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冷たい感触だった。
最初に感じたのは、
頬に当たる風
次に、
遠くで鳴る機械音
そして
「……モトキ!!」
聞き慣れた声
モトキはゆっくり目を開けた。
視界がぼやける
白い天井
医療灯
消毒液の匂い
「……病院?」
「よぉ、やっと起きたか」
隣の椅子に座っていたヒロトが、
深く息を吐いた。
包帯だらけだった
片目には眼帯
それでも、
いつもの軽い笑みを浮かべている。
「お前、三日寝てたんだぞ」
「……三日」
モトキは身体を起こそうとして、
全身の痛みに顔をしかめた。
「っ……」
「無理すんなって」
ヒロトが支える
そこで、
モトキは思い出す。
白い空間
リョーカ
最後の言葉
『迎えに来てね』
「……リョーカは」
病室が静かになる。
ヒロトの表情から、
笑みが消えた。
モトキの心臓が冷える。
だが
「……分かんねぇ」
「は?」
「マジで分かんねぇんだよ」
ヒロトが頭を掻く
「ヴェルトラウムの中枢は消えた。白い兵士も止まった。バグの反応も激減した」
窓の外を見る
朝日
平和な街
信じられないくらい静かだった。
「でも」
ヒロトが続ける
「リョーカの反応だけ、消えてねぇ」
モトキの目が見開く
「……どういう意味だ」
ヒロトはポケットから、
小さな装置を取り出した。
青リンゴ商会の反応探知機
その画面に
微弱な青い点が、
点滅していた。
「これ、ずっと動いてんだ」
モトキの呼吸が止まる。
「場所は?」
「……地下旧都市、最深部」
沈黙
二人は顔を見合わせる。
ヒロトがニヤッと笑った。
「迎えに行くんだろ?」
モトキも小さく笑う。
「あぁ」
即答だった。
■■■■■■■■■■■■
数日後
青リンゴ商会は、
再び地下へ降りていた。
誰も近づかなくなった旧都市。
崩壊した研究施設。
静かな暗闇。
もうバグはいない。
だが
妙に“生きている”感じがした。
壁が脈打っている。
配線が呼吸みたいに震えている。
ヒロトが嫌そうな顔をした。
「帰りてぇ」
「帰ったら?」
「モトキ一人にしたら死ぬだろ」
「死なねぇよ」
「いや死ぬ」
そんな会話をしながら、
二人は最深部へ向かう。
そして
巨大な扉の前で足を止めた。
真っ白な扉。
中央に、
青白い光が灯っている。
探知機の反応が、
急激に強くなる。
ピピピピッ――!!
モトキの鼓動が速くなる。
「……いる」
ヒロトも真顔になる。
モトキはゆっくり、
扉へ手を伸ばした。
触れた瞬間
ガコン
重い音を立て、
扉が開き始める。
冷たい風
白い光
そして
部屋の中央。
透明な巨大カプセルの中に、
誰かが眠っていた。
長い三つ編み
蛍光色の髪
静かな寝顔
「……リョーカ」
モトキが呟く。
カプセルの表面には、
無数のコードが繋がっていた。
まるで
この施設そのものが、
彼を生かしているみたいに。
その時
ゆっくりと
リョーカの瞼が動いた。
モトキと、
目が合う。
数秒
沈黙
そして
リョーカは、
眠そうに小さく笑った。
「……迎え、来てくれたんだ」
モトキの喉が詰まる。
ヒロトは大きく息を吐いて、
頭を抱えた。
「はぁ〜〜〜〜……」
そして。
泣きそうな顔で笑う。
「マジで手間かけさせんなよ、バカ」
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