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「シャリーを、よろしくお願いします」
シャリーに無理やり案内させた家で、私はシャリーの恋人と会いました。
そして、事情を簡単に説明した上で、シャリーを託す決意をしました。
実際に会ってみて、わかりました。
彼は、オリバーによく似た誠実な気質を持っていると。
彼ならば、娘を安心して託せると。
つい先日、彼がシャリーにプロポーズをしていたと、その時初めて彼の口から聞きました。
でも優しいシャリーが、私のことを考えて保留にしていたとも、聞きました。
すでにシャリーも、村の人の私への視線が変わっていたことに気づき、私を村に一人置いておくことは不安だったと、この時教えてくれました。
それを聞いてしまったからこそ、私は余計今の決意を強めました。
ここにはいられない。
身を隠してしまおう、と。
私は、少しでも未練を断ち切るかのように、言葉はこれ以上交わすことを止めて、急いで立ち去ろうとしました。
もっとシャリーの成長を見たい。
シャリーとこの男性の間に生まれる、オリバーの孫が見たい。
そんな未練です。
「お願いします。娘を、守ってください」
私はそれだけ言い残し、近くの森の中に姿を隠すことに決めていました。
「お母さん!?どこへ行くの!?一緒に暮らそうよ!!」
シャリーが私を求める叫び声を、聞こえないフリをしました。
そうすることが、シャリーのこれからのためになると、思ったからです。
そうしなければ、間違いなくシャリーの命が、危なかったと確信が、私にはありました。
この時、国の政策として、得体の知れない力を持つ女を「魔女」と呼び、正義の名の下に粛清する時代へと突入していました。
間違いなく、あの村の人は国に報告をすることでしょう。
魔女がいる、と。
死者に命を2つも授けてもらい、身代わりに夫を殺した魔女のことを。
その魔女と、娘が関わりがあると知られれば、魔女の血を引く娘として、粛清の対象になってしまうでしょう。
それは、決してあってはならないことです。
「シャリー……幸せにね」
私と、オリバーが過ごすはずだった幸福な時を、せめてオリバーが遺した種から芽吹いたあなたには、歩んで欲しい。
それが、オリバーのためだと、私は信じたかったのです。