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転校してきた殺し屋君第2章:崩壊する日常
第9話:闇に潜む眼と、目覚めた二丁拳銃
「黒蜜、無茶だ!」 黒咲の制止を背に、黒蜜は迷わず部屋のブレーカーを叩き落とした。一瞬にしてセーフハウスは完全な闇に包まれる。
向かいのビル、スコープ越しに標的を追っていた黒岩(黒鷹勇)が、僅かに口角を上げた。 「電気を消せば逃げられると思ったか? 甘いな、黒蜜。俺の眼は、熱源さえあれば闇など関係ない」 黒岩はサーマルバイザーを起動し、暗闇の中に浮かび上がる「熱」を探す。……だが。
「……消えた?」 バイザーが捉えていた黒蜜の熱反応が、霧のように霧散した。黒蜜は極限まで体温を下げ、呼吸を殺す「冬眠(ハイバネーション)」の技術を駆使し、闇に同化したのだ。 逆に、黒岩は自らのバイザーのわずかな作動熱と、ライフルの銃身の熱で、黒蜜に位置を完全に把握されていた。
その頃、暗闇のセーフハウス内に、場違いな「笑い声」が響き渡った。
「あははは! 賑やかだねぇ、お兄ちゃんたち!」
拘束されていたはずの海沼が、ベッドの上に座っていた。 その瞳は無邪気で、それでいて底知れない狂気を孕んでいる。五つの人格の一つ、末っ子の**『れいたろう』。 彼はいつの間にか拘束を解き、どこから取り出したのか、小型のサブマシンガン二丁**を両手に保持していた。
「れいたろう……! 海沼、やめろ、俺たちだ!」 黒咲が叫ぶが、幼き人格に言葉は届かない。
「死んじゃえ、死んじゃえ! みんなまとめて、ハチの巣だよぉ!」
ダダダダダダダダッ!!
至近距離で放たれる、無慈悲な弾丸の嵐。 黒咲と佐江宮は反射的にテーブルを盾に飛び込む。暗闇の中、マズルフラッシュ(発射炎)がれいたろうの幼い笑顔を、不気味なストロボのように照らし出す。
「くそっ、人格が変わるだけで、これほど殺気が変わるのか!」 佐江宮がハンドガンを構えるが、撃てない。体は海沼本人のものだ。 「凪、こいつを傷つけずに抑えるぞ! 弾丸を誘い込め!」 「分かってる!」
黒咲は跳弾の嵐の中、影のように壁を走る。 外では黒蜜が死神の狙撃をかいくぐり、中では「子供」の姿をした怪物が銃弾を撒き散らす。
その時、ビルの屋上で対峙していた黒岩が、通信機越しに冷たく呟いた。 「……教頭先生。準備はいいですか。海沼の『人格スイッチ』を、強制的に切り替えます」
校庭のスピーカーから流れるような、あの不気味なチャイムの音が、夜の街に微かに鳴り響いた。 その音を聞いた瞬間、れいたろうの動きが止まり、海沼の体から噴き出す殺気が、さらに濃く、冷たいものへと変質していく。
「……うるさいわね。ガキの遊びは終わりよ」
声が変わった。 次に目覚めたのは、蹴り技のスペシャリスト――『玲奈(れな)』。
(つづく)
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ひとせるな
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