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芙月みひろ
214
600
#大正時代
井川奎
269
世羅 鈴🎨🎤
197,606
「石川さんは、今年入社ですか?」
「いえ、昨年入社です」
あの席に座っているから新入社員だと思ったのだろう。今年総務へは配属者がいなかった。
「じゃあ、24?」
「はい、なります!」
「5つ違いだね」
小さな声では雨音に消されてしまいそうで、力んで答える私を見て笑いながら、彼も右手を大きく開いて【5】を示す。その中指にあるシンプルなゴールドリングが目に入り
―― 意味があるのかな
と思った。
「福田さんの会社は2年ごとに担当を異動するって聞きました」
「そうなんです。だからあと1年半くらいは、ここの担当です。それ……好き?」
「あ……」
入り込んでくる雨の飛沫が半袖ブラウスから出た腕に当たっていた。それを拭いていたタオルハンカチを指さされて、少し恥ずかしくなる。
「好きなんです……はい」
可愛すぎるアニメキャラで、子供っぽい趣味に見えるかもしれない、と何となく隠すように握りしめる。
「人気あるよね。会社でもマグカップを使っている女の子がいる」
その言葉に少しホッとした私の前を、頑丈そうな大きな傘をさした社員が通り過ぎて行く。あのくらいの傘でも、膝から下はびしょ濡れになる降り方だ。
「雷が鳴らないのが救い……」
「えっ……?」
思わず徹さんを見ると、彼は少し気まずそうに笑っている。
―― 雷嫌いに男女も年齢も関係ないよね……失礼な反応をしちゃったな
「嫌ですよね、雷。私も……」
本当は大して何とも思わないのだけれど。小学生の時、一人で母の帰りを待つ間の夕立に……雷に……随分と鍛えられたもの。雷は当たり前に鳴る物、くらいに思える。
と……車が近づいて来た気配に目を向ける。
水溜りに気を付けて、そっと私たちの前で停まったのはタクシーだ。
「お疲れ様です」
斜め後ろからの声に振り返ると、湿度を感じさせない爽やかな男性がいた。
コメント
2件
突然の雨がもたらしたのは、幸せの予感? それとも……続きが気になります〜
雨宿りのシチュエーションが静かでいいですね。新入社員に間違えられた恥ずかしさ、指輪を見て「意味があるのかな」と思ってしまう切なさ、雷が嫌いだと合わせる優しさ……小さな仕草や心理が丁寧に描かれていて、二人の距離感にドキドキしました。ラストの爽やかな男性の登場で空気が変わるところも気になります。続きが読みたいです!