テラーノベル
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結婚式当日――。
空は雲ひとつない快晴だった。
「……緊張する」
控室で、藍琉は珍しく弱音を吐いた。
純白のウェディングドレス。
長いベール。
宝石のように輝く姿は、まさにお姫様だった。
「お嬢様」
「なによ」
「世界で一番お綺麗です」
振り向くと、そこにはタキシード姿の蒼真がいた。
一年前まで執事だったとは思えないほど堂々としている。
でも――。
藍琉にはわかる。
中身は変わっていない。
「……当たり前でしょ」
顔を赤くしながら言う。
「誰の奥さんになると思ってるの」
蒼真は微笑む。
「私の妻です」
心臓が跳ねる。
「……もう」
―――――
挙式。
扉が開く。
バージンロードの先に蒼真が立っている。
目が合った瞬間。
涙が溢れた。
(ここまで来たんだ)
出会い。
喧嘩。
恋。
別れ。
一年の試練。
全部が一瞬で蘇る。
父が小さく言う。
「行ってこい」
「……うん」
父の腕を離れ、一歩ずつ歩く。
蒼真の前へ。
彼は少し震えていた。
「お嬢様」
「なによ」
「夢のようです」
藍琉は笑う。
「夢じゃないわ」
小さく囁く。
「現実よ」
―――――
誓いの言葉。
「健やかなる時も、病める時も――」
神父の声が響く。
「生涯愛することを誓いますか」
蒼真は迷わず答える。
「誓います」
藍琉も言う。
「誓うわ」
指輪交換。
そして――。
「誓いのキスを」
蒼真がそっと顔を近づける。
藍琉は目を閉じた。
唇が触れる。
優しくて、温かいキス。
会場から拍手が起こる。
―――――
披露宴。
友人たちが笑い、祝福し、賑やかな空気。
でも藍琉は少し拗ねていた。
「……ねえ」
「はい」
「もう執事じゃないのよね」
蒼真は微笑む。
「はい」
「命令聞いてくれないの?」
「いえ」
彼は耳元で囁く。
「妻の命令は絶対です」
藍琉の顔が真っ赤になる。
「……ばか」
でも嬉しい。
誰よりも。
世界で一番。
―――――
夜。
二人きり。
「蒼真」
「はい」
「幸せ?」
「はい」
「私も」
少し沈黙。
そして藍琉は笑う。
「これからも一生、私のそばにいなさい」
蒼真は優しく答える。
「命令ですね」
「そうよ」
「かしこまりました」
彼はそっと抱き寄せる。
「愛しております」
藍琉は微笑んだ。
「私もよ」
こうして――。
わがままなお嬢様と執事の物語は、
夫婦として新しい物語へ続いていく。
Happy End
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