テラーノベル
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「それにしても、だな」
教室内で、交野と小宮とともに昼食中。
昼食だが、最近はパンを買って教室で食べる事が多くなった。
これは、うちのカフェテリアの飯が不味いからだ。
パン2個の方がカフェの定食より安いしな。
さて。
「最近、柏がハーレムしていないか」
交野が妙な話題を振ってきた。
「奇遇ですな、拙者もそう感じるでおじゃる」
おいおいおい。
「放課後は石動や坂口とともに出ていくし、後をつけたら隣のA組女子2人と合流して女子4人を侍らせているし」
「あの大人な感じのお姉様の件もありますぜ、旦那」
「物理の小暮先生とも妙に仲がいいようだしな」
ちょっと待ってくれ。
「誤解だ。単なるクラブ活動だ」
そう、誤解だ誤解なんだ。
少なくとも僕が望んだ状況では無い。
「小暮先生はクラブの顧問で、合宿等の件で相談しただけだ。間違えないでくれ」
「本当か?」
交野がジト目で僕を追及する。
「この前は柏以外全部女子で、カラオケしていたのを目撃したしな。しかも全部きれいどころでやんの。こっちはフットサル部で、女子マネすらいない男ばかりカラオケだったのによ」
「こっちは漫研で、女子はいるけれどきれいどころはいないでやんす。皆腐っているでやんす」
「それは確かに……不幸だな」
思わず僕まで同情してしまう。
「同情は必要ない。拙者が欲しいのは愛でおじゃる。誰か1人でいいからそっちのきれいどころを恵んで欲しいであります」
「そんな間柄じゃ無いぞ。大体小暮先生がどんな先生かは、1回目の授業の腕相撲で知っているだろう。最近も顧問しているワンゲルがボロボロにされているし」
「でも小暮先生は可愛いでおじゃる。可愛ければ全ては許されるでおじゃる。それに石動や坂口、隣のA組女子や2年の先輩女子も食っているでおじゃる」
「食ってない!だいたい石動や坂口だって同じクラスだから、どんな性格か知っているだろう。そんな浮いた話には絶対ならないぞ」
「理屈はいいでおじゃる。顔が良くて愛があればそれで充分でおじゃる」
おいおいおい。
こいつら、特に小宮は相当飢えている様子だな。
そして間の悪い事に美少女にして常識無用で天然ボケが僕の横にやってきた。
「朗人君にお願いです。今度の金曜日の夕食は肉系がいいです。土日があるからスタミナたっぷりのをお願いします」
そんな事を言って通り過ぎたりする訳だ。
さすが天然、全く場を読まない。
当然その後は。
「おい待った、今の会話は何だ!」
という事になる訳だ。
「いや、クラブ活動だから。顧問もちゃんといるから」
「でも顧問は小暮ちゃんだろ」
「やっぱりハーレム活動か」
攻め寄る交野と小宮。
誤解を脱出する術はすぐには思い浮かばない。
僕は思わず周囲を見回す。
頼む誰か、助けてくれ!
◇◇◇
学園探検部恒例、金曜日合宿。
平たく言えば小暮先生の家でのお泊まり会は、本日も開催。
ひとりもも肉2枚という凶悪な量のチキンソテーをあっさり消化。
今は階段がある吹き抜けでザイルワーク講習中だ。
「次はラッペリングが出来ないと進入できないからな。全員懸垂下降はマスターしておけよ」
という理由である。
「食べ過ぎて体が重いのです」
「カロリーも装備のうち!」
そんなことを言いながら、ハーネス装備の女子高生が縄にぶら下がって悶えたりしている訳だ。
僕にそっち系統の趣味は一切無い。
でも見ていてなかなかしんどいのは確かだ。
その後は交代で風呂に入って、そして恒例雑魚寝状態でのビデオ鑑賞会。
マット&シュラフ装備の芋虫姿女子高生に囲まれてビデオを見る羽目になる。
風呂上がりシャンプーやボディソープの匂いぷんぷん。
そんな同級生女子らに回りを囲まれる訳だ。
これもまた色々しんどい。
しかも今日見ているのは恋愛映画。
18禁ではないけれど激しい愛のシーンがあったりする。
何だこの拷問。
確かに交野や小宮あたりから見れば恵まれたリア充な高校生活だろう。
でも僕は思う。
こんなの断じて恵まれてはいない。
むしろ色々苦しいだけだ。
僕が求めた楽しい高校生活はこんな感じじゃ無い。
勘弁してくれ。
「朗人さん、ちょっと具合悪そうですけれど、大丈夫ですか」
映画終了後、雅にそう言われる。
うん、確かに具合が悪い。
でも君達に近寄られると逆効果なんだ。
だから放っておいてくれると助かるな。
「そういう時はやっぱりこの台詞なのです」
あ、余分な奴がやってきた。
言うまでも無く佳奈美である。
「大丈夫、おっぱい揉む?」
おいおいおい、だいたいお前、揉むほど胸がないだろう。
それがわかっているのに反応してしまう自分が悲しい。
「甘いな、佳奈美。時代は常に先を進んでいくのだ」
美菜実が非常に悪そうな顔で続ける。
「という訳で一発、『やらないか!』」
おいそれ違うノンケ用じゃない。
いやノンケ用か。
「そうですね。何なら今夜の私のベッド、横が空いていますよ」
先生まで!
「今のは教育者としてあるまじき言葉なのです」
佳奈美の注意に先生は口を尖らせて反論する。
「だって佳奈美ちゃん、前に言ったじゃない。朗人が選ぶ自由も間違いなくあるって」
「ここは相手が大人の分、情勢が不利だ」
凄くわざとらしい口調で先輩が口を出す。
「ここで対抗できるのは雅しかいない。その胸を使うんだ。後からぴたっと朗人にくっついて、こう一言言えばいい。『当てているの』って」
「わかりました。やってみます」
雅がのそのそ寝袋から出る。
「ちょっと待て。皆、常識と理性を持て」
そう言いながら僕はずるずる部屋の出口へ後退を開始。
間違いない。
僕が望んだのはこんな高校生活じゃない!
だから頼む、誰か。
助けてくれ!