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「位置について」
副部長の声で俺と夏樹は一瞬睨み合い、またすぐに自分のコースへ視線を戻した。
俺の得意な100メートルで、夏樹が圧倒的な差で勝てば、回りは黙るだろうって思っていた。
部長は夏樹が相応しいって納得するだろうと。
でも違うのかもしれない。
俺はこの水泳部がおかしいって、ホモの巣窟だと気づいていた。
(部長にお尻を狙われているとは気付かなかったけど)
だが夏樹のキスの事もあって、敢えて激しい練習で回りの雑音をシャットアウトしていた。
眠りを正当化できるから練習は嫌いじゃなかったし。
だが夏樹が部長になったら……。
部長→ホモ
副部長→ホモ
夏樹→(本人曰く俺限定の)ホモ
駄目だ。水泳部=ホモの部になってしまう。
「絶対勝つ!」
なんとしても勝つ!
ジリジリと肌を焼く夏の日差しより燃え上がる。
燃えたぎるやる気の中、ホイッスルが鳴った。
ドボンと水中の中に入れば、後は楽だった。
息継ぎする度にホモたちが見えるのは腹が立つが、音が遮断され、冷たい水の中、心地がいい。
夏樹はオリンピック強化選手第七位の実力だ(ホモだけど)
魚のようにスイスイと泳ぎ、あっという間に離されて行く。
完璧な差で負けて、だがその後は?
俺は夏樹のキスの気持ちに答えなきゃいけないんじゃないか。
目覚めたからには、答えなければ。
面倒臭がりの俺の世話を引き受けて、親友の位置にずっと居座り続けやがって。
ずっと友達で居たかった。
少しでも長くそばにいられるなら、時間稼ぎで眠ってやるつもりだった。
遥か向こうで折り返しターンをする夏樹を見ながらその距離を見る。
憧れでもあり、親友でもある。そのままで良かったのに。
――許さない。
俺はすれ違う瞬間を狙い、手を伸ばした。
夏樹のある物を狙って。
「!?」
異変に気づいた夏樹は、それでも泳ぎきる。
だが確実にペースが落ちた夏樹を俺は、さっさと抜かした。
「うぉっしゃー!!!」
タッチダウンと共に俺の雄叫びが響き渡る。
勝った。勝った。勝ったぞー!
「俺が部長になったからには、不純同姓行為は禁止にする!」
ふふんとそう言いながらも、水面から出ようとした時だった。
「異議あり! 十夜は反則だ!」
ぷかり
夏樹の横に浮かぶのは競泳水着。
「すれ違う瞬間に、脱がされた。足の膝裏まで脱がされ身動きが取れなくて負けたが無効試合だ」
「夏樹、お尻まで小麦色じゃん。地黒?」
ププッと笑うと、1年たちから『え……水着の下も黒いの』と興奮した声が上がる。
「うるさい! お前も脱げろ!」
「ぎゃー変態!」
俺の水着を掴む夏樹に容赦ない蹴りを入れた。
ごめんなさい。クリーンヒット。
夏樹は死んだ。
「俺が部長で文句あるやつは勝負してやるよ」
足で蹴りあげるようにそう言うと、1年は皆黙って大事な部分を押さえる。
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