テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
雨に煙る都庁舎は、もはや行政の象徴ではなく、街を呪い殺す巨大な黒い墓標だった。
エントランスに陣取るのは、影山が密かに育て上げた組織の最終防衛線――通称『百合の葬列』。
彼らは感情を遮断し、視覚情報を直接脳へ転送する特殊ヘルメットを装着した、生体兵器に近い存在だ。
「志摩、正面は俺が引き受ける。あんたは予備の非常階段から制御室へ向かってくれ!」
「無茶言うな!相手は軍隊並みの装備だぞ!」
「……俺の脳には、まだ奴らの『リズム』が残ってる。…見えるんだよ、奴らが引き金を引くタイミングが!」
地底で情報の濁流に呑まれた副作用か
俺の視界には、敵が放つ不可視の殺意が「ノイズ」の歪みとして映し出されていた。
俺は脇差を抜き、正面から突っ込んだ。
ダダダダッ!と掃射される消音サブマシンガンの弾丸。
俺は最小限の動きでその弾道をかわし、最短距離で先頭の男の懐へ潜り込む。
「……遅えんだよ」
脇差の柄頭でヘルメットのバイザーを叩き割り、意識を奪う。
一人、また一人と、弾丸の雨を潜り抜けながら、俺は「赤い光」の網を切り裂いていった。
「…な、何なんだあいつは……!人間の動きじゃない!」
葬列の指揮官が狼狽し、通信機に向かって叫ぶ。
俺の脳内では、都庁のアンテナから放たれる「共振パルス」が、神経を逆撫でするような音を立てて響き続けていた。
最上階へ近づくほど、その圧力は増し、鼻から熱い血が滴り落ちる。
一方、志摩は非常階段を駆け上がり、予備の通信室へ滑り込んでいた。
『黒嵜、聞こえるか!アンテナのメインブースターに到達した。だが、物理的な破壊じゃダメだ。このシステムは新宿中の住民の「心拍」と同期してやがる。一気に止めれば、反動で数千人の心臓が止まるぞ!』
「……なら、どうすればいい!」
『……「中和」だ。奴らの冷酷なパルスを打ち消す、正反対の波形…和貴、お前の声を、この街の「鼓動」として流すしかねえ』
俺は最上階の展望室、その中心にある発信核の前に辿り着いた。
そこには、拘束を解かれた影山が、自らをシステムの一部としてプラグに繋ぎ、不敵に笑って待ち構えていた。
「……来ましたね、黒嵜君。君の声で、この街を救えると本気で思っているのですか?」
「救うんじゃねえ。……叩き起こすんだよ。二度寝するには、まだ早すぎるだろ?」
俺はマイクスタンドを掴み、影山の喉元に脇差を突きつけた。