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おぉ! お父さん、これなんかどう?
ほう、これはなかなかに良い……わけあるかぁ‼︎ どうやったらこんな異形になるんだよ⁉︎
「えぇ〜……」
今のは結構イイ線いってたと思うんだけどな。
「はぁ……本当にいつになったら上達するんだか……」
クァペールのため息混じりの一言が俺に刺さる。そうだよね、俺もそう思う。
学校の勧誘を受けたあの日から約6年が経った。メイジュルプルス魔法学校は中高一貫らしいので、来年からは俺もそこの生徒となる。魔法学校と言うくらいだ、当然魔法が使えなくては困るだろうということで、俺は今クァペールの下で魔法の習得訓練に勤しんでいた。……だが、悲しいことに俺には魔法の才が無いみたいだ。唯一得意である植物属性の魔法でさえ、お決まりで人知を超えた何かが生まれてしまう。それでもまだマシな方なのだから、どれだけ悲惨なものなのかがよくわかるだろう。こんなにもできないとさすがの俺もへこむ。そうやっていじけている俺を励まし、これまでずっと付き合い続けてくれているクァペールにはマジで感謝しかない。本当にありがとう。泣きそう。
「魔法は積み重ねだとは言ったが……本当に何なんだこれは? まったく、よく分からなさすぎて改善のしようがないな……」
今は植物属性の魔法の練習をしている。その『一種類だけ』だ。何故かと言うと……出ないから。植物属性以外の魔法を出せないんです俺。めっちゃ頑張りましたけど、出ませんでした。炎系の魔法とかさ、使ってみたい生涯だったよチクショウ! ……そう言うわけなんでね、唯一できる植物属性の魔法を練習しているわけですよ。まあ、それも上手くいってないけどね!
俺、こんなんでメイジュルプルス入れるかなぁ。なんかどんどん不安になってきた……。
「アルシュパ!クァペール!朝ごはんができたわよ〜!」
突如として耳に飛び込んできた聞き覚えのある声に驚きと安心感を覚える。俺は声の聞こえた方に目をやり、 予想通りのその顔を見て微笑み「は〜い!」と大きく返事をした。
朝早く起きて魔法の練習をし、昼頃になるとクァペールが仕事に出掛ける為、俺は自室で読書。夕方になりクァペールが帰ってきたら再び魔法の練習……最近は体も大きくなってきたので、体術も教わり始めた。それが、俺がこの世界に来てからの日課だ。 今のように、メアルが家の窓から身を乗り出して大声で俺達を呼ぶのもその一つだな。
メアルが朝食を作り終えたという事は、今は大体七時くらいだろう。そう考えて、俺は時間の経過を実感すると共に、自身の腹が空いていることに気づく。今日の朝食は何だろうか? 俺は胸を躍らせながらクァペールと共に我が家へと戻った。
「そろそろ始めるか」
朝食を終え少し休憩した後、俺達は再び家の割には大きい庭へ出た。今日中に双葉の一つくらいは生やしてやりたいところだが……。
「さてと……アルシュパ、一回詠唱してみろ」
この世界では詠唱してから魔法を使うのが一般的だ。なんでも魔法を使うにあたって必要不可欠なことらしく、これを唱えた後の魔法は効果が段違いに上がるらしい。
「うん、わかった」
地面に手をつけ、詠唱を始める。
「神よ、我らの聖なる母よ、どうか天の恵みをこの手に宿したまえ。『グリナリィマニピュレイト』」
すると、すごい形相(ぎょうそう)の人参がとてつもない勢いで地面から突き出てきて、そのままどこかへ走り去っていった。
「もしかしたら詠唱を間違えているかもと思ったんだが……うん、しっかり詠唱できている。魔力量も問題ないみたいだしな。……本当に何が原因なんだ?」
……俺のセンスが無いだけとか、そんな理由だったりしないよな……?
それから俺達は何度も繰り返し練習を行ったが、一度も上手くいく事はなかった。