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第七章
動き出す闇
― 邪神の右腕 ―
遥か上空――。
雲の切れ間から、一人の青年が静かに神殿を見下ろしていた。
漆黒の外套を風になびかせ、黒髪が静かに揺れる。
その紅い瞳は、先ほどまで繰り広げられていた戦いの跡だけを見つめていた。
「……終わったか」
感情の読み取れない声が、小さく零れる。
青年は、四人の巫女へ視線を向けた。
「神器を手にしたばかりだというのに……」
脳裏に先ほどの戦いが浮かぶ。
太刀を振るう煉華。
風を操る蒼紫。
双剣を自在に扱う琥珀。
結界で人々を護った詞葉。
「初めてとは思えない動きだった」
わずかに目を細める。
「この段階でこれほどとは……」
未熟。
経験もない。
それでも、四神に選ばれた巫女としての資質は想像以上だった。
「放置すれば、必ず我らの障害となる」
そう呟くと、男の姿は黒い霧へと溶けるように消えた。
――次の瞬間。
薄暗い空間へ静かに降り立つ。
冷たい空気。
重苦しい静寂。
奥には巨大な玉座があり、禍々しい瘴気が周囲を包んでいた。
玉座に腰掛ける一つの影が、ゆっくりと口を開く。
「戻ったか…」
「はっ。」
青年は片膝をつき、深く頭を下げる。
「ご報告いたします」
「申せ」
低く響く声に、空気が震える。
「あの四人……四神の巫女は、まだ力の一端しか目覚めておりません」
黒い影は黙って耳を傾ける。
「しかし、神器を手にした直後にもかかわらず、低級魔獣を退けました」
一瞬の沈黙。
「ほう……」
黒い影は静かに目を細めた。
「予想以上…ということか」
「はい」
青年は迷いなく答える。
「今は未熟です。ですが、成長すれば我らにとって大きな脅威となるでしょう」
玉座の間に重苦しい静寂が流れる。
やがて黒い影はゆっくりと形を成し人型になった。
「ならば……」
その声には絶対的な威圧が宿っていた。
「右腕よ」
「はっ。」
「お前が行け…」
短い命令。
しかし、その意味は重い。
「四神の巫女を始末せよ」
青年は静かに立ち上がる。
その表情に迷いはない。
「……御意。」
そう告げると、黒い霧が再び青年の身体を包み込む。
次の瞬間、その姿は闇の中へと消えていた。
黒い人型は誰もいなくなった玉座の間で、不敵に口元を歪める。
「四神の巫女……
せいぜい抗うがいい。」
低く響く笑い声が、闇の世界へ静かにこだました。
――運命の歯車は、静かに動き始めていた。
コメント
1件
第7話、読了しました!邪神側の視点が入って、物語に一気に深みが出ましたね。特に「右腕」と呼ばれた青年が、煉華たちの戦いを「初めてとは思えない」と評価していたのが印象的でした。敵側から見ても彼女たちの潜在能力が認められているって、読者としてすごく嬉しくなる描写です。玉座の間の禍々しい空気感も、しっかり伝わってきました。次回、四巫女にどう襲いかかるのか、ハラハラしながら待ってます!