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あれから少しして、僕は眠りについた。
普段なら、夢の世界は。
美しい青空に、美しい結晶の生えた、幻想的な空間。
そこにエカが玩具やら勉強道具やら食事やら持って来て、遊んだり勉強したり、一緒にご飯を食べたりしているのだが。
…今日は、ちがう。
まっさらで真っ白な空間。周辺には何もなく、強いて言うなら目の前に扉があるくらいだった。
ケイ素「…とりあえず、見てみるか…?」
扉は、とても容易に開いた。
…そこには、いつものような幻想的な空間が広がっていた。
そして…その中心には。
エカがいた。
…何も持たずに。
ケイ素「…エカ………わっ」
話しかけるや否や、エカは僕へと飛びついた。
急なことに尻餅をつくが、彼は僕を話す気は一切ないらしかった。
エカ「…けい、素ッ…」
エカ「けいそ、ケイ素…」
ケイ素「…どうした、エカ」
僕の肩に、水滴が落ちてゆく感覚があった。
なんとかしてやりたくて、普段とは違う様子の彼の背中を、必死にさする。
だが普段やらないからか下手だったのか、落ちる水滴はさらに増えた。
…友達、作っとくべきだったか。
エカ「ご、めんっ…あはは、涙、とまんないや…」
ケイ素「いい、謝るな。辛いことでもあったんだろう、話してみてくれないか」
ケイ素「…話下手でよければ、な」
冗談まじりにそう言うと、彼は薬と笑った。
エカ「…普段、自虐ネタなんてやんないのに。俺のため?」
ケイ素「…どうだろうな」
エカ「もう、素直じゃないな」
あまりにも典型的すぎるセリフに、くすりと笑ってしまう。
エカもツボに入ったようで、しばらく二人で笑った。
エカ「あはは…まったく、ツボっちゃったじゃん」
ケイ素「元はと言えばエカの発言だけどな?…ふふっ」
一通り笑い終えると、
エカは改まった顔に切り替わった。
エカ「………ケイ素」
エカ「賢い君なら、もう大体察しついてると思うけど…」
エカ「…俺は、現実世界には存在しない。」
エカ「君と、それからいろんな生命体、元素たちの空想上の人物…妄想の集合体、とでも言えばいいのかな。」
エカ「俺は君の頭の中にしか存在しない…君のイマジナリーフレンドなんだ」
ケイ素「…あぁ。だいぶ前から、察しはついていた」
エカ「…あはは、だよね。気づかれない努力はしたんだけどなぁ」
エカ「…それで、ね」
エカ「今日は…お別れの日、なんだ」
ケイ素「…それまたどうして」
エカ「君が…明日で、生まれて1000年くらい経つから」
エカ「…つまり。君はもう、立派な大人になっちゃうんだ」
ケイ素「…あぁ」
そういえば…そうか。
明日から…元素の中では、大人。
子供ではない、…だから、
だから、イマジナリーフレンドを、彼を、エカのことを、
忘れてしまうのだろうか。
エカ「…それと」
エカ「俺は………準備しないといけない」
エカ「実体化するために。…元素として、この宇宙に舞い降りる、そのために。…ケイ素に会うためにも、ね」
ケイ素「…⁉︎」
ケイ素「と、ということは…本当に、逢えるようになるのか…⁉︎」
エカ「まぁ…何千、何万、何億年もかかるけどね」
エカ「君のイマジナリーフレンドとしての記憶をもって実体化することもできるみたいだし、そうしようと思って。…けど、調べてみたらそれも結構な確率で失敗するみたいでさ」
そう言うと、彼は苦笑した。
やっぱ傲慢な願いごとはできないのかな、そう呟いた。
ケイ素「………じゃあ」
ケイ素「…机上にあるだろう、お前の日記。持ってけ」
エカ「…え?」
自嘲気味に笑っていた彼は、驚いた顔でこちらを覗き込み。
…表情がコロコロ変わって、面白いな。
そう思った。
エカ「…でも……それ、ケイ素の大事なものじゃ…」
エカ「ってか、どうやって…」
ケイ素「僕は僕の日記がある。…気合いで持っていってくれ」
エカ「気合い!?!?!?!?なんか論理的思考に基くこう、やり方とか説明する流れじゃなかったの⁉︎」
ケイ素「こればかりは不可能だと僕の脳が結論づけた。だからがんばれ。気合いは割と効くものだぞ。」
エカ「えぇっ、そんなぁ…」
そんなことを話していると。
不意に、目の前がだんだん暗くなった。
…本能的に、目覚める時間だと。
そう、理解してしまった。
ケイ素「っ…‼︎やだっ、やだ…エカ…‼︎」
エカ「…お別れの時間、だ」
ぽつり、とそう呟く。
やがて僕の体は傾いてしまい、それを彼が抱き抱える。
もう、数千、数万、いや数億…数十億年感じられないかもしれないその暖かさが、実在はしないはずなのに何故か酷く温かく感じた。
エカ「…大丈夫、ケイ素。」
エカ「また、逢いにくるから。…必ず」
エカ「…大好き、大好きだよ、ケイ素」
エカ「俺…必ず、実体化して迎えにくるから」
エカ「だからそれまで…まっててよ、ケイ素」
エカ「……Du är mitt allt, Silicon.」
彼が最後に呟いた言葉が、
酷く胸に響いた。
__区切り__
ケイ素「……んん…⁇」
むっ、と起き上がる。
今日はぐっすり寝ていたようだ、寝過ぎで肩が凝っているような。
今日は、綺麗な夢をみたような気がする。
まぁ…あまり覚えていないのだが、
ケイ素「…あれ」
ふと、机上を見てみる。
…そこには、一冊の日記が置いてあった。
「ケイ素の日記」。
それ以外の本は…ない。珍しいものだ、普段は参考書とかで埋まってるはずなのに。
そもそもこんな日記、僕はつけていただろうか?
…まぁ、いいか。
ケイ素「はぁ…」
ケイ素「…とりあえず、朝自宅でもするか」
僕は、
寝巻きから部屋着へと着替えを開始した。
コメント
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ドライヤーの冷風さん、第2話読みました…! エカがイマジナリーフレンドだったっていう衝撃の真実と、お別れのシーン、めっちゃ切なくて泣きそうになりました😭💦 「Du är mitt allt」ってスウェーデン語?「あなたは私のすべて」って意味かな…最後の台詞が胸に刺さりすぎる… ケイ素が夢から覚めて日記がなくなってるのも気になるし、また逢える日を信じて待ちたくなります…! 続きが気になりすぎるので、ぜひ書いてください〜!応援してます📚✨
#北海道
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