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まだ暗い中、不意に目を覚ます。重い瞼を開き、まだボヤボヤした視界の中で元貴の気配を探す。
隣に居たはずの元貴の気配は無くて、ただ冷たくなった毛布が僕の寂しさを煽った。
妙に目が冴えてしまったから、スマホを手に取り、何をするでもなく”0914”とパスワードを入力しロックを解除する。
不意に、LINEの通知を見ると、ミセスのグループLINEに元貴から、30秒程の音声メッセージが届いていた。
”タイトル未定”のファイル、ベッドのサイドテーブルの引き出しの中からイヤフォンを取り出して、スマホに挿入する。
元貴の創り出す音楽は、元貴の心そのもので、元貴が今、どんな事を考えて、思って生活しているのかをそのまま現れるものだと思ってる。
だから何よりも慎重に、曲に乗せたイメージや心情を曲げないように扱わなければいし、僕の主観で聴いていいものではないのは重々理解してきた。
でも、今はただ、元貴の今の気持ちを知りたい、元貴の生の体温を感じたい、そう思い、いつもより緊張しながら再生ボタンを押す。
”胸の痛み喉を伝い声にならない”
”夜の帳、優しく居たい、素直でもありたいのに”
”僕らは下手くそに生きている”
「っ・・・!」
思わず唇を噛んでしまうような、何にも言い表せない気持ちになった。
つうっと、熱い涙が頬を伝った。
心臓が痛いほど、ザワザワと音を立てている。
こんなに、心震わせられるのに、僕には何も分からなかった。
本当に、本当に、元貴のことが何も分からない。
元貴の中の孤独がどれだけ深いのか、どれだけの陰鬱を抱えているのか、僕はどうすれば、元貴の心の穴を埋める手助けをさせて貰えるのか。
恋人として、これからどうやって関わればいいのか。
全く、分からない。
只、”分からないこと”から、1つわかった事がある、こんなにも何も”分からない”僕は、元貴の傍に居るべきではないこと。
僕は、バカでいつも自分のことで手一杯だから、元貴には、似合わないということ。
ごめんね。
こんな僕で。
きっと僕が元貴の優しくて、繊細な孤独に触れてしまったら一瞬で滅茶苦茶に傷つけてしまう。
また、一筋涙が零れた。
その瞬間、元貴が、部屋に帰ってきた。
パチッとカメラのシャッターを切るような短い時間だけど、目が合った気がした。
だけど、僕は目を逸らし、寝たフリをした。
よく思い出してみると、元貴の目は涙で濡れていた気がした。
ベッドが静かに揺れ、元貴が寝転んだ事がわかった。
そのまま、僕の身体を暖かい何かが包み込んだ。
と、同時に、鼻を啜りながら、嗚咽を抑えて涙を流す元貴の吐息を感じた。
僕も、涙が出た。
僕らは、薄明るくなるまで、互いに強く抱き合いながら、泣き合った。
to be continue…
お疲れ様でした!
最後まで読んで頂いてありがとうございます。(*´˘`*)
これからも、コツコツ投稿していけたらなって思ってます。