テラーノベル
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野村幹事長はキオブに対し、自分が国交族議員として建設会社の面倒を見る事を願い申し出た。
一方、ティランに対しては今こうして料亭に誘い、警察への復讐をそそのかしている。
野村は酒を注ぎながら、
「ティラン君、君は警察が憎くないか?」
「憎いです」
ティランは俯きがちに答える。
「ならば警察庁長官に復讐しよう、準備は全て私がやる」
「!」
──警察庁長官を、襲撃!?
「出所後の面倒も私が見る」
あるいはそれはグローバル人材活用法案を止めてきた警察組織への野村幹事長からの一矢であったろう。
移民が人生を狂わされ、警察に復讐したとなれば、移民に同情する方向へ世論が傾く。
野村幹事長のおそるべき計画が動き出した。
* *
警察庁にて。
桜警部が警備企画課に立ち寄るなり、前田警視が肩を掴んだ。
「桜警部、お前、長官が呼んでいるぞ、一体何をしたんだ」
桜祐は慌てて警察庁長官執務室に出頭した。
……桜祐は、冒頭、自分が一警部に過ぎない身でありながら、実父たる畠山正晴内閣総理大臣の力を借りてグローバル人材活用法案を食い止めたことを、警察庁長官からなじられると予想していた。
が、小野田は書類に決裁印を押しながら、
「悪いね、仕事中に」
「いえ」
「グローバル人材活用法案、警察庁主導での再審議に目処が立ちそうだからね。君が腕を奮ってくれたおかげだよ」
小野田の目は笑っていない。
「恐れ入ります。では失礼いたします」
気まずさから、そそくさと退室しようとする祐だったが、
「待ちなさい」
「!」
「畠山総理の隠し子だからって調子に乗らないことだね。今回はグローバル人材活用法案を潰せたから、結果的には良かったけれども、この調子で暴れられたら、いずれお前を潰さなくちゃいけなくなるじゃない」
「お言葉ですが長官──」
「私はもう帰るから」
遮られ、桜祐は憮然とした表情になった。
「もういいよね」
小野田長官は語気を強めて言った。
* *
警察庁長官小野田公現が退勤する間際、エントランスで桜祐は待ち構えていたが、結局取り逃す。
すると、警察庁近くの工事現場から一台のダンプカーが警察庁に迫り──桜祐は違和感を覚える。
「襲撃!」
ブレーキ音が耳をつんざいた。ダンプカーは小野田長官の車を跳ね飛ばし、ミニカーみたいに転がす。
ダンプカーの中から人が出てきた。桜祐は彼に見覚えがあった。ティランだ。
「僕の人生を返せ!!」
ティランは銃を出し、小野田の運転手を撃った。
最悪の事態だった。
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