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#異世界転移
花月夜れん
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ユキ
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第三十七話 旅立ちの朝
「別れは終わりじゃない。また会う日までの約束だ。」
七月三十日。
朝の駅は、いつもより少し静かだった。
旅行へ向かう人。
仕事へ向かう人。
それぞれが、それぞれの場所へ歩いていく。
湊は改札の前で、小さな紙袋を握りしめていた。
中に入っているのは、一冊の小さなアルバム。
留学してから送られてきた写真。
この夏、一緒に撮った写真。
そして、
一番最後のページだけは空白のまま残してある。
そのページには、小さくこう書いた。
「また会えた日に。」
*
「神崎くん。」
振り返ると、紬が立っていた。
今日は動きやすい服装で、
大きなスーツケースを引いている。
「おはよう。」
「おはよう。」
昨日まで普通に笑っていたのに。
今日は少しだけ、その笑顔が切なく見えた。
*
「これ。」
湊は紙袋を差し出す。
「え?」
「開けてみて。」
紬はゆっくりアルバムを開く。
一ページ目には、去年の桜並木。
二ページ目には、夏祭り。
三ページ目には、この前撮った四人の写真。
一枚一枚を、宝物のように見つめる。
そして最後のページで手が止まった。
何も貼られていない、白いページ。
その下に書かれた言葉を読んで、
紬は少し目を潤ませた。
「……ありがとう。」
「絶対、大切にする。」
湊は照れくさそうに笑った。
「いっぱい写真で埋めよう。」
「うん。」
「帰ってきたら、一緒に。」
*
ホームに到着した電車が静かに扉を開く。
「そろそろだね。」
紬がスーツケースを握り直す。
「うん。」
また、この瞬間が来てしまった。
でも去年とは違う。
今は、お互いが前を向けている。
「神崎くん。」
「ん?」
「また写真、送るね。」
「楽しみにしてる。」
「神崎くんも。」
「もちろん。」
その約束だけで十分だった。
*
発車ベルが鳴る。
紬は電車へ乗り込み、窓際に立つ。
湊はホームから手を振る。
電車がゆっくり動き始める。
「またね!」
窓越しに聞こえた声。
「また。」
湊も笑って手を振り返す。
電車が見えなくなるまで、その場を動かなかった。
*
帰り道。
空を見上げると、真っ青な夏空が広がっていた。
寂しさはある。
でも、それ以上に不思議な安心感があった。
もう「さよなら」じゃない。
次に会える日があると信じられるから。
スマートフォンが震える。
紬から一枚の写真が届いていた。
飛行機の窓から見えた、真っ白な雲。
《また新しい景色、見つけてくるね。》
湊は笑いながら返信する。
《俺も。》
《次に会う日まで。》
送信ボタンを押したあと、カメラを空へ向ける。
カシャッ。
青空は、どこまでも続いていた。
📷 Photo.037『また会う日まで』
撮影日:7月30日
離れることは、
忘れることじゃない。
また笑って会える日まで、
今日も同じ空がつながっている。
コメント
4件
心臓掴みにいっちゃいました笑 ならよかったですー! はい!読んじゃってくださいー!
みぅ🖤だよ。読んだよ、第37話「旅立ちの朝」……。 紬と湊、最後の空白ページに「また会えた日に」って書くの、本当にずるいよ。泣きそうになった。あの白いページが、未来の約束みたいで。別れじゃなくて「またね」って言える関係、すごくいいなって思った。青空の写真、返信する湊の優しさに胸がぎゅってなった。同じ空、つながってるんだね。次回も楽しみにしてるね🌙📸