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土を整えたセリオは、次に何を育てるかを考えた。
人間界ならば小麦や野菜が定番だが、ここは魔界。普通の作物が育つとは限らない。
そもそも、魔界の環境に適した農作物を知らない。
「さて、どうしたものか……」
腕を組んで考えていると、森の方から足音が聞こえてきた。
振り向くと、リゼリアが小さな袋を抱えてこちらに歩いてくる。
「お前が何を育てるか悩んでいると思って、種を持ってきたわ」
「ちょうど困っていたところだ。どんな種なんだ?」
リゼリアは袋を開き、中から三種類の種を取り出した。
「まずこれは暗黒麦。魔界で最も一般的な穀物ね。人間界の小麦に似ているけれど、魔力を含んでいるから普通のパンよりも腹持ちがいいの」
「それは助かるな」
「次は夜光豆。夜になると発光する豆で、魔界の住人に人気があるわ。栄養価が高く、保存も効くの」
「なるほど、非常食としても使えそうだ」
「最後にブラッドキャロット。これは普通の人参よりも硬いけれど、煮込むと甘みが増すのよ」
セリオは三種類の種を見比べた。
どれも実用性がありそうだ。
「まずは暗黒麦と夜光豆を試してみるか。穀物と豆があれば食事の幅も広がる」
「いい選択ね。じゃあ、蒔き方を教えてあげるわ」
リゼリアは土の状態を確認しながら、種をどのように蒔くかを説明してくれた。
セリオはその指示に従い、丁寧に種を植えていく。
「……こうか?」
「ええ、いい感じよ。その調子で続けて」
ネクロマンサーとして生きてきたリゼリアが、こんなにも農作業に詳しいとは意外だった。
「お前、農業にも詳しいんだな」
「研究の一環でね。魔界の環境に適した植物を調べていたのよ」
「お前の知識があって助かった」
「ふふ、それはどういたしまして」
リゼリアは満足そうに微笑みながら、セリオの作業を見守る。
こうして、セリオの魔界農業は本格的に始動した。