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33 - 29.クリスマスの夜(Side百合)

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2024年08月14日

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あの熱愛報道事件も落ち着いた頃、12月に入ると街中は幻想的にライトアップされ、世の中はすっかりクリスマスモードだ。


浮かれる街並みに反して、会社員である私は年末の仕事納めに向けて忙しい日々を送っていた。


先日、会社にかかってきた電話に出たら、たまたま海外からのもので英語だったことがあった。


以前の私なら無理だと投げ出してすぐに誰かに代わってもらっていただろう。


でも今回はたどたどしいながらも要件を聞いて担当部署へ転送することができた。


自分の成長をわずかながらも感じて、私にとってはすごく嬉しい出来事だった。


亮祐さんとの特訓が活きてきている。


熱愛報道の時のあのホテル滞在時以降も、時折りEnglish Onlyルールで過ごすことがあった。


亮祐さんが結構スパルタで、本気で英語以外使わせてくれない。


思わず日本語を話してしまうと、罰としてものすごく恥ずかしいことを要求されるのだ。


(この前は裸エプロンしてって言われたし、その前は百合からキスしてだったし‥‥。嫌じゃないけど恥ずかしくてたまらないんだよね)


その時のことを思い出すと、仕事中だというのに身体が熱くなってしまった。



「百合さんどうしたんですか?何か顔赤くないですか?寒い日が続いてるんで風邪じゃないですか!?」


「えっ?」


ふいに由美ちゃんから声をかけられて動揺する。


心配そうな顔を向ける由美ちゃんにまさか自分があんなことを考えていたなんてとてもじゃないけど言えない。


「ううん、風邪じゃないよ。ちょっと暖房効きすぎてて暑かったのかも?」


「風邪じゃないなら良かったです。そういえば百合さんは来週のクリスマスはどうするんですか?」


来週に迫ったクリスマスは、イブも当日も今年は平日だった。


「由美ちゃんは?」


「私は同期で集まる予定です。うちの同期独り身が多いんですよ。だからみんなで慰め合うんです」


「ふふっ、楽しそうだね。私は平日だし普通に仕事終わったら家に帰って過ごすかな」


そう言いながら曖昧に微笑んだ。


家で過ごすのは本当なので、完全にウソではない。


ただ、一緒なのが我が社の常務・亮祐さんで、家は彼の家だというのを言ってないだけだ。




そしてクリスマスイブの日。


私は仕事を終えるとデパ地下に立ち寄り、予約しておいたケーキや料理を受け取る。


イルミネーションに輝く街並みを眺めながら、亮祐さんのマンションへ急いだ。


合鍵を使って中に入るとまだ亮祐さんは帰宅していないようだった。


(今日は少し遅くなるかもって言ってたもんね。よし、準備しよう!)


私は買ってきた料理をお皿に盛り付け、それから亮祐さんを驚かせようと準備しておいた服に着替える。


響子とクリスマスについて話していた時に、響子が去年この服を着てみたら彼氏が喜んだという情報を得たのだ。


(たまには驚かせてみよう!響子も太鼓判押してたし)


ちょうどテーブルに料理をセッティングし終え、服も着替え終わった頃に、玄関からドアの鍵が開けられる音がした。


私は急いで玄関へ向かい亮祐さんを出迎える。


「亮祐さん、おかえりなさい」


「ただいま。‥‥って百合!?どうしたのその格好!?」


亮祐さんは目を丸くしている。


「クリスマスだから。変だった?」


「ミニスカサンタ!めちゃくちゃ似合ってるし可愛いよ!百合がそんな格好をするのが意外で驚いただけ」


靴を脱ぐとコートも脱がずに亮祐さんは私を抱きしめる。


触れた身体はひんやりとしていた。


「寒いだろうから早く中で暖まってください。料理ももう食べられますよ!」


「料理よりまず百合を食べたい。身体もあったまるよ?」


「‥‥もう!それはあとで。お腹すいたからごはん食べたいです」


「あとでならいいんだ?」


「‥‥!」


ニヤリと笑った亮祐さんを見て、自分の失言に気付く。


こうやっていつも言質を取られるのだ。


亮祐さんは私から身体を離すと、楽しそうに笑いながら、私の手を引いてリビングに向かった。


「じゃあ乾杯!」


「乾杯!」


私たちはシャンパンの入ったグラスを手に取り、軽くグラスを合わせた。


「このローストビーフ美味しいね」


「すみません、今日のごはんは全部デパ地下で買ったものです。平日だから時間もなくて、私はお皿に盛り付けただけ」


「準備してくれただけでも嬉しいよ。ありがとう。それにそんな可愛い格好の百合が見れたのもラッキーだし」


私の格好はいわゆるミニスカサンタで、ベアトップの膝上丈ワンピースに赤い帽子をかぶっている。


「同期の響子から勧められたんです。去年のクリスマスにこれを着たら彼氏が喜んでくれたっていうので」


「へぇ。彼女が百合にね。彼女良い仕事をしたね」


シャンパンに口をつけながら、亮祐さんは満足そうに頷いた。


「そうだ、百合に聞きたかったんだけど、百合は年末年始はどうするの?」


「年始は実家に帰ろかなと思ってます」


私の実家は都内ではあるが、中心部である23区からは1時間ほどかかる。


実家から会社へ通えなくもないのだが、私も蒼太も高校卒業からすでに実家を出ていた。


「亮祐さんは?」


「俺も今年はアメリカから帰国したし、久しぶりに実家に顔出そうと思ってるよ。特に年始は親族関係の挨拶回りが多いしね」


亮祐さんの家柄だと親族付き合いも大変なのだろう。


それはなんとなく想像がつく気がした。


「それでさ、百合が実家に帰る前の年末に都合がつくなら、百合を俺の実家に連れて行って両親に紹介したいんだけどどう?」


「えっ!?」


突然の申し出に一瞬頭の中が真っ白になる。


(亮祐さんのご両親に会う?私が!?)


「嫌?」


「‥‥嫌とかじゃないけど」


「社長の父とは百合も面識があるだろうけど、ちゃんと彼女として紹介したいと思ってさ」


「それは嬉しいんですけど、私でいいんですか?」


「またそういうこと言う。百合がいいんだよ。百合じゃないと意味がないの。分かった?」


「はい」


それはつまり亮祐さんも私との将来を見据えてくれているということだろうか。


そう思うとなんだか嬉しさと恥ずかしさが入り混じった気持ちが押し寄せてきた。


「じゃあ決定ね。たぶん会社の仕事納めの翌日か翌々日になると思う」


「分かりました」


付き合っている相手のご両親に挨拶するなんて初めてのことだ。


了承はしたものの、その日のことを考えると緊張で胃が痛くなりそうだった。




食後には、買ってきておいたケーキを食べる。


ホールケーキは大きすぎるだろうから、今回は単品で苺のショートケーキを2つ購入した。


「こうやってケーキを食べるとクリスマスっぽい気分になりますね」


「そうだね。結局家で過ごすだけになったけど、百合はクリスマスにもっとどこか特別な場所へ行ったりしたかった?」


「亮祐さんと一緒にいられるんだったら場所はどこでもいいです」


そう本心から素直に答えた。


だって本当にそうなのだから。


これまでもホテルのスイートに泊まったりと十分特別なところへも連れて行ってもらっている。


一緒にいたいだけなのだから、いつもすごく贅沢をさせてもらっていると思っている。



ケーキを食べながら亮祐さんに視線を送ると、なぜか彼は固まっていた。


そしておもむろに立ち上がると私に近づいてきて、いきなり彼に抱きかかえられる。


「えっ、どうしたんですか?まだケーキ食べてる最中だけど」


「もうケーキはいいよ。俺に別のデザート食べさせて?さっきあとでって言ってたよね?」


「‥‥ちょっと待って!」


「あんな可愛いことをその格好で言って俺を煽ったんだから百合が悪い」


私の静止に耳を傾ける気配もない亮祐さんは、そのまま私を抱きかかえて近くのソファーに腰を降ろす。


彼の膝の上に乗って向かい合う形の姿勢だ。


目と目が合うと、彼に唇を塞がれて、巧みな動きの舌に絡めとられる。


それだけで身体から力が抜けてしまい、落ちてしまわないように彼の首に腕を回した。


深いキスをしながら、ミニスカートの下からは亮祐さんの右手が入ってきて、妖しく太ももを撫でられる。


「んんっ‥‥」


私の口からは自分のものとは思えない甘い声が漏れ始めた。


(なんかいつもより激しい‥‥。頭が真っ白になる‥‥)


場所が明るいリビングであることも羞恥を誘う。


「‥‥あの、電気‥‥」


「せっかく可愛い格好を百合がしてるんだからじっくり見たいしこのままね。俺を喜ばせるために着てくれたんだよね?」


そうだけど、そうじゃない!って心の中で叫んだけど、妖艶に笑う亮祐さんの視線に制されると何も言えなくなった。


「じゃあデザートを食べさせてもらうね。いただきます」



食事の挨拶のような言葉を亮祐さんは言うと、そのままキスはどんどん下に降りてくる。


彼の膝の上に対面で座ったまま、明るい部屋で上からも下からも愛撫されて気がおかしくなりそうだったーー。



その日の夜、隣で亮祐さんが寝静まると、私は甘い気だるさが残る身体でスマホをそっと手に取る。


そして「彼氏の家族 挨拶」でネット検索し、そわそわして眠れない夜を過ごしたのだった。

私の瞳に映る彼。

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