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うおおおおうおえけおうえくおどうあああああうわああもあかああああああああああああああのさ、見るの遅れたとごめんこんな神作品見るのほんとごめんなさい焼き土下座しますほんとにごめんなさい まずさ、暗めの雰囲気なの好きだしメリバ大好きなんだよねなに???りのちゃるたさんの好み知ってたりする????一番目と二番目相変わらずすぎるしキャラが公式すぎるよほんとそれは全部なんですけどね特にって言う意味でさ??!
もっと評価されてもいい作品だと思います 感動しました フォロー失礼します
作品:ママにあいたい
補足:現代パロ
結末:メリーバッドエンド
その他
・1、2→成人済み。役者
・3→学生。役者
・4→学生。通信制
・5、6→学生。欠損あり。
※1万5千字↑あるので、
時間のある時にお読みください。
※本作品には現実離れしている
場面がございます。
苦手な方はお気をつけ下さい。
「…!?どうしてここが!」
「あっは♡気付かないとでも思った?」
「だって、スマホは置いてきたし、
連絡手段なんか…!」
「ポケット、見た?」
「ポケット…?」
…なに、これ…ッ!」
「それ、GPSって言って、
登録すれば追跡できるんだよね♡」
「あはは…バカみたい。
そんなので、
私が堕ちるとでも思ってるの?」
「あぁ、無理やりにでも
俺のものにすれば堕ちるだろ?
さ、諦めようぜ。
全部、無駄だったんだからよ」
「カット!
確認に入りますので
休憩していてください!」
「終わったー!!!」
おれらは長かった撮影を終わらせた。
「お兄ちゃん、
やっぱり演技が迫真だね!」
「ふふん、
今回は結構頑張ったからな!」
「ほんと、きもかったわ」
「そうそう!
堕とすとか言ってるのに
実は自分が堕ちてた演技とか!
すごすぎて逆にきもかった!」
「そんなきもいきもい言われると
お兄ちゃんショックだぜ…」
この二人は2番目と3番目。
おれの可愛い妹たちだ!
「すみません。
映像確認が終わりました。
問題がないので
今日は帰宅で構いません」
「丁寧にありがとう。
アホ、3番目、帰りましょ」
「おう!」
「うん!」
家
「お前らー!!
愛しの兄ちゃんが帰ってきたぞー!!」
「うるさ…
別に帰んなくても良かったのに」
「あ!お兄ちゃんたちおかえり!」
「姉貴たちも、おかえり」
「ただいまー!!
ちゃんとお留守番できた?」
「そんなガキじゃねぇよ…」
こいつらは4番目、5番目、6番目だ。
この三人はまだ学生なんだぜ!
「あ、おかえりなさいです!」
「あ!!
タネさーん!!!♡♡♡」
「え!?さ、3番目さん…!?」
こいつは3番目のコイビト?のタネ!
住む場所がなかったらしいから
今はおれたちの家に住んでいる。
「今日はね!カレーだよ!」
「うおっ!美味そうだな!」
「アホ、まず手を洗いなさいよ」
「あっは!2番目は綺麗好きだな!
いい事だと思うぜ!」
「…きも」
いつも通りのやり取り。
この時間がおれは好きだ。
「んぉー!!カエーうへー!!」
「ちょっとアホ、
口の中に食べ物入れたまま
喋るんじゃないわよ」
そう言われおれは
口の中に含んでいたカレーを
飲み込む。
「あっは!
別に減るもんじゃねーしいいだろ!」
「食欲が失せるってことでしょ」
「タネさん!はい!あーん!」
「えぇ!?えっと…あー…//」
「ほら、口開けろ」
「あーむ!!…おいひぃね!」
「…ん、そうだな。おいしい」
いつも通りの食事。
この時間がずっと、続けばいいのにな。
「お風呂が湧きました!
お先にどうぞ!」
「2番目!先に入るか?」
「あんたの後に入るとか
死んでもゴメンだわ。
3番目、入りましょ」
「うん!」
「あっは!いつになっても
かわいいやつだぜ!」
「兄貴の神経どうなってんだよ…」
「でも、お姉ちゃんも優しいもんね!
4番目のお兄ちゃんも
そう思わない?」
「興味無い」
「それがお姉様なりの
愛情表現なんでしょうね」
「…あ!忘れてた!」
「どうした?」
「宿題で親の職業聞いてくる
っていうのがあったんだ…
完全に忘れてたー…」
「あっは!まだ間に合うぜ!
…親、ねぇ…」
「…やっぱり、
お兄ちゃんたちのこと
書くしかないのかなって」
こんな深刻になるのには
問題があるからだ。
そう、おれたちには親がいない。
なぜなら、ママは───
──いや、今話すことじゃないな。
とにかく、色々あったんだ。
だから、おれらには親がいない。
「まぁおれのことを
パパって称しとけば
なんとかなるだろ!」
「確かにそれでもいいが…
ママはどうするんだ?」
「あーっと…候補としては──」
「わたしはママの役なんて
承らないわ」
「姉貴…」
「嫌いなママを演じるのも嫌。
でもこのアホの嫁ってのも嫌よ」
「それも含まれてんのかよ…?」
2番目はママが嫌いだ。
生まれてからずっと
罵詈雑言を浴びせられていた。
そのおかげで口癖は
よくママが2番目に言っていた
「きもい」だ。
それでも、前まではおれのこと
「にぃに」って呼んでたんだぜ?
いつまで経ってもかわいいやつだ。
それはどんなに月日が経っても
変わらないだろう。
「あたしは…
働いてるとはいえ学生だしなぁ…」
「親が不在で聞けなかった、
ということではダメなのでしょうか?」
「うーん…
仕方ないから、それでいいかな」
「よし!そうなりゃ
どんな質問にも答えてやるぜ!」
「じゃあ給料は?」
「5番目…夢がねーな…」
「ほら、お湯がぬるくなるから
早く次入っちゃいなさい」
「よし!4番目!一緒に入るか!」
「無理」
「じゃあ6番目たちは───」
「僕はおにぃちゃんと入るよ」
「この体じゃまともに動けねぇしな…」
「私も性別的にはいろいろなので、
別の方が良いかと…」
「しゃあねぇな!みんなで入るか!」
「話聞いてた/ました?」
部屋
ベッドに身を委ねる。
今日は何回か撮り直しがあって疲れた。
そうして振り返っていくうちに、
ママの話をしていたことを思い出す。
おれが産まれたあの日。
あの日は、なぜか声が出なかった。
目の前にママがいる。
必死に声を出すが、
通じることはなかった。
目の前に、鉄パイプがある。
何に使うのだろうか。
ママがそれを手に持つ。
こっちに向かってくる。
なんで?
それを振りかざし、おれに叩きつける。
痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い。
痛くても声が出ず、
泣くこともできなかった。
最後の一振。
おれは、ここで死んだのだろうか。
「ッはぁ、はぁ…ッぁ?」
息を荒くして起き上がる。
カーテンの隙間から日が漏れ出ている。
今のは夢だったようだ。
けれど、全てがリアルすぎる。
鉄パイプで殴られた痛さは無い。
けれど、どことなく
全身ヒリヒリとした
感覚がある。
例えるなら、
夢のようで夢じゃない。
そんな夢だ。
「はっ…こんなんで
ビビってちゃ、
何もできないっつーの…」
おれは弟たちにまで
こんな被害が及ばないことを願う。
「ッし、起きるか…」
リビング
「あら、起きたのね」
「ん?2番目か!おはよう!」
「はいはい、
それより、早くご飯食べてくれない?
そろそろ食器片付けたいんだけど?」
時計を見ると10時を過ぎている。
一体おれはどれくらい
寝ていたのだろうか。
まぁそんなことはどうでもいいか。
早くご飯を食べよう。
「いっただっきまーす!!」
おれはガツガツと胃袋に
食べ物を入れていく。
ジーッと見てくる2番目を
視野に入れつつ
食事をしていたら、
2番目が口を開いた。
「そういえば、あんたは行くの?」
「ん?どこにだ?」
おれはどこか出かける
撮影があったのか不思議に思った。
そしたらそれは違うらしく、
嫌な顔をした。
「やっぱり、
あんたにも知らされて
なかったわね。」
「え、2番目にも
言われてないことなのか?」
ため息をついてから、
2番目は口にした。
「今日、あの子たちの
授業参観だそうよ?」
「…へ?」
2side
いつも通り早起きをする朝。
もちろんわたしが一番乗り。
今日は仕事がないから
ゆっくりしているけれど、
妹たちは学校だから
お弁当を作る。
朝食も作り終えたところで
足音が聞こえる。
なるべく音を鳴らさないように
しているけれど、
誰も騒ぎ立てないこの空間では
音が響く。
泥棒かと思って身構えていたら
「…ッわ!…って、
お姉ちゃんか…びっくりした…」
一番下の弟、6番目だった。
あの子にしては珍しいと思って
つい声をかけた。
「こんな朝早くに起きるなんて
珍しいわね。何かあるの?」
そうして6番目はしどろもどろに話す。
「いや、別に…ぁ、
きょ、教室に、
一番乗りしてみたくてさ!
早起きすればできるかなぁって!」
どことなく、
笑顔が繕ってるように見えた。
そんな日もある。
と結論づけたが、
わたし自身あまり納得いっていない。
「朝食は?腕がないんだから
いつも5番目に
食べさせてもらってたでしょ?
起こさなくていいの?」
6番目はびっくりした様子で答える。
「えっと、あの…あ!
おにぃちゃんがいたら、
先に入っちゃうかもでしょ?
だから、その…」
明らかに反応がおかしい。
昨日までの元気な姿は
なんだったのか。
気になるけど深堀はしないでおく。
「はぁ…朝食は食べないの?」
「うん、お姉ちゃんは、
僕に食べさせるの嫌でしょ?」
そう、申し訳なさそうに言う。
「確かに嫌よ。
でも、作った料理を棄てられる方が
よっぽど嫌よ。
だから口開けなさい」
「…あはは、意外だな」
そう言って、
わたしは6番目に食べさせる。
本当に高校生なのかしら。
「ありがとうね、お姉ちゃん」
「ほんと、ありがとうじゃすまないほど
感謝してほしいわよ」
わたしはやるなら3番目がよかったし…。
でも、たまには悪くないかもね。
「それじゃあ、行ってくるね」
「えぇ、行ってらっしゃい」
「教室に一番乗り、ねぇ…」
ほんと、嘘が下手くそな弟だわ。
6side
僕は走る。
車、自転車、人。
全部にぶつかりそうになりながらも走る。
間に合わないと、僕はきっと死ぬ。
恐怖に襲われながらも、
僕は走る。
空き教室
「ッ…はぁ、はぁ…ギリギリ、?」
「アウトだな」
「あ…っ、」
「ってことで、俺の勝ちな」
目の前には僕と賭けをした人がいる。
賭けの内容は
『どちらが先に
この空き教室に来れるか』だ。
僕が賭けたのは、暴力の受け入れ。
こいつが駆けたのは、いじめの終了。
そして、僕は負けてしまった。
「じゃ、賭け通りに
殴り蹴りさせてもらいますかー!」
僕は殴られる。蹴られる。
それを何度も食らった。
痛い。
たすけての4文字も
声に出せないほどに、僕は弱っている。
「───でさ、」
「やばー!!」
廊下から声が聞こえてくる。
他の生徒が登校してきたのだろう。
彼は舌打ちをして、
機嫌が悪そうになった。
「お前、このこと誰にも
話してねぇだろうな?」
「…はい、誰にも」
「話した瞬間お前のこと殺すからな」
そう言い残して、
そいつはどこかへ行った。
足音が遠のいたため、
きっと移動したのだろう。
「…僕に、腕があったらなぁ」
僕がいじめられている理由。
それは、腕がないから。
僕はなぜか、
産まれたときにはもう
腕がなかった。
おにぃちゃんは足がなかったから、
本当は一人の子が
二人に分離したのではと
考察されていたが、よくわからない。
腕があれば、
あいつを殺すことだってできたのに。
だって、ママは僕が───
いや…、違う。
そんなことない。
ママは事故死。
仕方なかった。
「…教室行こ」
廊下
周りからの視線が痛い。
そりゃあそうだろう。
腕のない人が何も持たずに
歩いているのだから。
「6番目?」
不意に声をかけられ、
後ろを振り向く。
そこには、おにぃちゃんがいた。
「珍しいな、
お前が俺に何も言わずに
先に来るなんて」
もちろん誰にもいじめられていることは
言ってないから、
疑われても仕方ない。
だから、誤魔化さないといけない。
「あはは、ごめんね!
教室に一番乗りしたかったんだけど、
寄り道してたら遅れちゃったんだ」
無理がある言い訳だ。
1番目のお兄ちゃんなら
納得するかもだけど、
おにぃちゃんは賢いから心配だった。
「…そうか。
今度は一緒に行こうな。
お前よりも先に教室には入らねぇからさ」
頭を撫でながらそう言ってくれる。
おにぃちゃんは、
やっぱり僕と違って優しい。
「それじゃあな、頑張れよ」
おにぃちゃんはそう言って
自分のクラスに入っていく。
おにぃちゃんとはクラスが違うから、
教室での僕の扱いは知らない。
教室
扉を開けたら水が降ってくる。
そんないじめは無い。
ただ、集団で無視をされる。
特に酷いのは、朝いじめてきたこいつ。
「おはよ〜!欠損くん!」
周りに聞こえるような大声で、
馬鹿にするような口振りで、
僕に話しかける。
こんなの何が面白いのだろう。
「ねぇねぇ、今日あんたの親来るの?」
「来んなって言っといたけど
多分来るよ。ほんときもいよね〜」
完全に忘れていた。
今日は授業参観。
いつもお姉ちゃんたちに報告してたのは
僕だし、おにぃちゃんは多分
興味無いから言ってない…。
危ない。
心配をかけるところだった。
一応作文は作ったけれど、
聞かれることは無いだろう。
僕は泣きそうになった。
「お前ら席に着け。
ホームルーム始めるぞ」
その一声に、僕の涙は引っ込んだ。
授業参観前
だんだん周りがざわつき始める。
見知らぬ大人も沢山いる。
親を見つけて嫌がりながらも
キャーキャー言っている人もいる。
親がいない人の気持ち、
考えたことないのかな。
そんなことを考えたが、
これは僕が公開してないから
仕方ないことだけれど
と直ぐに反省する。
「なぁ欠損。お前の親、いるのか?」
またこいつ。
他の大人もいるのに
堂々と言えるメンタルが羨ましい。
「ま、居ないよな。
だって、お前が殺したんだからな!」
「違う!!!僕は殺してなんかない!
ママは事故死だったんだ!」
僕は大声を上げた。
周りが静まり返って、
注目を浴びていることだけが分かった。
僕は、その言葉だけは許せなかった。
「は…ははっ…!
ママだってよ!ガキンチョみてぇだな!
あ、あはははは!」
こいつが言葉を発しても、
静まり返ったままだ。
それほど、僕が大声を出したのが
衝撃だったのだろうか。
チャイムの音がする。
「お前ら席に着け。授業始めるぞ」
気まずい空気が流れたまま、
授業が始まった。
皆、有名人が来ていることも知らずに。
授業中
先生はどんどん生徒を指名して、
書いた作文を発表させている。
みんな、親が会社員だの医者だの、
恵まれている。
「それじゃあ次は、6番目」
いつの間にか僕の番が来ていた。
「欠損なのに字が書けたとか嘘だろ?
どうせ誰かのコピーしたくせに
発表する意味ないんじゃねぇか?」
また、馬鹿にする。
ないとは思う。
それでも、
お兄ちゃんやお姉ちゃんが
この場にいませんように。
そう願いながら、僕の作文を発表する。
僕には、親がいない。
けれど、兄弟がたくさんいるのだ。
お兄ちゃんが三人。
お姉ちゃんが二人。
カレシさんが一人。
そして、僕の七人で暮らしている。
一番上のお兄ちゃんとお姉ちゃん二人は
もう働いていて、
俳優、女優の仕事をしている。
会話を交わすのは夕飯の時だけ。
それでも、僕はこの時間が楽しかった。
時折、リビングから声がする。
「なんで…!
なんで俺の娘は
死んじまったんだよ!?」
「そういう結末だったってこと。
そろそろ受け入れなさい。
あんたが未練タラタラだと、
あの子も安心して
成仏できないんじゃない?」
「うっせーな!お前が言ったんだろ!?
『絶対に生かせる』って!」
「ストップ。セリフが違うわ。
『絶対に生かせる』じゃなくて
『絶対に死なせない』よ」
「まじじゃんか!
しゃあねぇ、もう一回やるか!」
「初めからやるのは
やめにしないかしら?」
演技をするお兄ちゃんたちが、
とても輝いて見えた。
演技は所詮嘘。
フィクションだけれど、
お兄ちゃんたちが演じるものは、
全てノンフィクションに見える。
それほど演技が良く、自慢できる。
お兄ちゃんたちのドラマは、
お姉ちゃんが恥ずかしがって
見せてくれないけれど、
いつかは見たい。
そして、こんな僕を
受け入れてくれている兄弟が、
大好きだ。
「終わりです…」
周りの視線が痛い。
どうせ変な事を言われるんだろうなぁ。
「…はい、じゃあ次…」
意外だった。
何も言われないのは想定外。
まぁ変に慰められるよりかはマシだろう。
後ろから視線を二つほど感じる。
もう他の人の発表が
始まってるというのに、
そんなに親のいない僕のことを
気にかけるらしい。
けれど、その人を見つけることはなく、
今日の学校生活は終了した。
放課後
僕は賭けに負けたから、いじめは続く。
殴り蹴られ、罵られ。
だんだん痛みさえも感じなくなってきた。
「…今日はこれくらいにしてやるよ」
いつもよりも時間が短かった。
何を企んでいるかなんて考えにはなく、
僕は帰路に着く。
下駄箱
靴を履いて出た先には
おにぃちゃんが待っていた。
「今日は一緒に帰ろうぜ」
普段僕は遅くなるから先に帰ってと
報告しておくが、
いつも待っていたのだろうか。
「…うん!帰ろ!」
なぜ遅れていたのか、
理由を聞かせないために
僕は元気に答えた。
帰り道
おにぃちゃんは足がなく、
歩けないため車椅子で移動している。
そのため、坂は辛そうだ。
でも僕は手伝えない。
だって、腕がないから。
最初の頃は仕方ないって受け入れた。
それでも、
やっぱり腕は大切なものだった。
人に触れるには足しかない。
食事でも食べさせてもらうか、
犬のように食べるかの二択。
どちらにせよ、
成長するとどちらも恥ずかしいものだ。
だから、僕は外食が嫌いだ。
「…今日、姉貴たち来たか?」
思いもよらない話題だった。
足が止まりそうになったが、
語られないよう歩き出す。
「多分来てないよ。
伝え忘れちゃったもん」
うっかり感を出す。
これなら疑われることは
可能性として低くなるだろう。
「珍しいよな。
お前が伝え忘れるなんてこと、
今まで無かったのに」
「失敗くらい僕だってするよ!
人間だもん!」
自分の発言に違和感を感じた。
僕は人間なのか?
腕がないのに、
人間と言ってもいいのか?
深くは考えたくないが、
脳裏に焼き付いてしまった。
自爆するとかダサすぎる。
お姉ちゃんがいたら
きもいって言われただろうな。
と、懐かしみを感じつつ
家へと順調に向かう。
おにぃちゃんに、
疑われてないといいな。
5side
どうも弟の様子がおかしい。
最近になって帰りが遅くなるし、
今日は朝早くから登校。
そういう気分だとは思うが、
それでも怪しく感じる。
それに、どことなく元気もない。
6番目はそれで誤魔化せてると
思っているだろうが、
双子を舐めないでほしい。
明らかに気分が
落ち込んでるのがわかる。
授業参観。
そのことを姉貴たちに伝えたのは俺だ。
あいつはどんな行事でも、
報告は欠かさないやつだ。
だから、今日の放課後に
あいつの事を尾行して、
何をしているか観察することにした。
車椅子に座っているが、
腰が抜けそうになった。
6番目はいじめを受けている。
なぜ抵抗しないのか疑問に思う。
けれど、きっと答えは一つ。
腕がない、そういう理由だろう。
俺が助けてやってもいい。
でも、きっと6番目はそれを望まない。
あいつは、
兄弟のことが大好きだからな。
余計な心配をかけたくないから
黙っているのだろう。
それでも、相手が悪かったな。
俺たちも、
6番目のことが大好きなんだ。
だから、知ってしまった以上
話さないといけないが、
6番目にバレたら終わるだろう。
そのためこっそりと、
口が硬そうなやつにしか
話せなさそうだ。
1番目の兄貴以外だな。
家に帰って、
6番目と遊ばせといてその隙に話そう。
1番目の兄貴は、囮みたいなものだな。
家が見えてくる。
心の準備をしておかないとだな。
家
「ただいまー!!!」
「あら、おかえりなさい。
今日はいつもより早いのね」
「うん!いつも話してる先生が
今日休みでさー!」
明るく、楽しそうに話している。
俺はそれを横目に見つつ、
リビングへと向かう。
「お?帰ってきたのか!おかえり!!」
1番目の兄貴がバカっぽそうに笑う。
こいつにだけは話してはいけない。
そんな雰囲気を出していた。
「…なんか、悩みでもあんのか?」
「は?」
空気が変わり、バカっぽさが無くなった。
「お前の顔、なんか暗いんだよなー。
あ!もしかして気になる女子が
できたとかか!?いやー!青春だぜ!」
やっぱりバカなのかもしれない。
「別に。足がないやつを
好きになるやつなんていねぇだろ」
「…ま、そんなことお前にとっては
どうでもいいんだろうな。
問題は6番目か?」
兄貴の情緒がわからない。
真面目なのか?不真面目なのか?
どっちかにしてくれ。
「おにぃちゃんたち、何話してるの?」
まずい、この会話を
そのまま伝えられたら
誤魔化されるに決まっている。
どうにか俺から話を切り出さなければ。
「実は───」
「あっは!気になるか?
実は、5番目が恋する乙女になったかも
しれねぇって話だぜ!」
「男だから乙女じゃないだろ」
「細かいことはいいだろ?」
「…おにぃちゃん。
好きな人、いるんだね!」
そんなのいねぇよ。
そう今すぐ否定したい。
けれど、
否定したら内容を聞かれてしまう。
とても選択が難しかった。
「あんたたち、何アホな会話してんのよ」
6番目との会話を終えて
リビングに戻ってきた姉貴。
「アホは5番目たちを遊ばないでくれる?
思春期真っ只中なんだから、
変な入れ知恵しないで」
「あっは!冗談だっつーの!」
なんとなく助かったような気もするが、
見捨てられたような気もする。
「あんたたちも、
早く部屋に戻って荷物置いてきなさい」
「はーい!!」
6番目はよくここまで言われて
この精神でやっていけるなと思う。
まぁ、いじめに比べりゃこんなの
塵と同じようなものなのだろう。
俺は部屋へと進む6番目を前に
追いかけようとしたが、
兄貴に止められた。
「さっき話しかけてたこと、
2番目でもいいからちゃんと相談しろよ?
真面目に、真剣に聞いてやるからよ!」
兄貴からの言葉は信用ならないが、
姉貴には話すつもりだ。
真面目に、真剣にという部分は
汲み取らせてもらおう。
1side
5番目がチラチラと6番目を見る。
朝6番目がいなくて暴れてた時は
かなり過保護だなとは思ったけれど、
確かにおれも心配するほどに
6番目に元気さがない。
もちろん本人は完璧だと
思っているんだと思う。
「…なぁ、2番目」
「何?しょうもなかったら殴るわよ」
「あっは!そんな怒んなって!
多分、しょうもなくなんてねぇからな」
おれは疑問に思っていたことを
2番目に話す。
多分5番目もおれには隠して
2番目に話すんじゃないかと
考察しているが、
そんなにおれって信用ないのか?
「…真面目に話し始めたかと思ったら、
なに急にアホ面してんの?」
「おれってそんなに顔に出るのか?」
「あら、表現を間違えたわ。
アホ面はいつもだったわね」
「お兄ちゃんショックだぜ…」
「ま、そんなどうでもいいことは
置いといて、6番目に隠し事があるのは
間違いないと思うわ。
今日の朝もこっそり起きてきた
みたいだったしね」
学校のことについて
おれはあんまり詳しく知らない。
「まぁ、5番目に
今日が授業参観ってこと
教えてもらえてよかったな」
「それはそうね。
じゃなきゃ、わたしたちは
一生このことに
気づけなかったかもだし」
今よりも状況が悪化する前に、
何とか打開策を考えないといけないな。
6side
僕は嘘をつくのがあんまり得意じゃない。
だから、このことを隠せてるのかすら
最近怪しく思えてきた。
おにぃちゃんも
最近不信感を抱かれないように
近づいてるっぽいし、なんだか怪しい。
誤魔化すの、もっと頑張らなくちゃ。
時の流れは早い。
もう夕暮れだ。
お姉ちゃんの味見係してこよっと!
翌日
リビングからザワザワと声が聞こえる。
おかしいな、まだ朝早いのに。
そう思って扉を開けると、
みんなテレビを見て驚いていた。
音声が流れる。
『──高校の男子生徒一名が、
遺体として発見されました。
警察は───』
「…6番目、これってお前の学校だし、
同じクラスのやつじゃなかったか?」
「ま、待って?なんでお兄ちゃんが
僕のクラスにこの人がいることを
知ってるの?」
僕はまずその疑問しか
思い浮かばなかった。
授業参観には来ていないはず。
おにぃちゃんが言ってた?
でもおにぃちゃんは他クラスだし、
僕のクラスとは分からないはずなのに…!
「なんでって…
授業参観に行ったからだろ?」
「…授業、参観?」
「…何驚いてんだ?昨日あっただろ?」
僕は中身が空っぽになった気がした。
なぜだろう。
喜怒哀楽が感じられない。
「来てたんだ。ごめんね気づかなくて」
とりあえずその言葉だけを残し、
僕は部屋へと帰った。
幸い、お姉ちゃんもそこまで
厳しく言うことはなく、
僕は今日の学校を休んだ。
でも、それがダメだったんだと思う。
翌日、僕は殺されかけた。
「私の息子を返してよ!人殺し!」
街のど真ん中で僕に向かって叫ばれる。
学校でも冷ややかな目で見られる。
しまいには机に
『犯罪者』とも書かれている。
一日学校を休んだだけで
犯人扱いはやめてほしい。
一人のギャルっぽいやつがこっちを向く。
「あれ、
あんた捕まったんじゃないの?
もしかして脱走?まじウケるんだけど。
早く死ねよ。犯罪者」
暴言が次々に飛んでくる。
今すぐにも逃げ出したい。
でも逃げたら笑われる。
後ろ指を指される。
バカにされる。
噂が広まる。
僕はどうしたらいいんだろう。
「おい、6番目!大丈夫か?」
おにぃちゃんが僕に話しかけて
注目を浴びている。
「…誰?お前。話しかけんじゃねぇよ」
「はぁ!?ちょ、6番目…!」
これでいいんだ。
おにぃちゃんは、優しいもんね。
優しいから自分を犠牲にする。
あの時だって、腕を──
…僕、いつの話してるんだろ。
あの時?いつだよ、それ。
あーあ、あのギャルも殺したい。
ナイフで刺したい。
いつも強い人が弱くなる感覚。
…思い出した。
あいつを殺したのは紛れもない僕だ。
二重人格ってやつかな、
よくわかんないけど。
もういいや、待ってろよ。
3side
「ねぇタネさん、
なんかみんなザワザワしてるね」
今日はいつもより
廊下に溢れかえっている人の数が少ない。
そんなことを疑問に持ち、
タネさんに聞いてみる。
「そうですね…
もしかしたら、朝のニュースが
原因なのかもしれないですね」
「朝のニュース?」
「はい。この学校の一年生が
どうやら殺害されてしまったらしく、
それが原因でみなさん
一年生の教室付近へと
向かっているのではないでしょうか?」
「さっすがタネさん!頭良いねー!!!」
あたしはタネさんの頭をよしよしとする。
「え、あ、3番目さん!?」
そんな行動に
タネさんは顔を赤らめている。
可愛いー!!!!!
ドンッ。
そんな感じの鈍い音が聞こえた気がする。
なんとなく窓を見てみると、
そこには恐ろしいものが見える。
「ね、ねぇ、タネさん…?」
「はい?なんでしょう?」
「…これ、自殺?」
あたしは、コンクリートにある
死体に指を指し、
教室中に悲鳴が響き渡った。
1side
おれは仕事を途中で抜けだし、
弟たちの学校へと向かう。
そんなことをすれば上の人に怒られる。
そんなの百も承知だ。
「お前、残ってなくてよかったのか?」
「仕事よりも3番目たちの方が
遥かに大事だわ。
変なこと言ってないで早く行くわよ」
もちろんこいつも、同じらしい。
学校
外側のコンクリートで死んでたのか、
生徒は教室での受け渡しになっている。
まずは2番目の希望で3番目からだ。
「おーい!迎えに来てやったぜ!」
おれが声を発した瞬間、
黙りとした雰囲気からガラリと変わった。
「ね、ねぇ…あれって…!」
おれはよくわからず
2番目を見るとため息をついている。
よく見るとさっきまで
していなかったマスクもしている。
そこでおれは自分の過ちに気付く。
「あの1番目さんが
いるんだけどーーーー!?!?!?」
変装するの忘れてたぜ!!!
2番目に怒られたが、
3番目とタネは回収できた。
次は5番目たちだが、
一番ザワザワしている気がする。
そりゃそうか、同級生が死んだんだし。
5番目の教室に訪れて、回収する。
でもいつもと様子が違う。
少し歩き始めたところで5番目が話す。
「…なぁ、6番目見なかったか?」
「今から迎えに行くところだぜ!
どんな顔してっかな?」
「あんたは呑気ね…」
「お兄様はみなさんを
元気にすることが出来て
すごいですよね!」
「タネさんダメだよ?
褒めすぎるとお兄ちゃん
すぐ調子乗っちゃうから!」
なんだか
バカにされてるような気がしたが、
まぁいいや。
「すみません、6番目の保護者ですが?」
「………」
「?…すみませーん」
おれは聞こえなかったのかと思い、
もう一度声をかける。
「おいお前ら!
あの欠損の親が来たぜ!
しかも架空のな!はっはっは!!!」
「…いけ好かねぇな。
それで、6番目は?」
「彼は…ここにはいません」
「…いない?」
こいつの言っている
意味がわからなかった。
いない?そんなわけあるか。
絶対どこかにいるはずだ。
「各自教室に避難、
という指示を出したのですが
戻ってきてないんですよね。
ほんと、耳もなくなったのかって
思いますよね」
それならどうして探しに行かないんですか。
そう言いたかった。
でも、おれよりも憎んでる奴がいたらしい。
「じゃあ探せよ?
6番目は腕がないんだぞ?
もしどこかに閉じ込められてたら
出られねぇだろ。
教師ならそれくらい考えられるだろ?」
「5番目…」
やっぱり、6番目のことは
こいつに任せるべきだ。
一番近くで見てきたお兄ちゃん、
だもんな。
「ほら、6番目はどこだよ?」
「本当に、いないんです。
どこを探しても…」
「ん〜…それじゃあ屋上は?
施錠されてて普段は入れないけど
もし事件の様子を見に行ったら…
って考えたらどう?」
「確かに屋上は見ていない。
でもきっといないよ。
もしいたら、彼は生徒を突き落とした
犯人となります」
3番目の考察は鋭かった。
もしかしたら。そんな可能性を抱かせた。
「こいつらが探さねぇなら
おれらが屋上にいこうぜ。
付き合ってられねぇしな」
そう言っておれらはUターンして
屋上へと向かう。
「あ、ちょっと…!」
6side
数分前
「用事あるなら早くしてくんね?
犯罪者に呼び出されるとか
クソ怖いんですけど」
このギャルは怖いと言いつつ、
楽しんでるように見える。
バカだなぁ。本当に。
これから、殺されるというのに。
「…なに?こっち近ずいて来ないで。
きもいんですけど」
僕は後ちょっとのところで笑みがこぼれた。
「生憎、キモイなんて言葉は
聞き慣れてんだよね」
ドンッと、そいつを押す。
バランスを崩した彼女は、
屋上から落ちそうになる。
「っちょ…!危ないじゃん!
何してんの!?」
僕の目を見て訴える。
可哀想に。
今更抵抗したところで無駄なのに。
「気づかない方が、
楽に死ねたかもなのにね」
「は…?」
僕はさらに追い打ちをかけ、
彼女は何も分からずに真っ逆さまに落ちた。
コンクリートとぶつかり、
鈍い音が聞こえる。
まずは一人目。
そのときに、やっと気づいた。
「腕…ある?」
現在
僕はなんとなく、
屋上から出られなくなった。
だって、屋上から降りてきたら
僕が犯人だってすぐバレる。
目標の相手はあのギャルだけじゃない。
他にも沢山いる。
こんなところで復讐を
終えるわけにはいかなかった。
「学校が終わったら出てくか」
そんなことを言っていたら、
扉の開く音がした。
先生ならまずい。
今すぐ隠れないといけない。
けれど、ここら周辺に
隠れられそうなものはなかった。
まぁ、遭遇しても同じ目に
遭わせれば問題ないか。
そう思ったが、
そこにはそんなことも
出来ない人が立っていた。
「…6番目?」
怯えた様子でこっちを見てくる人。
その後ろにもぞろぞろといる。
「やっと来てくれたんだね!
おにぃちゃん!」
僕はとびっきりの笑顔で
おにぃちゃんを迎えた。
「…誰よ、あんた」
2番目のお姉ちゃんは警戒してるっぽい。
はじめまして、なのかな。
「忘れちゃったの?お姉ちゃん」
全部見透かしたような目をしている。
「そんな目をしないでよ。心外だなぁ」
僕はゆっくり、語りかけるように言った。
「お姉ちゃんの大っ嫌いなママを
殺してあげた、ヒーローなのにさ」
「…はぁ…っ?」
「久しぶり。お姉ちゃん」
一気に自信がなくなったのか、
お姉ちゃんは崩れ落ちる。
「おい、2番目!
…なぁ、お前、6番目じゃないよな?」
1番目のお兄ちゃんが問いかけてくる。
「ううん、僕は6番目だよ。
でも、その中にあるもう一人の6番目。
それが僕。ショウタなんだよ」
3番目のお姉ちゃんは
よくわかってないっぽい。
でも、理解できるのなんて
僕だけでいいんだよ。
「なぁ、6番目」
おにぃちゃんが話しかけてくる。
「なぁに?」
僕はおにぃちゃんだけが
6番目と言ってくれて嬉しかった。
信用されてるって思った。
でも、違った。
「お前なのか?
男子生徒殺したのも。
今回の件も…全部、お前なのか?」
結局はみんな、
見えてる部分だけを切り取って話し合う。
裏側を知らない。知ろうとしない。
そんな人に、話す価値は無いと思う。
「さぁね。僕がここにいるから
僕が犯人っていう
バカみたいなことはしないでね。
おにぃちゃん」
僕はそう言って屋上を立ち去る。
興味本位で少し後ろを見てみたら、
みんなその場で立ち尽くしている
だけだった。
「…つまんないの」
1side
家
「…何?この空気。気味悪いんだけど」
通信制の学校に通っている
4番目は今回の事を知らず、
いつも通りになっている。
まぁ、その方がおれらからしたら
ありがたいのかもしれない。
通知が来る。
なんだよ、そこまで判明したのか。
そこには、
『男子生徒殺害。犯人は学校の生徒か』
と書かれている。
6番目のことがバレるのも時間の問題だ。
「2番目、ちょっと来てくれ」
「…えぇ、わかったわ」
おれは2番目を俺の部屋へと呼んだ。
リビングで話を聞かれるのは分が悪い。
もし6番目が帰ってきたら、
話を聞かれるかもしれない。
そんなことを考えたら、
おれの部屋の方が安全性は高いだろう。
「で、何の用?
きっと6番目の事だとは思うけれど」
2番目は勘が鋭い。
だからこそ、こいつには
話しずらいことなんだけどな。
「あっは、正解だ。
…きっと、明日は会見だ」
「もうそんな情報が回っているの?」
2番目はそれにすら気づけないほど
辛かったのだろう。
6番目が、人を殺したことについて。
「あぁ、そこでおれらは関係性やら
色々聞かれるだろう。
でも全部知らないふりだ。
そうすれば、6番目を助けられる」
「…本当に、大丈夫なの?」
2番目はキツくあたるが、
兄妹に対しての想いは強い。
心配もするだろう。
「あぁ、何も関係性は無い。
なぜここに呼ばれているかすら
よくわかっていない。
そういうていにするんだ」
「…そう。わかったわ。
口滑らせたりしないでちょうだいね」
「言い出しっぺがするかよ」
「そうね…」
部屋から出ていく2番目は、
どことなく笑っていた。
一人になる。
とたんに静かに感じる。
「6番目、お前が地獄に落ちるなら、
おれも落ちてやる。
来世で、幸せに生きようぜ」
そんな最後の独り言で、
おれは明日を迎える。
朝
リビングを見渡すと、
5番目がテレビを見ている。
「5番目!おはよう!」
おれは元気に声をかける。
少しでも明るくできるように、だ。
「…兄貴?朝なわけねぇだろ?」
手遅れだったようだ。
目の下にはクマがある。
「おかしいよな、
いつまで経っても6番目が帰ってこない。
帰ってきたら叱ってやるんだよ。
どこ行ってたんだって」
もうこいつは限界なんだ。
「…アホ、
5番目に構ってる暇なんてないわよ」
「そんな時間なのか。はえぇな」
会見の時間は10時から。
時計は7時を差している。
みんな、限界なんだ。
「…早めに行くか」
早く、この地獄から抜け出さなければ。
会見場
途中
「今回の件について、
何か一言お願いします」
記者が尋ねる。
「一言も何も、私達は関係ないです。
なぜ私達が会見することに
なっているかすらわかってないです」
おれはテンプレ通りに発言する。
全員が困惑した表情だ。
これならそれほど新聞に載ることも無く、
炎上も免れそうだ。
なんてひと安心したのもつかの間、
最悪な事件が起こる。
「ちょっと君!待ちなさい!」
警備員の方が騒いでいる。
何かとそっちに目線を向けると
意外な人物がいた。
「何が…誰が関係ないって?」
「…あんた、誰?
用がないなら帰って」
2番目は少し苦しそうに伝える。
知らないフリをここまで通したら、
演じるしかない。
芝居に対して感謝する日が来るとはな。
思いもよらなかった。
「…ねぇ、お兄ちゃん」
「…なんか用か?」
おれも心苦しいが、役を演じる。
6番目、お前のことを守れるのは
おれたちだけなんだよ。
だから、大人しく引いてくれ。
「お兄ちゃん言ったよね?
僕が地獄に落ちるならおれも落ちるって」
「は…?」
そう言われておれは胸ぐらを掴まれる。
なんで知ってるんだ、それを。
あれはおれの独り言。
自分の部屋で言った独り言。
そこまで考えてやっとわかる。
「盗聴してんじゃねぇよ…ッ!」
「ちょっと、アホ!」
周りの記者たちはザワつく。
「もうこの際いいぜ、全部話してやるよ」
おれは全部話す覚悟を決めた。
「お前のことを守ってやるために
ここまでやったんだよ!
お前がどんな罪にされようと、
おれはお前を捨てない。
だから───!」
「だから何?」
途中でセリフを遮られた。
「僕のこと捨てないでくれるのは
嬉しいよ。でもさ、
ならなんで見知らぬフリしようとしたの?」
痛い所を突かれる。
「僕のこと守ろうと思っての嘘なの?
笑えないよ。本当に」
「…じゃあ」
「何?」
おれはおれの中のストッパーが
外れた気がした。
「お前は、おれの…いや、
おれたちの役者人生まで潰して
何がしたかったんだよ?」
おれはテレビなど気にせずに話す。
「おれらは身内に犯罪者なんて
出したくなかったんだよ。
おれらの仕事がなくなったら
生活はどうする気だったんだ?」
「別に、そんなの自力で生活すれば───」
「3番目、そのカレシ、4番目…
お前の大好きな兄ちゃんにだって
迷惑かかるんだぞ?」
おれたちはもう収集がつかなかった。
そして、地雷に触れた。
「うるさい!黙れ!
僕のこと結局は捨ててるじゃんか!
この嘘つき!」
こうなってしまえばもう
兄弟喧嘩では済まない。
ごめんな、2番目。
ここまで協力してくれたのに。
「僕と地獄に落ちてくれるんだろ?
なら落ちろよ!
地獄よりも深いところに!!」
会見はめちゃくちゃに終わった。
なにも結論を出さないで勝手に終わった。
それくらいが良かった。
役者、意外と楽しかったな。
「おれらはみんな、兄弟バカだ」
そう言って、
みんなで一歩前へと踏み出した。
心地よい風を感じる中、今世最後の嘆きだ。
「純粋に、生きたかったな」
笑いながらおれは、みんなに伝える。
後日
『俳優の1番目、2番目、3番目。
そしてその兄弟死亡。一家心中か』
『警察は今回の件を一家心中とみて
捜査を進めており───』
来世は七人で、天国にいけるといいな。