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さっき自分の言った不用意な発言が、まさかくるみをここまで追いつめてしまっているだなんて思いもしない実篤は、そんなことを思ってしまう。
うるうると濡れた瞳で見上げられて、実篤は思わず流されそうになって。だけどこの愁いを含んだ眼差しはどうしても看過出来ないと思い直した。
手の内をみすみす明かすみたいでかなり格好悪いけれど。
結局それを打ち明けるぐらいなら「あれは本心からの言葉じゃったよ」と最初から認めたほうがよっぽどマシだった気さえするけれど。
実篤はこの際自分が恥ずかしいのはどうでもいいと思うことにした。
そもそも妹の鏡花に言わせれば、自分は常にカッコ悪いらしいし、今更ではないか。
「今聞いてもらわんと意味がない話じゃけん。ねぇくるみ。そんな風に不安そうな顔をしちょるキミを慰めんままに抱くほど、俺は悪趣味な男じゃないつもりなんじゃけど?」
こんなヘタレでも実篤は一応従業員を何人も抱えた社長だ。
こういう誤解やわだかまりをそのままにしていたらいいことにはならないと、経験から熟知している。
だからこそ、〝今〟話さなければ意味がないと判断した。
実篤はくるみをベッドに座らせると、彼女の前にひざを折るようにかがんで視線の高さを合わせる。
そうしてそのまま真正面からくるみをじっと見つめると、「俺ね――」と言葉をつむいだ。
くるみは実篤の言葉を聞いて、見る間に大きく瞳を見開いて。
もともと潤んでいた目から、ポロポロと大粒の涙をこぼした。
そうして泣きじゃくりながら、「実篤さん、うち、実篤さ、んが大、好き……です」と途切れ途切れに訴えてくる。
実篤はそんなくるみを抱きしめて、
「俺もくるみちゃんが大好きよ。――今からそれを、嫌っちゅうほど分からせちゃげる」
言って、くるみの小さな身体をそっとベッドに押し倒す。
くるみが小声で「待って、実篤さっ、先にお風呂……っ」と実篤を見上げて懇願してきたけれど、「終わってからでいいよね?」と畳みかけて、尚も往生際悪く「でもっ」と抗議するくるみの唇を塞いだ。
***
くるみに口付けながら、実篤は彼女の柔らかな胸を、グレージュカラーのラベンダーワンピースの上からゆるゆると揉みしだく。
サテン生地のツルツルした肌触りと相まって、極上の触り心地に思えるたわわなくるみの双丘は、実篤がほんの少し力を加えるだけでフニフニと彼の手指の圧に合わせて形を変えた。
その感触に、実篤はすぐに夢中になる。
「ふ、ぁ……、っ」
彼女の胸を心の赴くままに弄びながらキスの角度を変えるたび、くるみの小さな唇から嬌声ともただの吐息ともとれる艶めいた声が漏れて。
それがますます実篤のなかの〝男〟を刺激するのだ。
ワンピース+ブラジャーの上からでも、布地に隠されたくるみの乳房の先端が固くしこってきているのが感じられて、くるみも快感を覚えてくれているのが分かる。
それに気が付いた実篤は、彼女をもっともっと気持ちよくしてあげたいと思って……。そこを口に含んで、思うさま舐め転がしたい衝動に駆られた。
「くるみちゃんの胸、柔らかくて気持ちええね。俺がちょっと触っただけで簡単に形を変えるんとか……。まるで指先を包み込まれちょるみたいで堪らんのんじゃけど」
唇を離してくるみの耳元。わざとふぅーっと吐息を吹き込むようにしてそう囁けば、くるみが真っ赤になって首を振る。
「やんっ、そんなん、わざわざ言うてくるとか……。実篤さんの意地悪ぅっ!」
頬を赤らめて恥ずかしがっている素振りを見せるので、てっきり顔を背けているのかと思いきや、予想外れ。
キッと睨み付けるみたいに大きな目で自分を見上げたままなのが、小悪魔なくるみらしくて滅茶苦茶可愛いと思ってしまった実篤だ。
「ねぇくるみ。――キミの胸、直に触らして貰ってもええ?」
言いながら、実際には既にくるみの背中のファスナーの引き手に手を掛けていたりする。
「ダメって言うても触るくせに」
くるみにも実篤の思惑が分かっているんだろう。
恋人が服を脱がせやすいよう身体をほんの少し浮かせるようにしながらぷぅっと頬を膨らませて見せた。
「くるみちゃんは俺のこと、何でもお見通しじゃね」
言いながら、(全部俺のせいにするみたいな口ぶりじゃけど……協力的なんバレバレよ?)と思わずにはいられない。
きっとくるみだってそうして欲しいくせに、恥ずかしさで素直になり切れないんだろう。
そんなブレブレな所も含めて、くるみのことが愛しくて堪らない実篤だ。
「ごめんね、くるみちゃん。俺、くるみちゃんのこと、好きで好きで堪らんけん、全部ぜーんぶ奪いたいんよ。――お願い、許して?」
ならば自分もそんなくるみの小芝居に乗ろうと思った。
実篤が、懇願するみたいにくるみをじっと見つめたら、くるみがクスッと笑って小さく吐息を落とした。
「うちも実篤さんが大好きじゃけ、特別に許してあげます」
そのままくるみが実篤の首に腕を回して抱きついてくるから、実篤は彼女の身体を抱き起こして腕の中に収めた。
くるみが起き上がってくれたことでファスナーがスムーズに下ろせたことは言うまでもないだろう。
「ご協力、感謝いたします」
実篤がくるみを抱きしめたまま、彼女の耳元でわざと仰々しく礼の言葉を述べたら、くるみが「どういたしまして」とクスクス笑う。
「実篤さん、うちのこと好きなん、嫌って言うほど分からしてくれるんでしょう? ――うち、恥ずかしいけど同じくらい期待もしちょりますけぇ」
その上、そんなことを言って実篤を煽りまくってくるのだ。
(この子は本当に手に負えん小悪魔だわ。俺みたいなヘタレで太刀打ち出来るんじゃろーか)
さっきはその場の雰囲気に飲まれて考えなし。目一杯男らしい虚勢を張ってしまった実篤だったけれど。
実は早くもヘタレわんこがニョキニョキと頭角を現し始めていたり。
「ぜ、善処させて頂きます」
くるみのブラのホックを外す手をプルプルと震わせながら、実篤は(しっかりしろ、俺!)と、尻尾を巻いて隠れてしまった、己の中の狼を必死に探した。
***
実篤だって、くるみ以外の女性と枕を共にしたことがないわけじゃない。
だけど――。
(何でくるみちゃんの中はこんなに気持ちええんじゃろ)
くるみと繋がると、今まで感じたことのない幸福感に包まれるのだ。
(そんだけ俺がくるみちゃんにメロメロっちゅーことじゃろーか)
もちろん、今まで抱いてきた女性たちのことだって、嫌いだったわけじゃない。
寧ろ付き合っていた時は愛してさえいたと思う。
でも、くるみのように背伸びしてでも手に入れたいと思ったか?と聞かれたらやっぱり違うのだ。
歴代の彼女たちはみんな年上で、どちらかというと相手の方が実篤を求めてくれたから。
実篤はヘタレわんこ力を発揮して、相手から押されるままに彼女たちを愛してきた。
それが、くるみに対してだけは勝手が違って、多少無理をしてでも――自分の中の男を奮い立たせて繋ぎ留めたいと思ってしまう。
「俺さ、くるみちゃんに受け入れてもらえるんが凄く幸せで……たまにどうしたらええか分からんなる時あるんじゃけど」
本当にその言葉の通り、すごく大事にしたいと思っているのに激情のままに欲望を全部ぶつけたい衝動に駆られて困る時がある。
今のところはヘタレが勝利してそんなに酷いことはしなくて済んでいるけれど、たまにどこまでならくるみに許してもらえるのか試したくなる時もあって。
思ったままを口にしてくるみの首筋をチュッと音を立てて軽く吸い上げたら、それに呼応するみたいに彼女の中がキュッと締まった。
「うちも、実篤さんに愛してもらえるんが嬉しゅーて……おかしゅうなりそうな時ばっかりです」
その言動に我慢出来なくなったんだろうか。
実篤がくるみの膣内に挿入たまま――。しばし大人しく小休止させていた分身をぐわりと怒張させて、興奮している事を誇示するみたいにゆるゆると抽挿を再開する。
そんな実篤の豹変ぶりに、くるみは目端に涙をにじませて「あんっ、実篤さ、いきなり……ダメぇっ」と抗議混じりに喘いだ。
それっきり一生懸命口を引き結んで声を漏らさないよう頑張るくるみの姿に、実篤は彼女の愛らしい唇に親指の腹でそっと触れて語りかける。
「ねぇくるみ。可愛い声、我慢せんともっと聞かして?」
ここは、実篤がヘタレ心と下心との狭間で揺れながら取ったホテルの一室だ。
いわゆる、いつもとは違う常ならぬ空間。
少々羽目を外したって許されるではないか。
実篤はそう思っているのに――。
「それでも、外とか……隣の部、屋と、かに声っ、聞かれたら恥ずかし……、――あ、や、ぁぁっ」
くるみがそんなことを言ってソワソワと実篤を見上げてくるから、
「旅の恥はかき捨てっちゅうじゃろ?」
実篤は思わず彼女が話し終わらないうちにグッと腰を深く沈めたくなってしまった。