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——地獄の底へ連れて行ってやる。
ははっと乾いた笑みがイギリスの口から漏れた。
大英帝国、そう呼ばれて久しいが、かつて7つの海を支配し、ありとあらゆる富を得た自分である。
そう簡単に、しかもたった一人の青年の手によって堕ちるとでも思ったわけか。
「お前の思い通りにはなんねーよ!!」
考える限りの悪態をつき、ぺっと男の顔面に唾を飛ばした。
男は眉一つさえ動かなかった。反抗的なイギリスにどうするわけでもない。
ただ、異様なほど丁寧にかかった唾を拭った。
わかっている。これがただの虚勢であることも。
でも、そうしなければ自身を保っていられないのだ。
これから起こりうること。男の後ろに積み上げられた拷問器具の山が視界に入る。
脂汗が背中を伝う。怖い。
イギリス自身、古い歴戦の国であるため、それなりに敵もおり、数々の死線は経験してきた。
だからと言ってこういう場はいつまでも慣れることはない。
国の化身であるため、国自体が滅びない限り不死身ではあるが、痛覚は人と同様に備わっているのだ。
しかし。ぐっと奥歯を噛み締める。俺は絶対にこいつには屈しない。
自分の矜持を守れるのは自分だけなのだ。
こいつは俺が国であることは知らないだろう。
そうであれば都合が良い。拷問を受け、弱ったと見せかけて不意打ちで逃げ出せば良い。
まだ希望はある。
ニヤリとして男に言い放つ。
「さあ、どうした若造が。怖気ついたか? ほら、拷問するんだろ? さっさとしろよ」
「そうか。ならば良い。あとで泣き喚いても知らないからな」
そう言うと、男は表情一つ変えずに、イギリスを薙ぎ払う。
イギリスの頭は石の床に強かに打ちつけられた。
「ごふっっ……!!」
脳震盪を起こしたイギリスに構うそぶりも見せず、男は体の向きを変えて、ある道具を取り出した。
カチリと小さな音がする。男の手に迷いはなかった。
意識が遠のきかけているイギリスに、金属音がやけに鮮明に響いた。
「まずは、これを使う。ここに座れ」
無理やり体を起こされ、ずいぶん年季の入り傷んだ椅子に座らされる。
机に置かれた長い道具には、腕を固定するベルトが広がっている。
指先を乗せると思われる部分に錆びた金属のレバーが付いていた。梃子のようなものか。
生唾を飲み込む音が大きく響く。
間違いない。これは……
冷や汗が背中を伝う。
爪剥ぎ用の道具、である。