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#転生
コシ
103
耀聖(ようせい)
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『偽りの無能、真の覚醒〜転生皇女はすべてを奪い返す〜』
空間がぐにゃりと歪み、最愛のアルベルトお兄様と専属侍女のリンの姿が消え去った後。
私は一人、不気味な静寂が支配する、全面が鏡のように反射する奇妙な回廊に立っていた。
「……ふふ。まさかこの私が、これほど子供騙しの空間転移に引っかかるなんてね」
私はフッと冷酷な笑みを唇に浮かべたが、その紫の瞳には、一切の焦りも恐怖もなかった。
魔王ディルクが「世界の外側の闇」を手に入れたことで、この古城のルールそのものが狂っているのは確かだ。けれど、私自身の絶対的な魔力の根源までが否定されたわけではない。
カツン、カツン、と自分の足音だけを響かせながら、鏡の回廊を進む。
すると、前方の空間から、立ち込める禍々しい漆黒の霧と共に、聞き覚えのある不快な高笑いが響き渡った。
「ウフフ……! 会いたかったわよ、シャルロット。魔法無能の、可哀想で惨めな悪役令嬢さん?」
霧の奥から姿を現したのは、私が前世のバロア王国で、全てを奪われ、陥れられた元凶――偽聖女エレンの姿だった。
彼女はかつてのように純白の聖女の法衣を纏い、しかしその瞳は血のように紅く染まり、唇には歪んだ邪悪な笑みを浮かべている。
『シャルロット、お前のようなゴミが、現代でどれほど偉そうに皇女を名乗ろうと無駄だ! お前はあの夜、カイル様に捨てられ、泥水をすすって死んだ敗北者なのだからな!』
エレンの幻影の背後から、さらに元婚約者カイルの幻影までもが蠢き、私を嘲笑うように言葉を重ねてくる。
魔王と魔女が作り出した、私の精神を内側から揺さぶり、魔力を暴走させて自滅させるための最凶の精神工作。普通の人間なら、前世のトラウマが蘇り、絶望に膝をつく場面。
しかし、私は立ち止まることすらなく、冷ややかな視線をその幻影へと向けた。
「……はぁ。前世のゴミが、今さら何の用かしら?」
『な、何……っ!?』
エレンの幻影が、予想外の私の冷淡な反応に、怪異なほど激しく顔を歪ませた。
「あなたたちのその薄汚い顔を見るだけで、お茶が不味くなりますわ。カイルもエレンも、私の前世の復讐劇において、すでにただの『前座』として完膚なきまでに叩き潰してあげたはずよ。現代の最強皇女となった私に、今さらそんな安っぽい幻影で揺さぶりをかけられると思っているのかしら? 本当に、魔王の知能レベルの低さには呆れてしまうわね」
私は優雅に、そして残酷なまでに美しい冷笑を浮かべながら、一歩前へ踏み出した。
『お、おのれ……! 生意気な人族のメスがぁぁぁ! 死ねぇい!』
激昂したエレンの幻影が、両手から世界を腐食させるほどの高密度の漆黒の闇魔法を放ってきた。
空間を削り取りながら迫る、桁違いの威力の一撃。
「目障りよ。消えなさい」
私が小さく、氷のように冷たい声で告げた瞬間。
私の背後に顕現した『光と氷の薔薇の翼』が爆発的な輝きを放ち、私の右手から、世界の理を完全に超越した絶対消滅の特異魔法――『聖絶の氷華(ラグナロク・ローズ)』が放たれた。
ズガァァァァァンッ!!!!
放たれた神々しい光の奔流は、エレンが放った闇魔法を、抵抗する隙すら与えずに一瞬で霧散させた。
それどころか、まばゆい光の刃はエレンとカイルの幻影を完全に呑み込み、彼女たちの絶叫と共に、周囲の鏡の回廊ごと、文字通り『一撃で粉々に粉砕』したのだ。
光が収まったそこには、精神の迷宮の一部が完全に消失し、ただの広大な空洞だけが残されていた。やはり、今の私にとっては、魔王のどんな精神攻撃もただの羽虫の羽音に過ぎない。
◇
「ふぅ……。さて、お兄様たちを探しに行きましょうか」
そう言って歩き出そうとした私の足元で、何かがカラン、と小さな音を立てて転がった。
エレンの幻影が消滅した、まさにその中心の床。
「……あら? これは……?」
私がしゃがみ込んでそれを拾い上げると、それは、見たこともないほど不気味で、同時に吸い込まれそうなほどに美しい、紫色の液体で満たされた『謎のガラスの小瓶』だった。
瓶の表面には、古代の失われた神聖文字が刻まれており、手にするだけで、私の魂の奥底が共鳴するようにドクンと激しく脈打った。
直感が告げている。これは魔王の罠ではない。むしろ、この迷宮の奥底に隠されていた、世界の外側の理に抗うための『何か』だと。
先ほどの大軍勢との戦いや、迷宮の連続した空間破壊によって、自覚はないものの、私の内部の特異魔力は確実に僅かながらの消耗を見せていた。
「面白いわね。試してあげようじゃない」
私は迷うことなくその小瓶の栓を抜き、中の紫色の液体を躊躇(ちゅうちょ)なく一気に飲み干した。
ゴクリ――。
その瞬間、私の身体の全細胞が、文字通り『爆発』したかのような凄まじい衝撃に襲われた。
「――っ!? あ、ああああっ……!!」
熱い。身体の内側から、燃え盛るような太陽のごときエネルギーが奔流となって駆け巡る。
枯渇しかけていた魔力が一瞬で完全に回復するどころか、私の内部に眠っていた魔力の許容量(キャパシティ)そのものが、元の10倍、百倍へと、凄まじい速度で強制的に押し広げられていく。
私の背後に広がる光と氷の薔薇の翼が、これまでの黄金と紫から、世界の創世記を思わせる、深淵なる『神聖な白銀の輝き』へと進化を遂げていく。
魔法の威力、魔力の密度、そして世界の法則を書き換える権能。その全てが、今までの私の限界を遥かに突破し、完全に『神の領域』へと到達したのだ。
「なるほど……。これが、この世界の深淵に眠っていた本当の『神薬』というわけね」
私は自身の手に宿る、世界そのものを一瞬で凍土に変えられそうなほどの圧倒的な白銀の魔力を見つめ、最高に気高き、不敵な笑みを浮かべた。
魔王がどんな闇の力を手に入れようと関係ない。今の私は、そのすべてを上から力技で踏みつぶす、真のチートへと覚醒したのだから。
「待っていなさい、魔王ディルク。……そして私の愛しいお兄様、リン。今すぐ、この世界ごと全てを終わらせてあげますわ」
白銀の翼を大きく羽ばたかせ、
私は崩壊を始めた迷宮の奥へと、
光の速さで突き進むのだった。
コメント
1件
わあ、圧倒的なカタルシスのある回でしたね……! 偽聖女エレンやカイルの幻影に動じず、「前座」と切り捨てるシャルロットの冷徹な強さに痺れました。そして何より、深淵の神薬を迷わず飲み干す胆力と、白銀の翼へと進化するビジュアルが神々しくて。強くなればなるほど「孤独の絶対性」みたいな寂しさも滲むのが、この物語の魅力だなあと改めて思いました。お兄様とリンを救う展開、楽しみにしていますね🌷