俺を見つめている。
『シャオロン……』
ロボロの声が震えていた。
「戻ってきて欲しい……お願いやから……」
言葉尻が弱くなる。怖くてロボロの顔を見られない。
長い沈黙のあと、
『……俺も、別れたいわけやなかった』
という優しい声が聞こえた。
顔を上げると、ロボロが雑面を取っていた。初めて見る素顔に息を飲む。
『シャオロンの泣き声、聞こえた気がして……ずっと後悔してた。』
「うそ……ホンマに?」
信じられない思いで聞き返すと、ロボロは小さく頷いた。
『でも……もう一度チャンスくれる?』
「当たり前やん!!」
思わず大きな声が出てしまって、店内が少し静かになる。
ロボロが笑った。久しぶりに見る自然な笑顔だった。
『じゃあ、帰ろか。俺たちの家に。』
その手を握りしめた瞬間、もう二度と離さないと誓った。
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